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国立がん研究センター

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がん予防・検診研究センターにおける現状と将来について

がん予防・検診研究センター長 森山 紀之

がん予防・検診研究センター長 森山 紀之写真

がん予防・検診研究センター(以下予検センター)は、有効ながんの予防法と検診方法を研究、開発するとともに、それらを国民に効率的に普及することを使命とし2004年2月に設立されました。組織としては予防研究部、検診研究部、検診開発研究部より成り立っています。

予防研究部では、発がん要因究明のための疫学研究を実施しており、がん予防のために必要な新たな科学的根拠を作るとともに、現下での科学的根拠に基づいて有効でかつ具体的ながんの予防法を提示しています。多目的コホート研究としては、Japan Public Health Centerbased prospective Study (JPHC Study)として14万人のコホート研究を行い、国民生活にインパクトの大きい生活習慣とがんの関係を含めた160報以上のエビデンスを確立させています。国際的な研究としてはブラジル日系移民を対象としたがんの疫学研究として、サンパウロ日系人、ブラジル人、日本人の3つの乳がんの症例対象セットのデータを解析しています。アジアにおいては、がん予防を検討するためのアジアコホート連合、日中間におけるがん予防対策に関連する研究などの国際プロジェクトに参加しています。

検診研究部では、がん検診アセスメント(がん検診の有効性評価、ガイドライン作成)、がん検診実施マネジメント(がん検診の精度管理、検診の品質保証)および受診率向上に関する研究を行っています。アセスメントとしては、各種がんの検診ガイドラインの作成を行うとともに海外における検診に関する論文に対するステートメントの公表を行っています。マネジメントとしては、全国市町村について標準化受診率を算出し、がん対策情報センターホームページ上への公開を行っています。がん検診受診率向上対策としては、科学的根拠に基づいた検診受診勧奨の知識と技術の普及、かかりつけ医による受診勧奨の促進のため、がん検診受診向上アドバイザーパネル委員会による「かかりつけ医のためのがん検診ハンドブック」の作成を行いました。これらはいずれも国のがん対策推進基本計画の個別目標に明記されている研究項目の一環に入るものです。今後それらの構築、確立に資する研究をさらに進め、最終的にわが国のがん死亡率低減を実施することに貢献いたします。

検診開発研究部は、より有効ながん検診方法と検診後の取り扱いの確立を目標としています。予検センターにおいて高精度のがん検診を実施し、この結果と他フィールドでの検診結果との比較を通じて新しい検診方法の開発とその評価に関する研究を行っています。検診後の研究としては、検診において何らかの異常所見を有した群をその後どのように取り扱うかの研究を行い、同時に検診後の精査を目的とした新しい診断用機器の開発を行っています。

実際の検診については40歳以上の男女を対象とし、(表1)のような高精度の検診を行っており、検診コースとしてはPETを含む総合コース、PETなしの総合コース、女性コース等があります。費用についてはPETを含む総合コースで男性189,000円、女性225,750円、PETなしの総合コースで男性99,750円、女性136,500円となっています。検診受診者については1年ごとに追跡調査を行い検診後の発がん、予後等についてのフォローアップを行っています。検診時には検診目的とは別に17mlの血液を採取し、今後、検診で正常であった人に発がんがあった場合に検診時と発がん時との遺伝子の変化を観察する研究や、新しい腫瘍マーカーやがん遺伝子が出現した場合に検索研究を行う予定となっています。受診者数は年平均3,300人程度です。1年以上のフォローアップを行った総合コース初回受診者の成績は7,609人中395人(5.19%、多重がん12人)になんらかのがんが発見されました。このことは、症状のない40歳以上の男女の約20人に1人は何らかのがんを有していることを意味し検診の重要性が確認されています。早期がんの定義のある消化管がんについては食道がん11例中11例(100.0%)、胃がん79例中67例(84.8%)、大腸がん107例中95例(88.8%)が早期がんでの発見でした。診断用機器開発としては検診後の精査を目的とした人体応用可能な拡大CT(世界初)、乳がん診断用トモシンセシス(わが国一号機)、乳がん・肺がんを対象としたコンピューター支援診断検出装置(国産第一号の薬事承認)、仮想内視鏡、位置情報を有する超音波装置、全身用MRI等の研究開発が進められています。

予検センターのがん検診については今までは多くの規制があり、予検センターではがん以外の検診を行っていなかったため、がん検診の2日間以外にさらに別の検診を受けなければいけない等の理由で、多くの受診者からがん以外の検診の要望がありました。今後はがん検診にのみこだわらずがん以外の視力、眼底眼圧検査、聴力検査、心電図、オプションとして脳ドックを加えた総合検診を行う予定となっています。

表1 検査方法

表1.検査方法

表1 次年度からはこれらに加え、視力検査、眼底眼圧検査、聴力検査、心電図、脳ドック等の検査を加えることができるようになります。

注:このページは、平成24年1月に作成されたものであり、所属名称や役職については平成24年1月24日現在のものとなります。

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