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国立がん研究センター

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国立がん研究センター東病院臨床開発センターの現況と展望

東病院・臨床開発センター センター長 大津 敦

東病院・臨床開発センター センター長 大津 敦写真

東病院臨床開発センターは、2005年10月に柏キャンパス内の国立がんセンター研究所支所(当時)の組織改編により発足しました。柏キャンパスの臨床(病院)部門と基礎部門が一体となって新しい臨床開発に取り組み、新しいがん医療の世界的開発拠点となることを目指しています。

東病院・臨床開発センターでは、すでに他の大学や国の研究所、製薬・医療機器メーカーなどと多数の共同研究を実施し、多くの成果を産みだしてきました。新しい抗がん剤開発においては、現在主流となっている国際共同治験にも国内で最も積極的に取り組み、わが国での疾患頻度が高い胃癌・肝癌などの分野では世界の開発の中心となりつつあります。早期開発試験では、first-in-human試験も複数経験し、当院での第 I 相試験から欧米を巻き込んだグローバル第 III 相比較試験への展開も経験しています。当臨床開発センターと東大とのナノテクノロジーの共同研究から産みだされたDDS製剤も、現在国内および欧米などの海外での開発治験へ発展し、新しいがんワクチンの早期臨床試験も開始しています。放射線分野では、国内で最初に設置された陽子線治療の開発を行い、頭頸部がんや前立腺がんでは、従来の放射線治療にはない優れた成績をあげて多くの患者さんに適用されています。画像診断機器においても、PET-CT画像処理アルゴリズムやスーパーMRIなどの機器開発を東大や企業などと共同で行い、より微細な診断機器開発を行っています。さらに、内視鏡分野ではすでに世界的に標準化しつつある、新しい診断機器のNBI(narrow band imaging)を開発し、企業や理科大との共同による新しい診断機器開発も進めています。緩和医療にも国内で最も古くから取り組み、がんに伴う精神症状を専門的に診療する精神腫瘍科を日本で最も古くから開設し、がん患者さんのさまざまな支援を行ってまいりました。さらに、地元医師会などとの連携で緩和ケア地域連携モデルも構築しています。

現在、さらに新しい医薬品医療機器開発を進めるための基盤整備を進めています。2008年に、病院の治験管理室とは別個に臨床試験支援室を立ち上げ、CRCやデータマネージャーを配置して、院内の研究者主導臨床研究のサポートを行うとともに、薬事、知財、生物統計などの専門家を整備して、本格的な新規医薬品・医療機器開発に着手しました。わが国が遅れていた早期臨床試験に積極的に取り組み、新薬開発のスタートとなる第 I 相試験を積極的に実施し、すでに国内で最多の実績をあげるようになりました。日本からの臨床開発を目指して、世界に先駆けた新規抗がん剤のfirst-in-human(FIH)試験にも取り組み、すでに5試験を実施しています。さらに、当臨床開発センターのオリジナルな基礎研究から産まれた、新規抗がん剤がんワクチンの第 I 相試験も開始し、基礎から臨床へのいわゆる橋渡し研究(TR)に本格的に乗り出しました。2010年の独法化は、さらに産官学連携を深めて新規医薬品・医療機器開発を進める追い風となり、特に規制当局や企業からの新たな人材雇用が可能となったことは大きな推進力となっています。

今後、東病院・臨床開発センターが目指すべきものは、(1)新規医薬品の世界的開発拠点、(2)内視鏡や放射線などの診断・治療機器開発、(3)新しい支持療法・患者支援体制の開発です。(1)に関しては、現在のphase I センター整備を進めてFIH試験を積極的に展開し、新規抗がん剤やがんワクチン開発の世界の拠点となることです。すでに、海外との連携を積極的に展開し、アジアでは新規抗がん剤開発のトップの地位を確立しつつあり、新薬開発に携わる世界の研究者ネットワークに参加していますが、さらに一層の整備を進めて欧米のトップ施設に比肩する開発拠点を目指します。(2)に関しては、近隣の東大、東京理科大を始めとした、アカデミア施設や国内企業との共同研究をより一層推進して、画期的な新規診断医療機器開発拠点を目指しています。陽子線治療は、世界でも最も早くから実施しており、頭頸部がんや前立腺がんなどでは、従来にない治療成績をあげ、治療患者数が急増しています。(3)に関しては、がん患者にみられる抑うつ状態やせん妄などの病態解明を進め、新しい治療法の開発を推進し、がん患者さんのQOL向上に大きく貢献するモデルを構築します。

われわれ、東病院・臨床開発センターは、がん領域での新規医薬品・医療機器の世界の開発拠点を明確に目指し、世界のがん医療の向上に貢献します。今後とも関係各方面のご支援をいただければ幸甚です。

注:このページは、平成24年1月に作成されたものであり、所属名称や役職については平成24年1月24日現在のものとなります。

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