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免疫トランスレーショナルリサーチ分野トランスレーショナルリサーチグループ

:免疫TR分野

免疫トランスレーショナルリサーチ分野は、基礎免疫学に加え、ゲノム科学、代謝学および各種のオミクス解析を統合することで、がん微小環境での抗腫瘍免疫応答の本態を解明し、新たな免疫療法の開発を進めています。特に、がん微小環境に多数存在する制御性T細胞などの免疫抑制ネットワーク機構を、動物モデルや臨床検体を用いた研究で解明し、がん免疫監視から免疫寛容を制御している分子基盤を明らかにする事を目指しています。

がん細胞と生体の免疫応答の関係は、がん免疫編集 (Cancer Immunoediting) という概念にまとめられています。紫外線や放射線といった日常生活で受ける刺激によって生体に生じるがん細胞は、免疫系によって認識されて排除されます(排除相)。次第に免疫系によって排除されにくいがん細胞が発生してくるようになり、がん細胞の発生と免疫系による排除は平衡に達します(平衡相)。さらにがん細胞は、免疫系の攻撃を抑制する分子を取り込むことで、免疫監視をくぐり抜けて増殖し、臨床的に診断される「がん」になります(逃避相)。このようにがん微小環境では、がん細胞に対する免疫系の攻撃は、さまざまなメカニズムによって抑制された状態となっています。

がん細胞に対する免疫応答のなかでも注目を集めているのが、制御性T細胞と呼ばれる免疫抑制細胞です。制御性T細胞とは、本来は自己免疫病などにならないように、自己に対する免疫応答の抑制(免疫寛容)を司っている細胞で、健康人のCD4+T細胞のなかの約5%を占めています。しかし、がん細胞はこの制御性T細胞を利用して、免疫系からの攻撃を回避しています。実際、悪性黒色腫や肺がんなどの多くのがん微小環境では、免疫抑制能が強くなった制御性T細胞が、CD4+T細胞の20から50%に増加しています。   

当研究室では、がん微小環境における制御性T細胞の免疫抑制機構を明らかにすることで、制御性T細胞をコントロールして、がんに対する免疫応答を強化することで新たながん免疫療法の開発を目指しています。

当分野では、以下の事を重点的に研究しています。

  1. 制御性T細胞による自己反応性CD8+T細胞の不応答化 (anergy) 機構の解明
  2. 制御性T細胞除去による新規がん免疫療法の開発
  3. がん微小環境におけるT細胞活性化および抑制機構の解明
  4. がん微小環境での代謝と免疫応答の関連の解明
  5. がん微小環境へのT細胞浸潤機構の解明
  6. がん免疫療法でT細胞応答モニタリングによる抗腫瘍免疫応答の本態解明
Graphic Abstract