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国立がん研究センター

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成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)に対するインターフェロンα/ジドブジン併用療法の第III相臨床試験を開始

新たな治療法の開発モデル 先進医療評価制度下の臨床試験を難治性血液疾患において実施

2013年9月30日
独立行政法人国立がん研究センター

独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田 知光、以下国立がん研究センター、略称:国がん)は、低悪性度の成人T細胞白血病・リンパ腫(Adult T-cell leukemia-lymphoma: ATL)(注1)に対するインターフェロンα/ジドブジン併用療法(IFNα/AZT療法)(注2、注3)の有用性をこれまで標準的に行われてきた無治療経過観察と比較・検証する第III相臨床試験(JCOG1111試験:ジェイコグクワドワン試験)を中央病院(院長:荒井 保明、東京都中央区)、および東病院(院長:西田 俊朗、千葉県柏市)にて、2013年9月19日に開始いたしました。

本プレスリリースのポイント

  • 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)は世界的に患者数の少ない「希少がん」。日本の西南部、中南米、アフリカの一部などに偏在している。HTLV-1ウイルス感染が病因であり、キャリアは国内に約100万人存在する。日本でのキャリアの生涯ATL発症率は数%、毎年約1,000人が発症。がん対策推進基本計画では、ATLの治療開発や相談・診療体制の整備が責務とされている。
  • 信頼性の高い臨床試験により、科学的根拠に基づく治療法の確立が急がれる低悪性度ATLの標準治療の確立をわが国から世界に対して発信する重要な試験。
  • 新先進医療評価制度下で「先進医療B」が適用された医師主導臨床試験。早期・探索臨床試験拠点である国立がん研究センターで全国に先駆けて実施。

背景

現在日本では、低悪性度ATLは、通常の抗がん剤による治療では予後は改善されないと考えられていること、また経過がゆるやかであることから、高悪性度ATLへ進展するまで治療は行わずに経過を観察する(無治療経過観察)のが一般的でした。しかし、無治療経過観察では、高悪性度ATLへの進行を防ぐことができず、診断されてから5年後に生存している患者さんの割合は約半数と報告されています。

海外ではATL治療に抗腫瘍・抗ウイルス・生体応答調節作用を有するインターフェロンα(IFNα)と抗HIV薬であるジドブジン(AZT)の併用が広く行われています。特に近年、低悪性度ATLに対してIFNα/AZTが有用であるという報告がなされました。それによると、IFNα/AZT療法は日本での無治療経過観察よりはるかに優れた治療法であることが期待されますが、少数例の後ろ向き調査であることから科学的な検証が必要です。

本試験の概要

JCOG1111試験は、日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group: JCOG)(注4)が計画・立案した第III相ランダム化比較試験です。低悪性度ATLに対するIFNα/AZT療法の有用性を、これまで標準的に行われてきた無治療経過観察と比較・検証します。IFNαとAZTは、本邦ではATLに対する薬事承認がないことから、「先進医療B」(注5、注6)という制度を利用して実施します。

本試験は、まずは未承認薬や適応外薬の投与・管理体制の整っている早期・探索的臨床試験拠点施設(注7)の国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)および東病院(千葉県柏市)の2施設で開始します。これら2施設でIFNα/AZT療法の安全性が確認された後、段階的に全国のJCOGリンパ腫グループ約40施設でも開始される予定です。

今後の展望

JCOG1111試験は、低悪性度ATLの標準治療を第III相ランダム化比較試験という最も信頼性の高い形で検証する世界初の試みです。本試験の結果はわが国のみならず、世界に偏在するすべての低悪性度ATL患者さんの恩恵となりうるものであり、国立がん研究センターおよびJCOGは、本試験の安全かつ確実な実施に注力してまいります。

JCOG1111試験の情報は国立がん研究センターホームページでもご覧いただけます。

jcog banner

  • 成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)に対するインターフェロンα/ジドブジン併用療法の第III相ランダム化比較試験(JCOG1111)

問い合わせ先・報道担当

JCOG1111試験に関するお問い合わせ

東病院 臨床試験支援室 治験問い合わせ担当
電話番号:04-7133-1111 内線番号:5200
Eメール:jcog1111●east.ncc.go.jp(●を@に置き換えください)

報道担当

国立がん研究センター 企画戦略局広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表) ファクス番号:03-3542-2545
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp(●を@に置き換えください)

ATLに関する情報(外部リンク)

ATLやHTLV-1ウイルスに関する情報を紹介しているサイトです。

補足説明

  • 注1:ATL(成人T細胞白血病・リンパ腫)について
    ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1)によって引き起こされるT細胞性の白血病・悪性リンパ腫で、HTLV-1キャリアの分布に一致して、九州・沖縄地方など西南日本の沿岸部、中南米、アフリカの一部に多発します。日本では人口の移動に伴い近年ではそれらの地域以外での発生も以前より多くなっています。HTLV-1キャリアの人のうち年間1,000人に1人がATLを発症し、母乳で感染したキャリアの人が生涯にATLを発症する確率は5%程度といわれています。ATLの臨床病態は非常に多彩ですが、(1)急性型、(2)リンパ腫型、(3)慢性型、(4)くすぶり型の4つのタイプに分けられます。さらに、急性型、リンパ腫型、および予後不良因子を有する慢性型を「高悪性度ATL」、予後不良因子を有さない慢性型ならびにくすぶり型を「低悪性度ATL」と呼んでいます。
  • 注2:インターフェロンα(IFNα)について
    IFNαは多彩な生物学的活性をもつサイトカインで、その作用機序として以下の3つが考えられています。(1)ATL細胞に対する直接的な増殖抑制作用、(2)抗ウイルス作用(細胞を抗ウイルス状態にしてウイルスが感染しても細胞内で増殖できないようにする作用)、(3)生体応答調節作用(免疫増強作用や腫瘍細胞の分化促進作用など)。本試験で使用するスミフェロンR注DSは、本邦では現在、腎癌、多発性骨髄腫、慢性骨髄性白血病などの悪性腫瘍とウイルス性肝炎・肝硬変の一部ならびにHTLV-1関連脊髄症に対して承認されています。
  • 注3:ジドブジン(zidovudine、別名アジドチミジン azidothymidine:AZT)について
    AZTは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に対して高い抗ウイルス作用を示します。HTLV-1においては、HIVに対するような機序(逆転写酵素阻害)での抗ウイルス作用は強くないと考えられていますが、別の作用機序(テロメラーゼ活性阻害)により効果を示すことが期待されています。AZTは、本邦では現在HIV感染症に対してのみ承認されています。
  • 注4:JCOG(Japan Clinical Oncology Group、日本臨床腫瘍研究グループ)について
    日本で最大の公的研究費による多施設共同研究グループです。JCOGの目的は、多施設共同臨床試験を実施することによって、新しい標準治療(最も効果的な治療)を確立することです。JCOGは、1990年、厚生省がん研究助成金指定研究「固形がんの集学的治療の研究」班(主任研究者 下山正徳)において、米国のがん臨床研究グループSWOG(Southwest Oncology Group)等を手本に、設立されました。国際的に通用する臨床試験の実施とデータ保証ができる体制を整備しています。研究グループには16の専門分野別のグループがあり、日本全国から約200の医療機関が参加しています。
    がん治療の進歩のために(外部サイトにリンクします)
  • 注5:先進医療Bの枠組みで臨床試験を実施する経緯
    本件は、2010年7月16日に初回の厚生労働省医政局研究開発振興課への事前相談を行い、プロトコール作成・試験実施体制の整備等、準備を進めてきました。その後、高度医療評価制度に関わる制度変更への対応等も行い、2012年12月14日に厚労省に申請書を提出しました。2013年2月7日の先進医療技術審査部会、2013年7月19日の先進医療会議を経て、2013年8月1日より先進医療Bのもとでの臨床試験実施が可能となり、今般2013年9月19日より試験を開始することとなりました。
  • 注6:先進医療制度のもとで医師主導臨床試験を行うメリット
    通常、医師主導臨床試験で未承認(適応外を含む)薬が使われる場合、有効性・安全性が確立していない医療行為のみならず日常的に行われている薬剤費、検査費、診察費のすべてが自費診療となります。費用さえ調達できれば自由に治療開発が可能ですが、通常そのような費用の全てを研究費や患者さんの負担でまかなうことは困難です。しかし、先進医療制度下ではすでに日常的に行われている医療行為部分が保険診療として実施可能なため、JCOG1111試験にかかわる検査・治療費には健康保険が適用されます。さらに、本試験ではIFNαとAZTの薬剤費を国の研究費で賄うため、患者さんに薬剤費を負担していただく必要はありません。
  • 注7:早期・探索的臨床試験拠点について
    2011年の厚生労働省「早期・探索的臨床試験拠点整備事業」によるもので、がん領域では唯一国立がん研究センターが選定されました。厚生労働省の支援を受け、新薬候補である化合物をヒトに初めて投与するfirst-in-human試験、基礎研究と臨床研究をつなぐトランスレーショナルリサーチを精力的に行っています。

出典

  1. Yamada Y. Rinsho Ketsueki. 2001 Apr; 42(4): 293-8.
  2. Takasaki Y, et al. Blood. 2010 Jun 3; 115(22): 4337-43
  3. Bazarbachi A, et al. J Clin Oncol. 2010 Sep 20; 28(27): 4177-83.
  4. Ishitsuka K, Fukushima T, Tsukasaki K, Tobinai K. J Clin Oncol. 2010 Dec 20;28(36):e765.

記者説明会資料

成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)に対するインターフェロンα/ジドブジン併用療法の第III相臨床試験開始に関する記者発表会(2013年9月30日開催)

関連ファイルをご覧ください。