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国立がん研究センター

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がん対策情報センターの将来について

がん対策情報センター 副センター長 若尾 文彦

がん対策情報センター 副センター長 若尾 文彦写真

患者さん・ご家族から出された、がん医療に関する正しい情報の要望に応えるため、その中でがん対策企画立案に必要な基礎データの蓄積など、さまざまながん対策に関連する情報の収集、分析、発信等を担う情報基盤の中核的組織として、国立がんセンターにがん対策情報センターを設置することが提唱され、平成18年10月に開設されました。昭和37年の国立がんセンター創立時の運営に、「がん研究の情報センターとしての機能を発揮させること」と謳われておりましたが、国立がんセンターに情報発信を担う組織はなく、がん対策情報センターが設置されたことにより、初めて組織として整備されたといえると思います。がん対策情報センターは、当時の研究所、がん予防・検研究センターの各1部、運営局の2課を再編成して、がん情報・統計部、多施設臨床試験・診療支援部、がん対策企画課、情報システム管理課の2部・2課で、医療情報提供機能、がんサーベイランス機能、臨床試験支援機能、診療支援機能、研修支援機能、がん対策企画機能、情報システム管理機能の7つの機能を担うという変則的な体制でさらに、本来の対外支援機能に加え、旧運営局のセンター内支援業務を引き継いだ形でのスタートとなりました。

がん対策情報センターの使命(Mission Statement)は、次の通りです。「がん対策情報センターは、わが国のがん対策を総合的かつ計画的に推し進めるために必要な情報を整備する。厚生労働省を中心とする関係各者ならびにがん診療連携拠点病院等と協働して、がんに関する専門的、学際的、総合的な研究を推進し、教育研修、情報の普及、そして、予防、診断、治療、緩和医療、リハビリテーション、患者やその家族の継続的なケアに資するための企画、調整、評価など、わが国のがん対策を推進する中心的役割を果たす。」また、「がん対策情報センターは、がんによる負担を抱えているすべての国民の、がんの罹患率と死亡率を減らし、がんの患者や家族の苦痛の軽減ならびに療養生活の質の維持向上を図ることを目標とする。その結果として、がん患者がその居住する地域にかかわらず等しく科学的知見に基づく適切ながんにかかわる医療を受けることができる体制の構築を支援する。」を活動目標(Vision Statement)として掲げています。

平成22年4月国立がんセンターが独立行政法人となり、嘉山孝正理事長の元、さまざまな改革が行われてまいりましたが、がん対策情報センターにおいても、嘉山孝正センター長の元、業務改善、さらに組織改編が行われ、新生がん対策情報センターとして生まれかわりました。特に組織改編が、平成23年4月、6月、9月の3回行われ、がん情報提供研究部、がん情報統計研究部、がん医療支援研究部、たばこ政策研究部の4部体制となり、旧運営局が切り離されることで、医療情報提供機能、がんサーベイランス機能、診療支援機能、研修支援機能、たばこ政策支援機能の対外支援機能に特化した機能を担う形に整理されました。さらに、臨床と関連が強いがん医療支援研究部において、病理診断コンサルテーション推進室長、画像診断コンサルテーション推進室長、放射線治療品質管理推進室長を中央病院の津田病理科・臨床検査科科長、放射線診断科科長、放射線治療科科長が併任する形となるとともに、教育研修室長を中央病院教育担当副院長が併任する形となり、中央病院との連携が強化され、診療科長を責任者とするガバナンス体制が確立されました。

組織改編に加え、事業を実施する上でのコスト意識に関する意識改革も進みました。それは、非採算部門であるがん対策情報センターに於いて、事業の執行に際に極力経費の節減を徹底するとともに、コストパフォーマンスを踏まえて事業の見直しが徹底的に行われました。これは、今後、毎年減額されると予想される運営費交付金の中で必要な事業を継続するために必須な対応であると考えます。具体的には、従来がんセンターで作成したがんに関する冊子について、無償でがん診療連携拠点病院等に配布していましたが、経費縮減の中で印刷数が減少していき、各病院の機能強化事業費による個別印刷の対応が増えていきました。しかし、個別印刷では、ロット数が少ないために単価が割高となってしまうという問題がありました。そこで、各拠点からの受注を取りまとめて大量に冊子を印刷し、低コストで販売する仕組みをH23年度から開始いたしました。さらに、生命保険会社や製薬企業等などの民間企業と包括的連携に関する協定を締結し、がん対策情報センターが作成した冊子等を有償で提供したり、企業が作成する啓発ポスターの監修を行うなどの対応を開始しました。これらの活動は、従来リーチすることが難しかった対象に対して、配布物を協力者の工数で作成、配布し、かつ僅かであるが、協力費をいただくという何重ものメリットがあるものと考えます。今後、従来無償提供していた研修や遠隔コンサルテーションサービスについても、有償化の可能性について検討し、受益者負担により、事業を効果的かつ安定的に運営する仕組みを検討して、導入していく必要があると考えております。

広範囲にわたるがん対策情報センターの活動を実施するに当たっては、外部の専門家によるアドバイスや患者の視点でのアドバイスが必須のものであると考えます。現行では、病理診断コンサルテーション推進室コンサルタント、画像診断コンサルテーション推進室コンサルタント、がん治療品質管理推進室アドバイザリーパネル、がん登録研修専門家パネル、がん看護研修アドバイザリーパネル、相談支援センターがん専門相談員研修専門家パネル、がん検診受診向上アドバイザリーパネルの7つの専門家パネルと約100名の患者、家族、支援者などからなる患者・市民パネルを委嘱し、活動を支援していただいています。今後、活動の内容に合わせて専門家パネルを構成していくことが必要であると考えております。また、患者・市民パネルの役割もますます重要となり、情報提供のみならず、他の機能での活用を増やしていくべきものと考えます。

さらに、今後、重要視される役割として、都道府県がん診療連絡協議会を活性化し、全国の都道府県拠点病院からの現場の声を吸い上げ、政策提言としてとりまとめていくことがあると考えます。各都道府県拠点病院は、地元において診療連携協議会を開催し、地域がん診療連携拠点病院からの意見を取りまとめていますので、都道府県がん診療連携拠点病院の意見を取りまとめることは、全国のがん診療を実施している病院の意見を集約したものになると考えます。従来は、年1回の総会だけでしたが、平成22年度に臨床試験部会、平成23年度には、がん登録部会を立ち上げ、今後ニーズにあわせて新たな検討部会を立ち上げ、意見を集約していくことが必要となると考えております。

独法化により、意識改革が進み、機能に特化した形で改編された新生がん対策情報センターは、今後ますます、がん患者のために活動を推進してまいります。ご支援のほどよろしくお願いいたします。

注:このページは、平成24年1月に作成されたものであり、所属名称や役職については平成24年1月24日現在のものとなります。

がん対策情報センター図
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