コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター

トップページ > 広報活動 > セミナー・研修・イベント > 2014年以前 > 独法移行後雑感

独法移行後雑感

理事(経営・業務改善) 町田 睿

組織の若返り

理事(経営・業務改善) 町田 睿写真

当センターが、日本における最先端のがん治療のナショナルセンターとして、50年の歴史を閲してこられたことは、欣快の至りです。しかしながら、組織は断えず自己革新を心懸けていかなければ、必ず制度疲労を起し環境変化に対応し切れず、危機に陥るものです。民間企業であれ、公益法人であれ、行政機関であれ、組織の大小を問わず通用する公理です。経営学の泰斗であるドラッカーは、「これからの法人組織は、大企業を含め平均寿命は30年」と断言しています。日本の翼、JALの破綻や、福島原発で露呈した東京電力の杜撰な危機管理など、大きいから大丈夫とはいえない時代です。日本の中央官僚組織も、かつての輝きを失い、ノブレス・オブリージュ(高貴なるものの責務)の精神が陰り、自己保身の衝動にかられているように思われてなりません。

そんな中で、当センターが平成22年4月に独立行政法人への移行を機に、新しく嘉山理事長が就任されたことは、誠に時宜を得た名人事でありました。改革にこれ程相応しいリーダーはおりません。山形大学医学部の改革で示された数々の実績を踏えた颯爽たる登場でありました。


研究と治療の合一

組織には、組織目的としての理念と、それを実現するための戦略と体制が必要不可欠です。がんという病から人類を救う治療の場と、がんの生態を明らかにし撲滅する方策を編み出す研究の場とを併せもつナショナルセンターは、その嵩高な使命を担う高い使命感と情熱に裏打ちされた体制・組織でなければなりません。大きな組織体が継続して高いモラールを維持し続けることは至難のことです。何せ研究部門と治療部門の連携自体、組織運営上難しい上に、築地と柏の2ヶ所を掌握しなければなりません。組織の歪が50年に亘り蓄積されてきたとしても無理からぬことかも知れません。組織風土の劣化を防ぐには多大なエネルギーが必要とされます。現場への不断の目配りと問題意識を汲み上げ、果敢に改革・改善の実行に結びつけていかなければなりません。

嘉山理事長が優れておられる点は、強烈なパワーとスピードにあります。エネルギッシュに寸暇を措しんで業務に没頭するパワーと改革や改善の必要性を把握した後の実践のスピードの速さは驚きの一語につきます。

組織の風土改革は長い時間を要します。通常10年はかかるといわれています。改革の必要性や新しい理念を組織構成員が理解する段階、そしてそうあらねばならないと皆が確信する段階、さらには実践の場で自然にそれが実行される段階と長い道程が必要とされています。しかしながら、嘉山理事長は個別具体的な案件を一つひとつ精力的に変革していくパワーとスピードを発揮しておられます。風土改革のステップが加速され、組織が活性化しつつあることが実感されます。

医療を通して日本改革を

失われた20年と自嘲し、GDP第2位の座を中国に奪われてから、日本には閉塞感が漂っています。人件費の安い新興国との競争からすれば、製造業中心の輸出立国は困難になってきています。科学技術立国としての道へと舵を切換えなければなりません。科学技術の中で医療は最も重視されることになるでしょう。就中、長寿国日本に再び明るさと活力を取り戻すには、予防と治療のニーズの最も高いがん対策が、重要です。日本が世界のがん医療センターとして、人類の平和と幸福に貢献できるよう国立がん研究センターの次なる50年に期待したいものです。


注:このページは、平成24年1月に作成されたものであり、所属名称や役職については平成24年1月24日現在のものとなります。

ページの先頭へ