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先端医療開発センター

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外部評価 第4回(2012年)

1. 概要

2012年9月25日に第4回評価委員会が開かれ、臨床開発センター(現・先端医療開発センター)の各部署の代表者が過去1年間の研究成果の総括ならびに今後の研究方針について口頭発表を行った。なお、2012年7月に組織改編を行ったため、新設部署については改組前の部署における研究成果および今後の方針が評価対象となった。今回より野田委員が新たに評価委員として加わった。下遠野委員は欠席した。

評価委員会名簿

氏名職名
澁谷 正史 上武大学 副学長
遠藤 啓吾 京都医療科学大学 学長
下遠野 邦忠 千葉工業大学附属総合研究所 教授[欠席のため、発表資料をもとに評価]
野田 哲夫 公益財団法人がん研究会がん研究所 所長
山本 一夫 東京大学大学院 教授
大西 秀樹 埼玉医科大学国際医療センター 教授
中釜 斉 独立行政法人国立がん研究センター研究所 所長

2. 全体に対する評価

澁谷 正史

  • 全体としては大変よく進んでいると思われる。日本の製薬企業が "お付き合い" ではなく本気になれる施設を目指すべく、1例でも成功例を生み出す努力をよりいっそうお願いしたい。また、成功に近づいている事例はもっと積極的にアピールしていくことが望まれる。
  • 教育は基礎力アップに重要であるため、セミナーのファイルなどはアクセスしやすいようにしていただきたい。基礎部分の研究に近隣の学生を取り込むなどの方策も必要であろう。

遠藤 啓吾

  • 全体としてよく頑張っており、成果を挙げている。製薬企業からの評判も高いと聞いている。大学では充実したトランスレーショナルリサーチ(TR)の支援体制を構築するのは難しいため、本センターには日本のTRセンターとして、病院長をはじめとする病院全体の支援のもと、さらなる発展を期待している。
  • バイオバンクや支援室の活動は基盤的な意味合いが強く、論文になるような仕事ではないため、次回以降は適切な評価基準を検討すべきだろう。

野田 哲生

  • 次世代がん医療における新規がん治療薬や治療機器の開発に大いに貢献すると考えられるプロジェクトが順調に進展していることが理解できる。領域は橋渡し研究から臨床試験まで幅広く、一部のシーズは本センター由来のものである点は高く評価できる。その臨床開発研究の内容は、国内の各大学に設置されているTR拠点に比して、臨床応用の視点に関して明らかに優れた研究推進が行われており、シーズの独創性、優位性の面においても決して劣るものではない。
  • 今後はその優れた臨床開発推進の能力を通じて、国内の当該分野のレベル向上にいかに貢献するかという方向性をぜひ明確にしてほしい。また、内視鏡をはじめとする機器開発の人材も充実させ、医工連携の推進を期待したい。

山本 一夫

  • 臨床開発の拠点として着実に育ってきている。次のステップを考えると、他のTR拠点とのデータの共有などが必要となるので、今から将来を見据えた共有のためのプラットフォームづくりなどに着手すべきと考える。すでに成果も出つつあるが、企業との連携は大きなブレイクスルーになり得るため、上手く取り込んでいくことが望まれる。
  • 今年度の改組は明確で、センターとしての柱がよく見えるものである。分野間での連携が進んでいることも評価したい。

大西 秀樹

  • 改組により、昨年に比べて体制がわかりやすくなった。特に基礎研究部門には毎年進歩を感じているが、今後も国のリーダーとして臨床開発研究を牽引してほしい。そのためには京大のiPS細胞のような、世界的にブレイクスルーとなるような研究が必要なのかもしれない。また、今後first in humanの目標を掲げて臨床研究を進めていくには、今までのように患者さんに説明して同意を得るだけでは不十分であり、患者さんに同意能力があるか否かを厳密に判定していくことが不可欠と思われる。そのためには、精神腫瘍学的な考え方、comprehensive geriatric assessment (CGA) を強力に推し進めていかねばならないと思われた。
  • 各部署のプレゼンテーションについては、専門家向けの説明に終始した発表も見受けられたため、次回は専門家でない人間にも理解できるような説明をお願いしたい。

中釜 斉

  • 臨床開発研究およびその支援体制がしっかり整備されている。今後はセンター内部にとどまらず、外部との連携も積極的に進めてほしい。築地キャンパスとの連携も重要な課題のひとつであろう。

3. 各部署に対する評価

診断開発兼バイオバンクグループ

臨床腫瘍病理分野

  • 臨床と研究が一体となり、多くの優れた研究成果が得られている。病理形態を基盤とした基礎研究から病理検体を用いた診断技術など、活動内容は多岐にわたっている。アクティビティーの高さがうかがえて素晴らしい。センターとしての病理診断の標準化にも取り組んでおり、貢献度は大きい。がん病態の本質解明のための基礎研究と臨床病理学的研究・TR研究とのバランスをよく考えると同時に、これらを統合することでさらに高質の研究成果を挙げてほしい。
  • 胃がんのreceptor tyrosine kinasesに関しては、ぜひマウスレベルの治療実験も進めてほしい。Podoplanin発現↑のメカニズムとその機能についての分子機構の解明に期待したい。出口を見据えた研究の方向性をどのように統合するのか。

バイオバンク

  • 着実に保管試料数が増えており、将来の研究・治療に対し優れたバンクを作成している。これらの貴重な試料を有効に研究に利用し、医療に還元するための何らかの計画を検討すべき時期かと思われる。共同研究として国内のアカデミアも利用できるようにするなど、外部利用や新たな創薬標的の開発の方向性も検討してほしい。
  • 論文化しにくいため、研究とは違った評価方法が必要である。

機能診断開発分野

  • 新しいRI製剤の開発をよく行っている。新規化合物の合成、ラベリングによる分子プローブ開発の成果は高く評価できる。将来的な広がりが期待される。
  • 特に、低酸素イメージングプローブは大変興味深い。果たしてヒトのレベルでどれだけ使用可能か。酸素分圧の違いで反応が起こることはわかったが、病態に伴う低酸素のレベルと対応して反応できるだけでなく、酸素濃度の域値がさまざまなものをつくることができれば面白いと思う。臨床応用を目指し、速やかにヒト臨床試験の立ち上げにつなげてもらいたい。

内視鏡機器開発分野

  • 新規の機能イメージング/分子イメージングによる内視鏡開発であり、独自性が高い。企業との共同研究が順調に進展しており、現行の内視鏡に対する優位性が明確な装置を開発している。早期の実用化が期待される。
  • 近赤外レーザー光で酸素飽和度を見分ける内視鏡への応用は大変興味深い。応用範囲も広いのではないか。プローブの開発も並行して行うことにより、より深度の深いところまで診断できるような機器を開発してほしい。ヘッドスキャニング内視鏡の実用化においてはスキャンスピードが問題となるが、どのような戦略を考えているのか。

治療開発グループ

新薬開発分野

  • ミセルの前臨床試験、抗フィブリン抗体、抗SLC6A6抗体など、多くの研究に精力的に取り組んでおり、その一部は臨床応用の一歩手前まで来ている。医工連携に基づく融合研究を積極的に行い、さまざまなアプローチに挑戦している点で評価できる。全体によく進んでおり、来年度の成果が楽しみである。特に抗フィブリン抗体は、診断から治療まで広く応用が考えられる。実用化を急いではどうか。
  • また、メカニズムの解明のためにはスタッフの補強が必要ではないか。検討していただきたい。

免疫療法開発分野

  • 患者にやさしい副作用の少ないワクチン治療の開発という非常に夢のあるテーマ。GPC3をはじめ、ペプチド療法を積極的に展開し、かつ詳細に解析している点は高く評価できるが、残念ながら前年度と比較して大きな成果は得られていない。患者からの自己腫瘍反応性T細胞の増殖が可能であり、これを利用した新規臨床試験こそ本研究の使命と一致するのではないか。
  • 今後は免疫療法における個体差、同一個体内の腫瘍ごとの反応性の差をさらに検討してほしい。また、ほかのがんを想定すると、次の新たな手法の提案などの模索も必要ではないかと思われる。ペプチドの同定に関する探索的研究の展開にも注力すべきであろう。

精神腫瘍学開発分野

  • 抑うつ・高齢者医療など、今後の社会で重要な課題に幅広く対応している。新しい分野を積極的に開発し、がん診断の支援および効果改善に寄与する成果がいくつか得られている。
  • 今後は全国レベルの共同研究を進めてほしい。中核となる課題を絞り込み、厚労省委託事業として支援を受ける必要があるのではないか。また、本態解明に基づく新規療法の開発等とは異なるアプローチが多用されており、評価の困難な部分も多い。データ評価の専門家の参加も大切かもしれない。

粒子線医学開発分野

  • 前年度に比べて患者数が増加しており、臨床レベルの高さが反映されている。さまざまな技術を導入し、陽子線治療の可能性について検討している。また、多くの重要な臨床試験が推進されている。
  • 陽子線治療は正常組織への有害な副作用を抑えて効果をもたらす治療法として期待されているが、研究できる施設も限られている。今後は陽子線治療のメリット・デメリットに関する十分な情報公開、標準治療の確立、国内多施設共同臨床試験の推進における中心的役割を果たすことにより、陽子線治療の適応拡大と発展に貢献してほしい。

トランスレーショナルリサーチプロジェクトグループ

トランスレーショナルリサーチ分野

  • ストレス応答性をターゲットとした創薬研究と個別化医療の確立を目指したTR研究を2本柱として精力的に研究を推進しており、評価できる。
  • 網羅的なシークエンスにより患者個別の治療に繋げようという試みは、チャレンジングで重要なテーマ。All Japan規模のコンソーシアムをつくるなど、データの蓄積をどうするか検討しておくべきであろう。また、肺がんをモデルにしたバイオマーカーと治療方法の確立については、十分な症例数を確保して進めるべき時期と思われる。
  • 研究の臨床的有用性については、もう少し時間がたってから評価したい。

臨床試験支援室(Office of Clinical Research: OCR)

  • 治験・臨床試験の支援基盤を確立し、多くの医師主導治験を支援し、各種機器・治療薬の早期開発を推進している。また、国内の臨床試験のコアセンターとして先導的に支援をしている点は高く評価できる。
  • 今後は当該領域のリーダーとして、教育プログラムや施設間の連携など、国内の臨床試験システムの構築・整備に中心的な役割を果たすことを期待したい。

先端医療開発支援室[現・TR支援室](Office of Translational Research: OTR)

  • 臨床研究や産学連携の支援となるさまざまなデータ管理、解析などを取り扱うとのことで、研究推進に大切な部署。多くの業務を抱え込んで機能しなくならないよう、上手く運営してほしい。知財戦略、リサーチコンシェルジェの重要性をセンター全体としてどのように構築するかが重要であろう。また、セミナーなどの教育は全国レベルで非常に大切。外に向かって大いにアピールしてほしい。臨床試験支援室との違いがわかりにくい面もあるが、始動したばかりであり、今後の成果・発展を待ちたい。