コンテンツにジャンプ
がん対策情報センター

トップページ > プロジェクト > がん情報普及のための医療・福祉・図書館の連携プロジェクト > 「いつでも、どこでも、だれでもが、がんの情報を得られる地域づくりをめざして」

「いつでも、どこでも、だれでもが、がんの情報を得られる地域づくりをめざして」

日時:2016年1月25日(月曜日)13時から17時
場所:福岡県立図書館

国立がん研究センターでは、がんをはじめとする健康や医療に関する情報を、生活の中で身近に感じられるような環境づくりを目指して、図書館と医療機関が連携したプロジェクトを進めています。
その取り組みの一環として、九州・沖縄地区で、図書館関係者とがん相談支援センター関係者を対象とした図書館とがん相談支援センターとの連携ワークショップが開催されました。
このワークショップでは、がん相談支援センターと図書館との連携の活動やそれによる効果や可能性について好事例を参考に、各地域での医療・健康情報の充実や医療・健康情報支援の輪を広げるため企画されました。

 

図書館&がん相談支援センターの連携への期待

福岡県立図書館

当日の九州地区は、観測史上最高の積雪となり、沖縄でもみぞれを記録するなど、交通機関が影響を受ける中での開催となりましたが、図書館関係者、医療関係者、行政関係者など参加予定者85人中58人が集まり、関係者を含めて総勢83人の参加の下に行われました。

大場茂嘉館長

はじめに、福岡県立図書館の大場茂嘉館長から、公共図書館は、近年「地域の情報拠点」として、地域の抱えるさまざまな課題に対応した情報サービスを提供することを期待されていること、また最も敷居の低い公共施設として、高い専門性と信頼性を持つ医療機関との連携はとても意義深いことであり、本日のワークショップで、今後の手掛かりやヒントをつかんで具体的な取り組みへつなげていただきたいとの開会の挨拶がありました。

 

高山智子部長

次に、このプロジェクトを担当する司会の高山智子部長(国立がん研究センターがん対策情報センター)より、「図書館とがん相談支援センターの連携プロジェクト」の趣旨が紹介されました。がんの情報を求める人の特徴、そして、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターの活動内容についての紹介があり、これまで九州・沖縄地区でがん相談支援センター間の連携を重ねてきた中で、離島なども多いこの地区において、いかにしてがんに関する情報の空白地域をなくしていくかの課題があげられ、その鍵を握る1つとしても公共図書館との連携があるということが述べられました。

 

田村俊作先生

続いて、田村俊作先生(慶應義塾大学名誉教授)からは、「公共図書館からみたがん相談支援センターとの連携の意義」について、まず公立図書館の特長が説明されました。公立図書館は、図書館法によって全国に3,000館以上設置され、だれでも気軽に立ち寄れるところであり、自治体が提供しているサービスということで安心して行けるところであることが紹介されました。また図書館では、レファレンスサービスという資料調査・情報提供のサービスを行っており、その中で、体のことや病気のことについて相談を受けたり、情報提供の依頼を寄せられる場合があることも紹介されました。図書館は、本をベースにしたサービスを提供するところではあるものの、利用者からすると病気などは本の提供だけでは解決するものではなく、さらに解決方法を求めて問い合わせが寄せられることもあり、そうした利用者が困ったとき、さらに情報が欲しいときに、図書館とがん相談支援センターとの連携により応えていくことができるといった連携の意義が述べられました。また、図書館では医療関連図書の購入に当たってどのような本を選ぶべきか判断に迷うことも多く、そうした入り口になる情報をより信頼あるものにしていくことも連携で成せることであり、充実させることができる、と連携に対する期待が述べられました。

 

事例報告1:愛媛大学医学部附属病院 患者図書室の取り組み

塩見美幸さん(愛媛大学医学部附属病院 副看護師長)

最初の報告は、がん看護専門看護師でもあり、がん専門相談員でもある塩見美幸さん(愛媛大学医学部附属病院 副看護師長)より、病院内に設置されている愛媛大学医学部附属病院 患者図書室での取り組みが紹介されました。
愛媛大学医学部附属病院内で以前から運営されていた患者図書室は、平成23年にNPO法人医療の質研究会の支援で図書室が寄贈された際に、患者図書室「ひだまりの里」が設置され、それを機に医療に関する本を置くようになった背景が紹介されました。
本は、月に1回開かれる患者図書室運営委員会により選書され、医療系の図書は約1,000冊(そのうちがんに関するものは160冊ほど)、一般の図書は院内全体で13,000冊ほどの本が置かれ、患者さんやご家族の他、医療関係者や実習中の学生さんなど、1日平均60人、年間のべ14,000人ほどが患者図書室を利用しているそうです。
図書室では、毎日平日の午前中は専門看護師や認定看護師が常駐するようにして、図書室の中で相談対応を行っており、午後は相談の希望があれば司書さんが看護師につなぐという体制で院内のサービスを提供しているということでした。これまでにも本を探している方を相談につないでもらうことで、病気のよりよい理解につながったり、必要な医療サービスにつながったりしたことなどが、事例を基に紹介されました。その他、院内で使う5分程度の「認知症ってどんな病気?」などといったDVDを作成したり、読みやすく、わかりやすい言葉で書かれたがんの図書やパンフレット類の設置をして入院以外の方にも情報を利用しやすくしたり、サロンを図書室で定期的に開催するなどして、図書室をさまざまな形で利用しやすくするとともに、司書や看護師を通して、院内の他のサービスにもつなげていくという、図書館を軸とした有機的な連携の活動の紹介がありました 。

 

事例報告2:埼玉県立久喜図書館の取り組み

小西美穂さん(埼玉県立久喜図書館 司書主幹)

2つ目の事例報告は、「埼玉県立久喜図書館の健康・医療情報サービス~公共図書館にしかできない健康・医療情報提供~」と題して、小西美穂さん(埼玉県立久喜図書館 司書主幹)から取り組みが紹介されました。
埼玉県立久喜図書館では、7年ほど前から健康・医療情報サービスを開始し、約7,200冊の図書等を配置する「健康・医療情報コーナー」を設置、講演会や展示などのイベントにも取り組んできました。平成25年度からは、サービスのPR・「見える化」、多角的な情報提供、図書館員が外に出て行って積極的に連携をすることの3つを重点課題として取り組み、3年弱で8つのテーマで連携イベントを実施、40団体に協力してもらううちに、一人一人の悩みや課題に寄り添う情報提供ができるようになってきたそうです。

 

最初に取り組んだのが「がん」をテーマとした資料・パネル展示で、県の疾病対策課の協力による「がん患者会」の活動紹介や、がん相談支援センターなど相談先の紹介を含む展示は、新聞各紙で記事になるなど各方面から注目され、患者や家族から深刻な相談も寄せられたそうです。必要な情報がそれを必要とする人たちに届いていないことを実感して「がん情報コーナー」を常設したところ、それが疾病対策課から県の「がん対策推進計画」に基づく、情報提供の1つの手段として捉えられ、事業参加や広報でのさらなる連携につながり、「がん情報コーナー」も県内で知られるようになりました。
その後、イベント開催時に大きな反響を呼んだ「妊活」や「見て・聴いて・感じる読書(発達障害)」のコーナーも常設化し、患者会や病院、医学図書館など関係機関・団体からの問い合わせも増え、連携がさらに広がっていったことなども紹介されました。

 

また久喜図書館では、当初から市民の情報リテラシー支援に力を入れており、講演会の際に必ず講演テーマに沿った情報の調べ方を司書が案内したり、年2回の「情報の探し方講座」を開催しているほか、健康・医療情報の調べ方のポイントを示した「健康・医療情報リサーチガイド@埼玉」の小冊子を作成したことの紹介もありました。
最後に、自分で調べて判断するための材料を選び取るためには、可能な限り多様な立場の多角的な情報を手に入れる必要があるが、行政や専門機関などは立場や目的による制約により、情報提供の範囲が限られる。けれども公共図書館では住民の求めに応じ、あらゆる立場、レベル、種類の情報を提供することができ、司書により情報探しの支援も可能といった強みがあり、そうした情報提供における強みを生かして、自治体の健康・医療政策と地域の課題解決に貢献できるのでは、と述べられました。

 

事例報告3:長崎市立図書館の取り組み

長崎市立図書館

3つ目の報告は、九州の中でも健康・医療情報の提供で注目されている長崎市立図書館における取り組みの紹介です。下田富美子さん(長崎市立図書館 司書)からご紹介いただく予定でしたが、前日からの雪の影響で長崎からの参加が叶わず、長崎市立図書館の活動案内の動画と準備されていたスライドを基にした活動の紹介となりました。

平成23年度から長崎市立図書館で開始されたがん情報サービスの取り組みの概要については、長崎市立図書館が作成した「がん情報サービス」のプロモーションビデオ(PV)で紹介されました。このPVに流れるオリジナルソングの作詞も長崎市立図書館のスタッフが手がけたものです。

 

PVにはがんについて知りたいとき、図書館がある、本がある、をモットーにがん情報コーナーがある、平成23年(2011年)から開始した長崎市立図書館の「がん情報サービス」では、図書館員ががんの情報を探すお手伝いをすること、地域のネットワークを活用して協力機関をご紹介できること、「長崎みなとメディカルセンター市民病院」の協力を得て専門家の話を聞く会を設け、市民病院のお出かけ隊のみなさんに相談することができること、また「図書館deサロン」という少人数での交流の場も提供し始めていることなど、本を通して、交流を通して、新しい発見を、がんになっても自分らしくいられるように、がん情報サービスを提供している、というメッセージが込められていました。

 

長崎市立図書館では、市民と共に成長し続ける図書館を目指して、知識・情報を手に入れる地域の窓口となって、個人にとどまらず、地域レベルでの「知識・情報の消費者」から「知恵・情報の生産者」へと働きかけながら、「自ら考え、自ら解決する」活力ある市民社会づくりに貢献することを目指して活動しているということでした。
市民が健康でよりよく生きるためのサービスの1つとして、図書館情報サービスを提供していきたい。そして、本からの知識だけでなく、さまざまな経験や起こったできごとも、個人の学びとしてだけではなく、居合わせた人たちとの意見を交えながら、広い視点でも考えてみる。考えたことを、言葉にしてみる。他者に分け与える力をつける。社会での関わりの中で大切なものを学ぶ機会を提供する。図書館はそういう場でありたいと思いますと下田さんからのメッセージが紹介されました。

 

事例報告4:大阪南医療センターと河内長野市立図書館の連携

萬谷和広さん(大阪南医療センターがん相談支援センター社会福祉士、がん専門相談員)

最後は、萬谷和広さん(大阪南医療センターがん相談支援センター社会福祉士、がん専門相談員)から、「連携のための関係づくり」と題して、ここ1年ほどの間に取り組んできた大阪南医療センターと河内長野市立図書館との連携の取り組み、関係づくりの紹介がありました。

ちょうど1年前に大阪で開かれた「公共図書館員のための医療情報サービス研修会」で名刺交換をしたことが連携をし始めるきっかけとなり、その後メールで意見交換をし、お互いの職場を見学し合うことから具体的な活動が始まりました。そこで、それぞれの場や情報を提供することの特徴を知ることができ、お互いの特長を生かすために、病院では図書館情報を、図書館ではがん相談支援センターの情報を置くことを開始しました。
さらに直接何かできることはないかと考える中で、講演会を開催することになり、開催の準備を進める中で、お互いの活動や思いを知り、一緒に活動を行う利点を感じられたこと、そして「やっていておもしろい、楽しい!」と思えたことが、今振り返ると関係づくりには大事な要素だったのではないか、と述べられました。

図書館側でも医療機関と情報交換を重ねることでその地域のニーズにあった新しいサービスが生まれる、連携しているからこそできることがあるといった意義を感じており、まさに、連携を通じて、お互いに新しい価値を創造しているのを感じるということでした。

さらに今後は、これまでにやってきたことに加えて、病院で中学生向けに年2回行っているがん教育をさらに充実させるために、本のリストを作成して図書館から団体貸出をすることで、学びをさら深められないかという計画が紹介されました。

 

講演後のグループディスカッション

講演会後は、10班のグループに分かれて、図書館と医療機関との連携について、すでに実施している自施設での取り組みについての紹介や事例紹介から浮かんだアイデアなどについて、休館日の図書館内の部屋を使ってディスカッションが行われました。

グループディスカッション風景 グループディスカッション風景

グループワークで話し合われたことの報告では、きっかけはどうつかんだらいいのか、病院と図書館のどちらから声を掛けるとよいか、市立図書館と県立図書館では役割が違うのでその違いを踏まえて連携するとよいのではないか、といった意見や、病院関係者からは図書館にもニーズがあることがわかった、地域内での連携について公共性を担保するのが難しいため行政側にも協力を得るのがいいのではないか、といった意見などが出されました。また図書館との連携を実際に進めるに当たっては、病院側は業務として行えるようにするなど、具体的な連携方法や始め方などについて、活発に情報や意見交換がなされました。

会場風景

 

閉会の挨拶

九州がんセンターの藤也寸志院長

最後に閉会のご挨拶として、九州がんセンターの藤也寸志院長からは、今回の講演会とワークショップでは、図書館と病院のがん相談支援センターのお互いのニーズがわかったことは何よりの収穫である。ただし、大切なのはこれからで、みなさんの情熱を明日から何らかのアクションを始めることにつなげてほしい。そして、できるところから始めて、前例をつくっていくこと。これからも県内などで情報交換をして、さらなるネットワークをつくっていただきたいと、今後に向けての期待が述べられ、本講演会とワークショップは終了となりました。

資料写真

 

プログラム

 

講演内容一覧・資料


主催・開催協力

主催

  • 国立がん研究センターがん研究開発費「がん情報の収集と効果的な活用、そして評価の在り方に関する研究」
  • 科学研究費助成事業「市民の健康支援のための価値互酬型サービスを支える知識共同体の構築」
  • 福岡県立図書館

協力

  • 科学技術コミュニケーション推進事業機関連携推進ネットワーク形成型「継続的なワークショップ運営による情報弱者向けがん情報ツールの作成と普及」事業班

後援

  • NPO医療の質に関する研究会
  • 福岡県がん診療連携協議会
  • 福岡県公共図書館等協議会
  • 日本図書館協会