理事長ごあいさつ << 国立がん研究センターについて

理事長ごあいさつ



中釜 斉 理事長写真 この度、2016年4月1日付けで国立がん研究センターの理事長を拝命しました。医学部卒業後、臨床医として消化器内科学の研鑽を積むとともに、当研究所にて基礎研究についての薫陶を受けました。その後、米国マサチューセッツ工科大学でのがんの成因・病態に関する4年間の機能的ゲノム解析研究を経て、1995年に当センター研究所に赴任してから約20年が経ちます。この間一貫して、発がん要因及びがんの本態解明という基礎的な視点から当センターの果たすべき使命や社会的な役割について考えてきました。これからは当センターの理事長として、国のがん対策及び政策提言に資するエビデンスを創出することが期待されている当センターのミッションを踏まえ、基礎及び臨床的・公衆衛生的な観点のみならず、社会との共生及び協働という視点も加味した総合的な判断が求められることになります。改めて身の引き締まる緊張感と使命感を感じています。

国立がん研究センターは、1962年に我が国のがん医療・がん研究の拠点となる国立の機関として創設され、以来、日本のがん医療と研究を強力にリードして来ました。2010年4月に独立行政法人として新たに生まれ変わり、さらに2015年4月には国立研究開発法人に指定され、「大学又は民間企業が取り組みがたい課題に取り組む」法人として位置づけられました。同時に、世界レベルでの研究成果の創出と研究開発成果の最大化が求められています。さらに、2015年の8月に中央病院(築地キャンパス)、9月には東病院(柏キャンパス)が相次いで医療法に基づく臨床研究中核病院に指定されました。国際水準の臨床研究や医師主導治験等の中心的な役割を担う機関として期待されており、正に基礎と臨床の両方の視点から、がん制圧に資する研究・診療両面でのがん対策を実践するとともに、その戦略を国や国民の皆様に提言できる機関としての存在意義が求められています。

今や国民の二人に一人が一生に一度はがんに罹ります。現在、年間80万人以上の方が新たにがんと診断されていますが、社会の高齢化に伴い、がん罹患者数は今後も増え続けることが想定されています。国立がん研究センターの使命としては、個々のがん患者に対してゲノム等の情報に基づいた最良で最適な治療を提供することばかりでなく、がんの発症予防という観点からも、がんの高リスク群を同定し適切な予防法を開発・実践することが求められます。正に個々人に対する”最適化医療”(Precision Medicine)の実践です。これらの目的を達成するためには、個体におけるがんの特性や多様性を解明するための研究基盤として、ゲノム解析を含む統合的オミックス研究の強力な推進を図るとともに、その成果に基づいて個人に最適化された治療法・予防法を開発することが求められます。腫瘍組織における局所的な免疫応答の実態把握も喫緊の課題と考えています。

これらの点を鑑み、2014年からスタートした国の新たながん戦略事業である「がん研究10か年戦略」のスローガンとして掲げられている「がんの根治・予防、がんとの共生」において、国立がん研究センターの目指す方向性の中でも、特に重点的に取り組むべき課題として、以下の点を掲げたいと思います。
  • アンメットメディカルニーズの課題解決のための研究・臨床体制の強化
  • ゲノム情報に基づく個々人に最適化された医療・先制医療提供体制の整備と政策提言
これらの重点課題に止まらず、新たながん対策・政策提言に資する課題に関しては、当センターの両キャンパスの専門家の英知と経験を集約し、組織横断的に一体となって取り組む必要があります。さらに、国内外の産学官の研究者・研究医療機関等とも協力し、がん制圧に向けて実効性のある連携関係を構築していくことも欠かせません。併せて、がん患者及びそのご家族を含む、国民の願いや期待を広く課題として反映し、解決に向けて取り組むことが求められます。全てのがん患者とそのご家族が、常に希望を持ち続けることができる医療提供体制とその研究基盤を整えて行くことを目指したいと考えています。

皆様のご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。

国立研究開発法人 国立がん研究センター
理事長 中釜 斉