コンテンツにジャンプ
がん対策情報センター

トップページ > プロジェクト > がん情報普及のための医療・福祉・図書館の連携プロジェクト > 「いつでも、どこでも、だれでもが、がん情報を得られる地域づくりの第一歩」(第2弾 in 大分)

「いつでも、どこでも、だれでもが、がん情報を得られる地域づくりの第一歩」(第2弾 in 大分)

日時:2016年11月28日(月曜日)13時から16時30分
場所:大分県立図書館

国立がん研究センターでは、がんをはじめとする健康や医療に関する情報を、生活の中で身近に感じられるような環境づくりを目指して、図書館と医療機関が連携したプロジェクトを進めています。
その取り組みの一環として、昨年度、福岡県立図書館で開催された「図書館&がん相談支援センター連携ワークショップ」に引き続き、第2弾 in 大分では、九州・沖縄地区やその他での公立図書館とがん相談支援センターの新たな連携や活動状況を広く紹介し、各地域での住民を対象にした医療・健康情報の連携に係る課題等について話し会う場を設け、取り組みをさらに推進する機会として開催されました。

開会あいさつ

九州各県の図書館担当者・がん相談支援センター担当者・行政担当者が92人参加し、「九州・沖縄地区図書館&がん相談支援センター連携ワークショップ 第2弾」が開催されました。

 

小矢文則館長

はじめに、大分県立図書館の小矢文則館長より、近年、図書館には、地域の方々が抱える課題への対応とそれに対する支援、地域にどれだけ貢献できるかという視点が求められるようになってきたこと、大分県立図書館でも、行政や民間団体との連携を深め、県民に対するさまざまなサービスの提供に取り組んでいること、本日のワークショップのテーマである健康医療も連携事業における大きな柱の1つとなっていることが紹介されました。がんは治る病気といわれるようになったものの、一方で日本人の死亡原因のトップであることに変わりはなく、地域の方々の健康増進に寄与することを目指して、図書館とがん相談支援センターの連携の取り組みを広げていっていただきたいとの挨拶がありました。

 

高山智子部長

続いて、国立がん研究センターがん対策情報センターの高山智子部長より、国のがん対策が大きく動き始めて約10年が経過したこと、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターでは院内外を問わずがん患者・家族・地域住民からの相談に応じているものの、そういった場があることが十分に知られていないことなどが述べられました。本日のワークショップを通して、現在広がりつつある図書館とがん相談支援センターの連携の取り組みを知り、今後の活動の一助としていただきたいとの挨拶がありました。

図書館とがん相談支援センターの取り組みの紹介

  • 福岡県での取り組み
    はじめに、福岡県での取り組みについて、社会保険田川病院がん相談支援センターの織田久美子氏と飯塚市立飯塚図書館の田中宏尚氏よりご紹介いただきました。
織田久美子氏

織田氏からは、昨年度、福岡県で開催された同ワークショップで、株式会社図書館流通センター(TRC)のエリアマネジャーと会う機会に恵まれたこと、その出会いがきっかけとなり、福岡県では県立図書館レファレンス研修の講師として相談員が参加するようになったことや、筑豊地区内にある拠点病院のがん相談支援センターと飯塚市立図書館との連携が開始されたことが語られました。

飯塚市立図書館まつりへの参加、図書館利用者アンケートへのがん情報に関する項目追加など、2から3カ月に1回開催される「がん情報普及のための連携会議」を通して、さまざまな検討が重ねられてきたこと、途中、図書館担当者が変わることがあったものの、その担当者が異動先の図書館でも連携の輪を広げてくれていること、筑豊地区での活動を福岡県がん専門相談員連絡会議で報告し、福岡県内の他の地区にも図書館連携の取り組みが広がってきていることなど、図書館とがん相談支援センターがつながり、その輪が広がっていく過程が紹介されました。

つながりが深まる中で、図書館は誰でも気軽に利用できる身近な場であると実感するとともに、図書館の方々の情報を扱う姿勢から学びを得たこと、また、意見交換や職場訪問を通じて相互理解を深め、お互いを尊重して連携することで、さらにさまざまなヒントや工夫が得られる可能性があるということなども述べられました。

 

田中宏尚氏

また、田中氏からは、「がん情報普及のための連携会議」を受けて、館内にがん情報コーナーを設置したこと、がん相談支援センターやがん情報コーナーに関するアンケートを実施した際、「蔵書が古いイメージがある」という意見もみられ、情報更新に努める必要性について考えさせられたことなどが語られました。

病院や県に適宜問い合わせを行い、パンフレット・チラシ類の充実・内容更新に努めていることや、治療法に関する書籍の場合、5年程度を目途に情報更新ができるようにするため、出版年を明記していることなど、がん情報コーナーの充実を図るために現在行われている具体的な取り組みが紹介されました。

また、新聞記者に連携会議に参加してもらう、地域で開催されている「みんなの健康福祉のつどい」に参加するなど、がん情報コーナーに関する情報発信にも積極的に取り組んでいることが述べられました。

今後も、連携会議での継続的な意見交換、がん情報コーナーの充実と情報発信に努めるとともに、新たに患者会や医師による講演会を企画するなど、筑豊地区全体でのがん情報に関するサービス展開を目指したいとの展望が語られました。

  • 大分県での取り組み
    福岡県に続き、大分県での取り組みについて、大分県立図書館の長谷部京子氏と大分大学医学部附属病院がん相談支援センターの平山由佳氏よりご紹介いただきました。
長谷部京子氏

長谷部氏からは、大分県立図書館では医療健康分野の連携事業として、看護協会との連携による「一日まちの保健室」(看護師による健康無料相談会・健康チェック)が恒例事業となっていたこと、その事業をよりよいものにしていきたいと考えていたところに、大分大学医学部附属病院のがん相談支援センターの担当者がリーフレットの件で来館されたこと、その際、健康情報コーナー利用者からのがん関連の問い合わせが多いことを伝え「一日まちの保健室」でのがん相談ブース出展を検討してもらえないかという依頼をしたことなど、図書館とがん相談支援センターの連携開始に至るまでの経緯が紹介されました。

「一日まちの保健室」でのがん個別相談会が実現し、参加者からのフィードバックを踏まえて、現在も継続してがん個別相談会を実施していること、さらには、大分大学医学部附属病院の協力を得て、がんに関する講演会を図書館で実施するという取り組みも開始したことなどが述べられました。 最新のがん情報を持つ医療機関と、誰もが気軽に利用できる図書館が連携することにより、がんに関する情報発信の可能性はますます広がると考えられ、県民のがんに対する関心が高まり、がん検診受診率向上や健康寿命向上の一助となるよう、今後も医療機関と連携しながら、がんの情報発信に努めていきたいとの抱負が語られました。

 

平山由佳氏

平山氏からは、大分県がん診療連携協議会PDCAサイクルの1つに広報周知活動があり、大分県立図書館に各拠点病院がん相談支援センターの紹介リーフレットを配布しようと図書館に伺ったこと、その際「一日まちの保健室」でのがん個別相談に関する依頼をいただき、部会での提案・検討を経て、がん相談ブース出展に至ったこと、がんにかかっていない方からの相談が予想以上に多く、市民の方にがんに関心をもってもらう働きかけを行うことやがん相談支援センターを周知することの必要性を改めて実感したことなどが語られました。

国立がん研究センターのホームページに掲載されている「5つの健康習慣によるがんリスクチェック」や「がん予防の12カ条」を活用したリスク診断とがん予防指導、大分大学医学部附属病院緩和ケアセンター・がん相談支援センター・大分県立図書館の共催による緩和ケアの講演会など、今年度開催された相談会や講演会の様子についても紹介いただきました。 今後の連携の可能性について、図書館という利用しやすい場所での情報発信により、市民のがんに関する知識を増やすことができ、講演会・研修会・健康相談の定期開催などの形で連携していく必要があると考えられること、また、図書館からがん相談支援センターにつないでいただくためにも、がん相談支援センターの役割業務を図書館の方に知ってもらえるよう努めていきたいとのお話がありました。

  • 神奈川県での取り組み
    最後に、神奈川県での取り組みについて、逗子市立図書館の井元有里氏と神奈川県立がんセンターがん相談支援センターの勝呂加奈子氏よりご紹介いただきました。
勝呂加奈子氏

神奈川県でもがん相談支援センターの存在を知らない方が多く、いかにアクセスしてもらうかが課題となっていたこと、病院内に情報コーナーはあっても、病院という場の性質上、発行元の確かさ、根拠が曖昧なまま書かれたものは置けないという側面があること、また、目に見えて増えている高齢な利用者の大きな関心事である健康情報を見やすく探しやすくできないかというところから、図書館でも健康情報コーナーを作りたいという話が出ていたことなど、がん相談支援センターと図書館が各々抱えていた背景・課題が述べられました。

そのような折、図書館総合展で国立がん研究センターの高山部長、慶応大学の田村先生と出会い、JST科学技術振興機構からの助成金も得て、本格的に「図書館と医療福祉の連携プロジェクト」が開始され、プロジェクト1年目は胃がんをテーマとした講演会を実施したこと、はじめての試みでもあり、特に市の事業として行うために、各課の理解を得ることに時間を要したこと、逆に2年目からは動きやすくなったことなどが語られました。
プロジェクト2年目には、プロジェクトチームのメンバーがキャストを務め、意思決定の仕方、情報の得方、医師との話の仕方など、「がんとわかったときやっておきたいいくつかのこと」をテーマとした寸劇を実施したこと、劇仕立てで見せることで多くの方にわかりやすくがん情報を伝えられるという利点はあった一方、汎用性の高さという点での課題が残り、プロジェクト3年目の今年は、寸劇で盛り込んできた情報をより気軽に、他の図書館でも活用できるような短い作品の形にしたスライド紙芝居「あるあるカフェ&ミニミニブックトーク」を作成したことが紹介されました。
このプロジェクトを通して得られた気付きや変化について、勝呂氏からは、「がん情報を一般市民にどう伝えるかが課題だったところ、図書館ではこれほど豊かな情報発信ができるということに気付くことができた」という発言や、「言葉の使い方ひとつをとっても、当事者目線での情報提供を考えるきっかけになり、普段の相談にも生かすことができている」という発言がありました。また、エビデンスの高い情報支援を行える、相談者の個別性に合わせた支援ができるというがん相談支援センターの強みを再確認する機会にもなったとのお話もありました。
井元氏からは、「それぞれの機関がどのような仕事をしているのか知ることができたのが一番大きな変化。こんなことを考えて仕事をしているのだと知ることで、図書館では限界がある医療情報の提供について、つなぐ先があるという安心感につながっている」という発言や「図書館では一般的な手法であるブックトークや展示などについて、プロジェクトメンバーから新鮮な反応があったことや、また誰でも気軽に入れる間口の広さ・敷居の低さがあるなど、自分たちの強みを再認識した」という発言がありました。
さらに、いろいろな切り口で本を見せることにより、医療現場で直接扱いづらい「死」というテーマを扱ってもらえないかという要望を受け、健康医療情報コーナーの一部を使って「生と死を考えるコーナー」を設置したことなど、具体的な変化についても紹介していただきました。がん情報を身近に広めることの大切さを知ることができ、今後も気軽に楽しく受けとめられるような情報発信・情報提供を継続していきたいとの抱負が述べられました。

シンポジウム

取り組みについて報告された6人の演者の方々にご登壇いただき、「がんの情報を得られる地域づくりの第一歩」と題してシンポジウムが開催されました。

田村俊作先生

シンポジウムの開始に先立ち、元慶応大学文学部図書館情報学の田村俊作先生に、3県の取り組みについて総括していただきました。

福岡県の報告にもあったとおり「きっかけは出会いから」であり、いかに出会うかが重要であること、どの報告からも、自施設の活動につなげていこうという意欲の強さが感じられたこと、また、特に神奈川県の報告からは、図書館とがん相談支援センター双方が共に楽しみながらがん情報の発信に取り組んでいたように思われたことなどが述べられました。誰に対してどのような情報を届けようとしたのか、また、実際に届いているのか評価する必要があることや、マスコミ・行政などさまざまな機関に働きかけ広く巻き込んでいくことの重要性についても触れられました。

続いて、コーディネーターの高山部長から「連携をしてみてどのような気付きや変化があったか」との投げかけを受けて、がん相談支援センターの立場で参加しているシンポジストからは、がん相談支援センターから地域に出向いていくことの大切さや、情報の発信元が身近な人であるかどうかにより、受け手側の情報の受け取り方が変わってくることへの気付き、また、「病院では楽しくがん情報を伝えるということに限界があり、健康情報の1つとして、早期からがん情報やがん相談支援センターに関する情報発信を図書館で行ってもらえることには大きな意義がある」といった発言がみられました。図書館の立場で参加しているシンポジストからは、最新のがん情報について相談できる窓口とつながっていることで、安心感をもって利用者に情報発信していけるようになったことや、情報コーナーの作り方に対する意識が変わってきたことなどが述べられました。

会場風景

また、参加者からも、「患者必携 がんになったら手にとるガイド」を図書館に送付したことがきっかけで、がん相談支援センターと図書館の連携が始まり、図書館内に資料コーナーを作ってもらえたり、市民向け健康教室の企画が進んでいること、がん相談支援センターと図書館とをつなぐ役割を行政が担って、情報コーナー設置・講演会などが行われ、今後、県の計画の中にも図書館とがん相談支援センターの連携に関する事項を入れ込んでいきたいと考えていることなど、各地域、各県での取り組みが紹介されました。

シンポジウムの最後には県単位での情報交換の時間も設けられ、活発な議論がなされました。

会場風景

閉会あいさつ

閉会にあたり、国立がん研究センターの高山部長より、いろいろな人に知ってもらうというのはとても難しいことではあるが、最初は見向きもされない活動であっても、取り組みを紹介してほしいなどの声がかかったりすることもあり、がんから始まっていろいろな領域でこのような取り組みが広がるよう、このワークショップで得られたことを参考にしていただきたいとの挨拶がありました。

プログラム

講演内容一覧・資料

  • 「きっかけは出会いから。~つながる・ひろがる~福岡県のがん相談支援センター&図書館」
    織田久美子(社会保険田川病院がん相談支援センター)(PDF:829KB)
    田中宏尚(飯塚市立飯塚図書館)(PDF:3,393KB)
  • 「可能性は∞(無限大)・図書館からのがん情報発信」
    長谷部京子(大分県立図書館)(PDF:805KB)
    平山由佳(大分大学医学部附属病院がん相談支援センター)(PDF:1,037KB)
  • 「知る、見せる、伝える~地域で作るがん情報発信~」
    井元有里(逗子市立図書館)/勝呂加奈子(神奈川県立がんセンターがん相談支援センター)(PDF:1,045KB)

主催・開催協力

主催

  • 国立がん研究センター科学技術コミュニケーション推進事業機関連携推進ネットワーク形成型「継続的なワークショップ運営による情報弱者向けがん情報ツールの作成と普及」事業班
  • 大分県立図書館

協力

  • 科学研究費助成事業「市民の健康支援のための価値互酬型サービスを支える知識共同体の構築」班

後援

  • 大分県
  • 大分県がん診療連携協議会
  • 大分県公共図書館等連絡協議会
  • 日本図書館協会