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国立がん研究センター

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骨肉腫の治療効果予測に有効なマイクロRNA特定 予後不良な骨肉腫の新規治療法開発を目指す

2016年11月28日
国立研究開発法人 国立がん研究センター

本研究成果のポイント

  • 骨肉腫の予後に大きく影響する術前化学療法の効果予測に有効な2種類のマイクロRNAを特定
  • 研究成果をもとに、治療前に効果予測できる診断技術の開発をシスメックス株式会社と共同で開始
  • 予後不良症例を特定し、分子機構解析を進めることで新たな治療法開発を目指す

国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、東京都中央区)は、代表的な希少がんである骨肉腫において、予後に大きく影響する術前化学療法の効果について、その予測に有効なマイクロRNA(注)を2種類特定しました。
骨肉腫においては、術前化学療法と手術が標準的な治療法ですが、術前化学療法は効く場合と効かない場合があり、効いた場合は予後が比較的良く、一方で効かない場合の予後は極端に悪いことが認められています。しかし、その治療効果を予測する方法がなく、効かない症例の分子機構解明に至っておらず、予後不良な骨肉腫の新規治療法開発につなげるべくその手法が求められていました。

本研究成果は、国立がん研究センター研究所(所長:間野博行)希少がん研究分野長 近藤格をはじめとする希少がんセンターメンバーによるもので、国際的な肉腫の専門科学誌「Sarcoma」にて論文発表されました。

本研究成果について、研究チームの一人でもある国立がん研究センターの川井章希少がんセンター長は、次のように述べています。
「骨肉腫の治療成績は術前化学療法の効果に大きく依存することが知られていますが、これまで、その効果を治療前に予測する方法は存在しませんでした。今回の研究は、実際に抗がん剤を投与する前にその治療効果予測に有効と考えられるマイクロRNAを特定したという点で、患者さんの負担の軽減、より効果的な治療法の開発につながる重要な成果だと思います。今後、より多くの症例を解析してデータの信頼性を上げるとともに、新たな治療法の開発にも役立てていきたいと思います。」

国立がん研究センターは、研究所や病院など各部門が連携し、今後も希少がんの研究を推進してまいります。

背景

骨肉腫は、骨から発生するがんで、軟骨肉腫やユーイング肉腫などと共に原発性悪性骨腫瘍に分類されます。日本では、人口100万人に対して約2人、全国での年間発生は200人から300人の代表的な希少がんです。10代から20代の若年者の膝周りや肩の周囲に発生することが多いのが特徴ですが、高齢者にも一定の割合で発症します。
初診時遠隔転移のない骨肉腫に対する標準的な治療法は、術前化学療法→手術→術後化学療法で、術前化学療法が効いた場合の5年生存率は80%程度ですが、効かない場合は20%程度と大きな差があります。

骨に発生する原発性悪性腫瘍の内訳 図
骨に発生する原発性悪性腫瘍の内訳
(国立がん研究センター2006年から2011年257例)

希少がんの新しい治療法の開発は、社会的に大きな課題となっています。国立がん研究センターは、骨肉腫の分子背景の解明や治療法の開発を長年行い、現在では標準的な治療の確立も進んでいます。しかし、手術前に行われる化学療法では、効果が認められる場合と認められない場合があり、効果が認められた症例の予後は比較的良好であるのに対し、認められない症例の予後は不良であることが認められています。しかし、その治療効果を予測する方法や治療抵抗性の分子機構の解明には至っていません。

治療前に効果の有無を予測できるようにすることは、無効な治療、副作用を避けるだけではなく、効果が認められない予後不良症例を特定し、その分子機構の解析を行うことにより新しい治療法の開発にもつながります。このような理由から、治療効果を予め予測可能なマーカーの開発は、骨肉腫のみならず希少がんの新治療開発応用の点でも強く求められています。

研究手法と成果

本研究では、治療前の切開生検サンプルを用いて、奏効性に関わるマイクロRNAを網羅的に調べ、化学療法の奏効症例と抵抗症例を比較したところ、2種類のマイクロRNA(miR100とmiR125b)の発現が、抵抗症例において著しく高いことがわかりました。
骨肉腫症例20例の追加症例においても同様に、この2種類のマイクロRNAの発現が高い症例では、化学療法に抵抗性を示すことが検証され、臨床的な有用性が強く示唆されました。骨肉腫細胞を用いた機能解析実験でも、この2種類のマイクロRNAの発現を亢進させると骨肉腫細胞の増殖や浸潤が亢進したり化学療法剤で誘導されるアポトーシスに抵抗性が増すことが分かりました。また、この2種類のマイクロRNAの発現を抑制すると、骨肉腫細胞は化学療法剤に対して感受性を示すようになることがわかりました。また、2種類のマイクロRNAによって誘導される分子機構として、sirtuin (silent mating type information regulation 2 homolog 5, SIRT5)の発現誘導を確認しました。SIRT5は、エネルギー産生、アポトーシス、シグナル伝達に関わるミトコンドリアに存在します。SIRT5は肺がん細胞において増殖、浸潤、化学療法剤への抵抗性に寄与するとの報告がありますが、骨肉腫での役割は未だ不明です。2種類のマイクロRNAそしてSIRT5の研究から、新たな治療法につながる発見がこれから期待できます。

研究内容と将来の展望 図

今後の展望

本研究成果により、治療前に効果を予測に有効なマイクロRNAを活用した診断技術の開発に、今後、シスメックス株式会社と取り組みます。
また本研究を発展させ、術前化学療法の効果が認められない予後不良の骨肉腫症例の分子機構解析を進め、分子標的薬など新しい治療法の開発を目指してまいります。
本研究によって、腫瘍組織を用いた網羅的解析が希少がん研究において有効であることが実証されました。骨肉腫以外の希少がんにおいても同様の解析を進めることで、臨床への応用が期待される成果が期待されます。

用語解説

注 マイクロRNA
血液や唾液、尿などの体液に含まれる22塩基程度の小さなRNAのこと。近年の研究で、がん等の疾患にともなって患者の血液中でその種類や量が変動することが明らかになっています。

論文情報

  • 雑誌名:Sarcoma
  • タイトル:miR-125b and miR-100 are predictive biomarkers of response to induction chemotherapy in osteosarcoma
  • 著者:Daisuke Kubota, Nobuyoshi Kosaka, Tomohiro Fujiwara, Akihiko Yoshida, Yasuhito Arai, Zhiwei Qiao, Fumitaka Takeshita, Takahiro Ochiya, Akira Kawai, and Tadashi Kondo

研究費

  • 国立がん研究センター がん研究開発費
    「研究課題名:拡張型コアファシリティ機能による、TR/リバースTRの総合支援を含む研究・開発支援(26-A-3)」
  • 国立研究開発法人日本医療研究開発機構
    革新的がん医療実用化研究事業「臨床検体を用いた多層的オミクス解析による分子標的薬の肉腫への適応拡大のための基盤的研究」

プレスリリース

  • 骨肉腫の治療効果予測に有効なマイクロRNA特定予後不良な骨肉腫の新規治療法

関連ファイルをご覧ください。

報道関係からのお問い合せ先

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表)
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp(●を@に置き換えください)

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