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先端医療開発センター

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外部評価 第6回(2014年)

1. 概要

2014年9月9日に第6回評価委員会が開かれ、各部署の代表者が過去1年間の研究成果の総括ならびに今後の研究方針について口頭発表を行った。なお、本年も臨床開発センターと早期・探索臨床研究センター(現・先端医療開発センター)の両方についての評価が行われた。

評価委員会名簿

氏名職名
澁谷 正史 上武大学 学長
遠藤 啓吾 京都医療科学大学 学長
下遠野 邦忠 独立行政法人国立国際医療研究センター肝炎・免疫研究センター 特任部長
野田 哲夫 公益財団法人がん研究会がん研究所 所長
山本 一夫 東京大学大学院 教授
大西 秀樹 埼玉医科大学国際医療センター 教授
中釜 斉 独立行政法人国立がん研究センター研究所 所長(欠席のため、発表資料をもとに評価)

2. 全体に対する評価

  • 昨年に比べて内容が充実していると感じた。今のペースを維持してほしい。全ての分野・室において、出口がより明確に設定されるようになり、加えて、研究開発推進のための基盤機能も充実してきているため、従来に比べてはるかに高い国内での優位性、および国際的競争力を有する臨床試験とその随伴研究が推進されている。
  • 現在、育成されている各シーズに関しても独自性が高い点は評価できる。一方、今後も有望なシーズを創出あるいは導入するためのシステムづくりが必要と思われる。
  • 臨床開発センターと早期・探索臨床研究センターの連携については今後十分な連携が必要と思われるが、加えて、研究所(築地)との連携のあり方についてもより詳細な検討を行い、互いに重複がないような、補完的な役割を担えることが望まれる。
  • 研究支援センターなど組織改編があり、新しい組織ができると古い仕事と新しい仕事の両方をすることになり、リソースが心配である。個人が疲弊しない体制にしてほしい。各分野がよい研究を続けているのだから、人員の充実を図ってほしい。
  • 国立がん研究センターが何をすべきか?というのは難しい問題であるが、組織としての使命・責任と各研究者のキャリア形成が上手く融合できるようにセンター長が方針を明確にすべきである。基礎研究と体制整備の両方を課されているスタッフもおり、研究者としてのキャパシティを超えているのではないか。
  • 研究全体に体制整備や質の向上が求められており、そこには対応して競争的資金も得られているのはよいことである。しかし、臨床開発センターからシーズが生み出されるような基礎研究の余裕を残しておく必要がある。臨床に近い研究からさらに基礎研究にフィードバックされるように、臨床でのPOC取得の研究には基礎研究者が関与する体制をとるべきである。
  • 情報科学の専門家との連携、合成化学者との共同研究など、まだ踏み込んでできる分野もあるように思う。その達成のために、アカデミアと連携することがよいのか、あるいは将来的に独立部門をつくることも視野に入れる方向性もあるように思われる。
  • 各研究者のプレゼンは、バイオロジーの専門家向けの内容になっており、非専門家にも理解しやすいプレゼンを心がけてほしい。

3. 各部署に対する評価

診断開発兼バイオバンクグループ

臨床腫瘍病理分野

  • 基礎研究、臨床開発等バランスよく取り組んで成果を出している。病院症例の病理診断を含む多くの業務に加えて、間質細胞のがんの役割に関する基礎研究など、幅広く活動している点が評価できる。病理診断の標準化および臨床試験の支援は、がん研究センターの中核となる機能である。
  • その一方で、担当する研究領域が「基礎的研究」「TR研究」「基盤整備」「病院の教育研究」等々ときわめて多岐にわたってきており、研究所(築地)の基盤的研究に関するコアセンター等との連携についても、積極的に検討すべきと考える。
  • がんの進展過程における微小環境としての間質細胞の役割について着実に成果をあげている点は高く評価できる。腫瘍内間質における腫瘍形質を規定する分子の探索は大変に重要な仕事である。がんの性質を規定する間質細胞のライブラリーを作成し、個々の影響を統合的に理解する試みは、新しい治療に向けたブレークスルーになる可能性があり興味深い。
  • Podoplanin (PDPN) のがんの増殖/転移における機能解析は重要。PDPN陽性fibroblastといわゆるがん関連線維芽細胞の関係やPDPN分子が制がん剤の標的となりうるのか、十分検討してほしい。血管新生因子の発現と関連があるか、なども検討してほしい。線維芽細胞の多様性に関する研究については、今後のさらなる展開が期待される。

バイオバンク

  • 基盤事業として重要な役割を果たしており、継続的な活動が欠かせない。地道な病理検体のバンクを作成しているなど、チームへの貢献度は大きく評価できる。
  • 重要なシステムであるが、出口が明確でない。中央病院との統合を考えながら、将来像を明らかにしてほしい。PDX(患者がん組織由来ゼノグラフト)モデル作製のための財政的な基盤づくりについては要検討事項。

機能診断開発分野

  • 新規画像診断技術開発が進んでいる。画像診断技術を開発し臨床に貢献する分子イメージングを目指し、PET、MRI、光イメージングなどの基礎研究に積極的に取り組んでいる。自動診断ができるようなプラットフォームもつくろうとしており、期待は大きいと思われる。
  • 低酸素プローブは、開発するスペーサーを変えてさまざまな閾値で開発するプローブが作成可能と思われる。知財の確保に留意しながら、早く臨床試験に移行してほしい。低酸素治療薬は対象のがん自身酸素自身の分布が低いところなので、低酸素薬自身も到達しにくいと思われる。Scientificに十分納得しうるデータを集めてほしい。
  • ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の基礎研究、特に使用する薬剤の研究を続けてほしい。BNCT用の体内動態解析に関しては、責任を持って、臨床研究のPOC取得に参画することが重要である。
  • 個々の研究については優れた内容であり、技術開発という点において着実に成果をあげているものの、分野全体としての出口戦略(臨床展開に関するビジョン)が明確ではない印象を受ける。分野全体として目指すべき方向性や研究戦略について、グループ内のみならず、臨床開発センター全体として議論すべき事象と考えられる。

内視鏡機器開発分野

  • 新しい概念で開発を行っているところが評価できる。成果が次々と発表されており、わが国発の機器開発が期待される。内視鏡は日本が先行している分野であり、さらなる開発を進めて、外国に市場が広がることを期待したい。
  • 低酸素イメージング内視鏡は、医療機器の臨床開発におけるモデルシステムとなると考えられ、重要な研究課題である。PMDAとの情報共有とともに、臨床家への積極的な情報公開により、臨床応用の道を拡げてほしい。
  • 低酸素イメージング内視鏡はヒトでの臨床研究も進んでおり、実用化に向けて着実に前進している。プローブからのアプローチ、機器側からの改良など、目的に応じてさまざまなアプローチが可能と思われる。
  • 低酸素プローブで制がん剤治療効果も検出できることを期待したい。結果にはばらつきが多かった。もう少し詰めて考えることが必要か?
  • 当該分野は内視鏡技術の開発に特化して技術開発に取り組んでおり、一定の成果をあげているものの、内視鏡技術の現状以上の技術向上の重要性および市場性は果たしてそれほど高いものなのか? 今後は、内視鏡以外の機器開発にもより積極的に取り組まれてはどうか。

治療開発グループ

新薬開発分野

  • がん間質ターゲティング治療、大腸がん特異分子の同定に成功するなど、すばらしい成果を出している。いくつかの有望な抗体の作製に成功しており、臨床応用が望まれる。東京大学の片岡一則先生や島津製作所などとの共同研究に精力的に取り組んでおり、DDS技術の臨床展開に関しては、常に世界をリードできるような技術開発に取り組んでいる点は高く評価される。
  • 質量イメージングを用いたプロドラッグのPOC取得は優れた研究成果である。今後のさらなる展開と治療薬開発における標準的な評価法として定着できるとよいと考える。
  • 抗フィブリン抗体を用いた治療薬の開発は、サイエンティフィックにもレベルの高い検討がなされており、大変興味深い。MMAEを遊離するのにどのようなリンカーがよいかなど、合成化学の分野とのより密接な共同研究も必要になってきているように思われる。
  • 不溶化フィブリンを検出する系の開発に成功しており、がんの迅速判別を可能にした点は大いに評価する。市場への開発に向けて重要な段階に来ている。不溶性フィブリンに対する抗体の診断・治療への応用に関しては、知財の確保に留意してほしい。
  • 前臨床あるいは臨床研究におけるPOCをとるための実験系を立ち上げられるように注力すべきと考える。
  • JCOGバイオバンクもようやく軌道に乗りつつあるようである。

精神腫瘍学開発分野

  • 精神腫瘍学の中心拠点としてよく活動している。がん患者と医療チームの両方を対象としている点は重要と思われる。多施設共同研究体制の構築に寄与するとともに、「せん妄」に焦点を当て、優れた研究を推進している。対策プログラムの効果の検証が、早く終了することが望まれる。
  • 今後さらに増加するであろう高齢者に対する支援システムの開発はよい視点である。がんに限らず、今後の医療の重要なプラットフォームにもなるので、これからも積極的に普及させていってほしい。
  • がん患者のケアの標準化は今までになかったので、よい取り組みである。メンタルケアの知識が十分でないままケアが行われている日本の現状を考えると、研究内容が基本的な分野(高齢者対応、スクリーニング)にシフトしているのはよい傾向と考える。また、この部分をしっかり固めることが国立がん研究センターとしての使命でもある。
  • 緩和領域のエビデンス構築に向けて着実に成果をあげていると思うが、得られた成果の有用性検証にかかわる領域が順調に進展しているのかが、資料上からは明らかでなかった。

粒子線医学開発分野

  • 大学での放射線治療研究のアクティビティが下がっているなか、治療・研究ともよく行われている。放射線治療に関する複数のモダリティの開発に精力的に取り組んでおり、治療効果に関するエビデンスづくりにも慎重かつ精力的に取り組んでいる。放射線治療を受ける患者数が増えており、成果があがっている。
  • 機器の開発にも依存するので、画期的なことが常にあるわけではないが、着実に実績を積み上げて良質な医療を目指した臨床試験に向けて成果があがっている。
  • 陽子線照射により根治性が上がることを期待する。スキャニング照射に関する技術開発に期待したいところである。全国的な標準化が望まれる。
  • 従来のIMRTでは治療対象とならないがん患者を対象に優れた臨床試験を行っている。今後は、IMRTでは治療対象の対象とされているがんのnon-responderは、やはり粒子線に対しても非感受性であるか等、より積極的な適応拡大を目指してほしい。生物学的解析もぜひお願いしたい。
  • 世界への普及を踏まえた人材育成も検討しており、医療への大きな貢献も期待できる。医学物理スタッフ体制の確立は本医学開発を流布させるために重要と思う。国際展開にも大いに期待する。

早期・探索臨床研究センター

トランスレーショナルリサーチ分野

  • 全体に着実に進んでいる。興味ある論文、研究成果が出ており、さらなる発展が期待される。ゲノムバイオマーカーの開発による患者へのメリットは大きい。坂東先生の論文が素晴らしい。
  • 大規模シークエンス解析に基づくデータを検討するとともに、分子標的薬などの作用機序に基づく有効性を検討しており、ビッグデータからどうやって有効な情報を引き出すかなど、ホットな分野に果敢に取り組んでいて評価できる。
  • 遺伝子変異の情報を正確に把握して先へ進むのが非常に重要。DNA解析をツールとした治療標的分子の探索は重要でオーソドックスな手法になるので、今後さらに詳細な解析を期待したい。
  • 小細胞肺がんの標的同定は優れた成果であり、PI3K阻害剤による臨床試験を立ち上げてほしい。
  • いくつかの重要なテーマについて精力的に取り組んでいると思うが、逆にそのために、一部の課題については研究テーマそのものに対して深く切り込めていない部分が見受けられる。そのために分野全体が扱うテーマとして多少散漫な印象を払拭できない。世界的なレベルで勝負できるのかが疑問である。思い切ってテーマを絞り込み、少ないテーマに関してより精力的に掘り下げていくという姿勢も必要ではないか。

免疫療法開発分野

  • glypican3 (GP3) を標的とするペプチドワクチンなど、さまざまな標的を用いていろいろな手法を精力的に行っていて素晴らしい。特に本院で開発したペプチドワクチンの臨床成績が待たれる。臨床応用までにはいくつかの項目について最適化が必要と思われるが、一般論として議論できるガイドラインの作成もできれば好ましい。
  • 免疫療法研究の最先端を集めた研究で、免疫療法が順調に進んでいる印象を受けた。独自の研究を前に出すことも戦略のひとつ。もう少し的を絞るのもよいのでは
  • 分野として取り組んでいるテーマが多岐にわたりすぎているのではないか。テーマの絞り込み(注力化)も検討されてはどうか。がんペプチドワクチンの効果増強に向けた基礎的な研究の展開を期待したい。
  • これまでに育ててきた自分独自の免疫治療のシステムを、いかに有効な標準治療とするかに焦点を当て、自らの治験で得られたエビデンスをもとに、優先順位を明確にしながら、次の臨床試験を推進してほしい。
  • GPC3を中心にして研究を進め、多方面から十分解析してほしい。

臨床試験支援室(Office of Clinical Research: OCR)

  • 早期・探索的臨床試験拠点整備事業の展開のために、きわめて重要な役割を果たしている支援部門を効率よく運営されていると思う。支援体制がきちんと組織化されて整備され、よい支援体制を構築している。
  • 臨床試験の支援など、最終的な治療薬に導く出口であり、重要な部署。本センターの目的に合った活動で、欠かせないものである。日本の早期臨床開発機能を強化するために頑張ってほしい。
  • 多くの試験を行っているようであるが、人材の確保は十分? 今後さらに取り扱うテーマ数が増加した際に、現在の体制で十分な支援を施せるだけの予備力があるのかについては継続して検討・議論が必要と考える。
  • どのような問題が過去にあって、それが将来にどのようにフィードバックできるのかなど、システムの改善もポイントになろう。

先端医療開発支援室[現・TR支援室](Office of Translational Research: OTR)

  • 着実に進められている。概要に沿ってスムーズに運用されることを望む。患者情報、データ情報をまとめつつあるが、まだまだ初期段階であり、さらなる改善が必要である。
  • TRの支援を専門とする独立の部門であり、臨床試験の信頼性を支える重要な仕事である。情報科学の専門家との連携は重要であり、この連携をとりながらより有意義なシステムを構築してほしい。
  • 大変に労力が必要なサンプル収集、解析、データ集積を行っており、高く評価できる。しかし、やはり今後目指す体制をより明確にする時期ではないか。