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小児急性リンパ性白血病第一再発の高リスク群対象
医師主導治験全国9施設で開始

2017年2月22日
国立研究開発法人国立がん研究センター


国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜斉、所在地:東京都中央区)中央病院(病院長:西田俊朗)は、小児の急性リンパ性白血病の第一再発例の高リスク群の患者さんを対象に分子標的薬を含む多剤併用寛解導入療法の医師主導治験(第II相試験)を実施します。本治験は、日本小児がん研究グループ(JCCG)で小児の急性リンパ性白血病の再発に対する治療を行う当センターを含む全国9施設との多施設共同試験として実施します。
小児がんにおける新薬の開発研究(治験)は、症例数が少ないなどの理由から製薬会社で行うことが難しく、国立がん研究センターでは医師の企画で薬剤の適応を広げるなどの医師主導治験を積極的に実施しています。

急性リンパ性白血病は、リンパ球のもととなる細胞(リンパ芽球)が、がん化した白血病で、小児がんの中では最も多く、年間約500例の小児が発症します。治療はリスクに応じて、複数の抗がん剤を組み合わせた化学療法をはじめ、造血幹細胞移植、放射線治療が行われることもあります。初発例の治療成績は年々上昇しており、5年生存率は80%を超えていますが、再発例、特に今回の治験を行う高リスク群の予後は不良で新しい薬剤開発が待たれています。

今回の治験を行う薬剤は、多発性骨髄腫などの標準治療として使用されるボルテゾミブで、従来小児の急性リンパ性白血病の治療に使用される薬剤5剤との多剤併用療法となります。安全性と、薬の量を確認するために行われた第I相試験では2度目の再発や、同種造血細胞移植後の再発、T細胞性リンパ性白血病の再発などの患者さん3例で行われましたが、全例で寛解(かんかい:骨髄中の白血病細胞が5%未満となっている状態)が得られています。

今回の医師主導治験の概要

治験対象

本治験の対象は、小児急性リンパ性白血病の1回目の再発の患者さんのうち、高リスク群の患者さんです。高リスク群とは、T細胞性リンパ性白血病の骨髄再発と、B前駆細胞性リンパ性白血病のうち初めての発症(初発)から短い期間に骨髄再発をきたした患者さんとなります。
高リスク群が治癒する確率は35%と低く、治癒を目指すためには寛解の基準とする骨髄中の白血病細胞5%以下を達成後、速やかな造血幹細胞移植が必要となります。第2寛解達成後の造血幹細胞移植による治癒率が60%前後であるのに対し、寛解を達成できない症例では造血幹細胞移植による治癒率は5%程度と、移植を行っても治癒が期待できないため、再発急性リンパ性白血病の高リスク群に対しては、適切な化学療法で寛解を達成する事が非常に重要です。
しかしながら、高リスク群では欧米で再発小児急性リンパ性白血病の標準治療として開発された従来からの薬剤の組み合わせによる治療では寛解率も不良であり、この群に対しては有望な新規薬剤も存在しないのが現状です。今回、私たちはボルテゾミブと従来から使用される多剤併用療法の組み合わせが、再発リンパ性白血病の高リスク群に対する有効な新しい治療選択肢となる事を期待して医師主導多施設第II相試験を開始いたしました 。

本治験の詳細は、以下よりご確認ください。
https://upload.umin.ac.jp/cgi-open-bin/ctr/ctr_view.cgi?recptno=R000027309外部サイトへのリンク

再発小児急性リンパ性白血病に対するボルテゾミブ

ボルテゾミブは、プロテアソームという細胞内の酵素の働きを抑える事で、白血病細胞の増殖を抑える抗悪性腫瘍薬です。米国で、再発小児急性リンパ性白血病の高リスク群に対してビンクリスチン、デキサメタゾン、PEG-アスパラギナーゼ、アントラサイクリン系薬剤1剤(ドキソルビシンまたはダウノルビシン)の4剤とボルテゾミブの併用療法の2つの第II相試験が行われ、70-80%の高い寛解導入率を達成し、ボルテゾミブの毒性としては、末梢神経毒性や感染症などが認められましたが許容範囲内でした。

医師主導治験参加施設

全国の各地区9施設で行わるため、比較的近くの医療施設での参加が可能です。
  • 国立がん研究センター中央病院(東京都)
  • 福島県立医科大学附属病院(福島県)
  • 国立成育医療研究センター(東京都)
  • 神奈川県立こども医療センター(神奈川県)
  • 国立病院機構名古屋医療センター(愛知県)
  • 新潟県立がんセンター新潟病院(新潟県)
  • 京都大学医学部附属病院(京都府)
  • 三重大学医学部附属病院(三重県)
  • 兵庫県立こども病院(兵庫県)

今回の医師主導治験の意義

今回の医師主導治験(第II相試験)においては、本邦で再発小児急性リンパ性白血病に対して使用経験が豊富なプレドニゾロン、ビンクリスチン、L-アスパラギナーゼ、シクロフォスファミド、ダウノルビシンの5剤にボルテゾミブを加えた寛解導入療法を行います。米国での第II相試験の結果をみても、再発小児急性リンパ性白血病に対する欧米の標準的な治療を超える寛解導入率が期待されます。また、米国のボルテゾミブの第II相試験と比べると、1剤(シクロフォスファミド)を追加した治療となっており、より高い抗腫瘍効果を示す可能性があります。実際、この5剤+ボルテゾミブの寛解導入療法を用いて行われた本邦の第I相試験では、1剤を加えたことによる毒性は許容範囲内であり、安全性を確認でき、また米国の第II相試験で成績の悪かったT細胞性リンパ性白血病の再発例や移植後の再発例を含む難治例3例全例で寛解を達成する事が可能でした。

本治験において、ボルテゾミブを加えた多剤併用療法での再発小児急性リンパ性白血病に対する有効性が証明できれば、ボルテゾミブの再発小児急性リンパ性白血病に対する適応拡大につながり、治療選択肢の少ないこの群に対する重要な選択肢の一つとなる可能性があります。

医師主導治験について
新しい薬が承認され、保険で使えるようになるためには新薬の開発研究(治験)が必要です。以前は製薬会社だけが治験を行っていましたが、2003年7月に医師や歯科医師が治験を企画して医薬品開発にかかわることが認められました。このように医師や歯科医師が自ら治験を実施することを医師主導治験といいます。抗がん剤はその適応が細かく厳しく定められています。あるがん種に効くであろうことがわかっている薬剤でも、適応外であれば使うことができません。そこで国立がん研究センターでは、医師主導治験を積極的に行い、抗がん剤をはじめとする薬剤の適応を広げる取り組み推進しています。

【日本小児がん研究グループ(Japan Children’s Cancer Group, JCCG)について】
http://jccg.jp/外部サイトへのリンク
JCCGとは、2014年12月にNPO法人として設立された小児がんに関する臨床研究グループです。JCCGには日本で小児がん治療・研究を専門とするほぼ全ての大学病院、小児病院(小児がん拠点病院、中央機関を含む)、総合病院(小児血液・がん専門研修施設)が参加しています。幅広い領域の専門家が結集し、小児がんの最先端で最良の治療成果を日本や世界各国の子ども達に届けることを使命と考える、オールジャパンに立脚する唯一の組織です。

【研究費】

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)革新的がん医療実用化研究事業
「難治急性リンパ性白血病に対するボルテゾミブ追加多剤併用療法の国内導入(医師主導治験)」

プレスリリース
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