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国立がん研究センター

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トリプルネガティブ乳がんを対象とした未承認薬の医師主導治験を開始

未承認薬を用いた多施設共同試験をリードする早期臨床試験の新たなモデル

2013年5月8日
独立行政法人国立がん研究センター

独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田 知光)早期・探索臨床研究センター(外部サイトにリンクします)(NCC-EPOC)では、未承認薬を用いた多施設共同の早期臨床試験(第I/II相臨床試験)を開始いたしました。当試験は、当センターが中心となり、国内3施設(独立行政法人国立がん研究センター中央病院、独立行政法人 国立病院機構 大阪医療センター、独立行政法人 国立病院機構 四国がんセンター)で実施する未承認薬の医師主導治験であり、院内体制を活用したアカデミア発の新薬開発を実現する画期的な試みとなります。

対象となるホルモン受容体陰性かつHER2過剰発現のないトリプルネガティブの乳がん(注1)(以下TNBC)は、乳癌全体の10%から20%を占め、若年者に多く、悪性度が高いとされています。現在、化学療法のみが適用となりますが治療選択肢が限定されているため、新たな治療の開発が切望されています。

今回、既承認のエリブリン(ハラヴェン(R)(注2))と未承認薬であるオラパリブ(AZD2281)の併用により、より高い治療効果と選択肢を広げ、また探索的なバイオマーカー研究を含めた高いレベルのエビデンス創出を目的とし、1月8日に医薬品医療機器総合機構に治験届を提出、1月下旬より登録を開始、既に投与を開始しております。

オラパリブは、アストラゼネカ株式会社(以下アストラゼネカ)が開発中のPARP(注3)(DNA修復を担う酵素)を阻害する経口剤です。TNBCの一部は、BRCA遺伝子(注4)の異常と関連のあることが報告されています。BRCA遺伝子異常があると、DNA修復機構が不完全となり、別のDNA修復機構であるPARPが活性化されると考えられています。このため、BRCAに関連した乳がんでは、PARPを標的とするオラパリブの治療効果が期待できる可能性があります。また、併用薬であるエリブリンは、国内外で手術不能または再発乳癌の適応で承認されている薬剤で、中でもTNBCに有効であるという学会報告がなされており、オラパリブとエリブリンを併用することで、TNBCにおける新たな治療選択肢を提供するエビデンス創出に期待が寄せられています。

詳しくは関連ファイルのプレスリリースをご参照ください。

  • プレスリリース:トリプルネガティブ乳がんを対象とした未承認薬の医師主導治験を開始

参考情報

注1:トリプルネガティブの乳がん

ホルモン療法の対象となるエストロゲン受容体やプロゲステロン受容体といったホルモン受容体がなく、また、ハーセプチン?という薬剤の治療対象となるHER2受容体の過剰発現もないタイプの乳がん。悪性度が高く、化学療法のみが適用とされ、治療選択肢が限定されています。

注2:エリブリン(商品名:ハラヴェン(R))

エーザイ株式会社が製造販売している抗がん剤で、チューブリンの重合を阻害し、微小管伸長を抑制することで、細胞分裂を障害して抗腫瘍効果を現します。

2012年12月に、アンスラサイクリンとタキサン系の抗がん剤の治療歴を持つ局所進行・転移性乳がんの方を対象にした治験成績が第35回サンアントニオ乳がんシンポジウムで報告され、トリプルネガティブの乳癌の患者さんで、対照薬のカペシタビンよりも有意に生存期間を延長したことが報告されています。

注3:PARP

PARPはポリADP-リボースポリメラーゼという酵素の略称です。PARPは、DNA損傷に伴い活性化され、1本鎖DNAへのADP-リボース残基に働きかけDNAの損傷を修復します。抗がん剤で傷つけたがん細胞のDNA修復にも関わると言われており、抗がん剤の治療耐性化にも関与すると考えられています。

注4:BRCA遺伝子異常

BRCA遺伝子はがん抑制遺伝子で、遺伝性乳癌・卵巣癌の原因遺伝子として知られています。BRCA遺伝子の遺伝子産物であるBRCAタンパクは、2本鎖DNAが傷害された場合に相同組み換えを行う機能を通じてDNAを修復します。

本試験の支援について

公益社団法人 日本医師会治験促進センターの治験推進研究事業の支援により実施しています。
 課題名:治療抵抗性再発・転移性トリプルネガティブ乳癌に対するOlaparibと化学療法の併用療法の開発 研究代表者:米盛 勧(中央病院 乳腺・腫瘍内科)

アカデミア

大学、病院などの研究施設。従来、日本では早期開発を行う体制が不十分だったことから、国内のアカデミアで発見されたシーズが海外で開発・販売され、結果としてドラッグラグや医薬品の輸入過多を生む一因となっていました。近年、国を挙げて早期開発体制の整備が進められ、アカデミア発のシーズを国内でいち早く実用化する取り組みに大きな期待が寄せられています。

早期・探索臨床研究センターについて

国立がん研究センター早期・探索臨床研究センター(センター長:大津 敦、略称:NCC-EPOC(エポック))は、厚生労働省「早期・探索臨床試験拠点整備事業」の支援を受け、2012年に設立された組織です。(1)世界で初めてヒトに投与を行うfirst-in-human (FIH)試験、(2)未承認薬医師主導治験、(3)橋渡し研究(トランスレーショナルリサーチ)の推進をミッションとして、世界トップレベルの新薬開発拠点を目指します。

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