切除不能な進行大腸がんに対する新治療「TAS-102とベバシズマブの併用療法」の有効性を確認─切除不能な進行大腸がんの新たな治療法になる可能性─ << 国立がん研究センター
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切除不能な進行大腸がんに対する新治療
「TAS-102とベバシズマブの併用療法」の有効性を確認
─切除不能な進行大腸がんの新たな治療法になる可能性─

2017年8月1日
国立研究開発法人 国立がん研究センター


国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区、略称:国がん)、東病院(院長:大津 敦)消化管内科長吉野孝之を研究代表者として、国立がん研究センター東病院臨床研究支援部門が主導する共同研究グループは、既存の標準治療後に抵抗性となった大腸がん患者さんに対して、TAS-102*1 (トリフルリジン・チピラシル塩酸塩)とベバシズマブを併用して投与する医師主導治験*2を実施しました。その結果、TAS-102のみを投与した過去の臨床試験の治療成績と比較して、生存期間の延長およびがんの進行抑制が認められたことを確認しました。副作用についても忍容可能であり、比較的安全であると考えられました。本研究結果は英国学術雑誌The Lancet Oncology*3に日本時間7月29日付けで発表されました。

このTAS-102とベバシズマブの併用療法は、今後、より大勢の患者さんを対象に効果や安全性を検証する必要がありますが、「大腸がん患者さんの新しい治療選択肢になりうる」と大きな期待を集めています。


【背景】

日本における死因の第1位はがんであり、その中で大腸がんは男女を合わせた、がん死亡原因の第2位(男性:第3位、女性:第1位)です。現在、日本で年間に約13万人が大腸がんを発症(2012年)し、約5万人が大腸がんで死亡(2015年)しています。大腸がんの治療成績は年々向上しているものの、がんから遠く離れたリンパ節や肝臓、肺などの他臓器に転移のあるステージ4の場合、5年生存率が10〜15%と未だ治療成績は不良です。最近の抗がん剤治療の進歩でステージ4の成績は徐々に改善していますが、治療効果はまだ十分でなく、より有効な新しい治療法の開発が期待されています。 そのような中、細胞や動物を用いた基礎研究の結果で、2014年に日本で切除不能な進行大腸がんに世界で初めて承認された抗がん剤「TAS-102」と、大腸がんをはじめ多くのがん治療の成績を向上させた血管新生阻害剤「ベバシズマブ」*4を併用すると、TAS-102のみで治療を行うよりも有効である可能性が示されました。

国立がん研究センターでは、東病院を中心に、日本の代表的ながん専門病院と共同で、標準治療に対して抵抗性となった大腸がん患者さんを対象に、TAS-102とベバシズマブの併用療法の臨床試験(C-TASK FORCE試験)を医師主導治験として世界で初めて実施しました。


【研究成果】

2014年2月〜2014年7月に、標準治療に対して抵抗性となった大腸がん患者さん25名がTAS-102とベバシズマブの併用療法を受けました。
TAS-102とベバシズマブの併用療法を受けた大腸がん患者さんの約70%に、がんの増大を抑制する効果が認められ、その効果は中央値で約5.6カ月の間、持続することがわかりました。


【今後の展望】

今回の結果で、標準治療に対して抵抗性となった大腸がん患者さんに、TAS-102とベバシズマブの併用療法が有効であることが世界で初めて示されました。TAS-102とベバシズマブの併用療法は切除不能な進行大腸がんの新しい治療法になることが期待されます。現在、さらに大勢の患者さんを対象に効果や安全性を検証する臨床試験が計画されています。また、標準治療のより早い段階でTAS-102とベバシズマブの併用療法の有効性を検証する臨床試験も計画中であり、この新たな治療法を患者さんのもとへ少しでも早期に届けることを目指しています。


【発表論文】

雑誌名: The Lancet Oncology 2017
Published Online July 28, 2017.
http://dx.doi.org/10.1016/S1470-2045(17)30425-4外部サイトへのリンク
タイトル:TAS-102 plus bevacizumab for patients with metastatic colorectal cancer refractory to standard therapies (C-TASKFORCE): an investigator-initiated, open-label, single-arm, multicentre, phase 1/2 study
著者: Yasutoshi Kuboki, Tomohiro Nishina, Eiji Shinozaki, Kentaro Yamazaki, Kohei Shitara, Wataru Okamoto, Takeshi Kajiwara, Toshihiko Matsumoto, Takahiro Tsushima, Nobuo Mochizuki, Shogo Nomura, Toshihiko Doi, Akihiro Sato, Atsushi Ohtsu, Takayuki Yoshino
筆頭著者:久保木 恭利(国立がん研究センター東病院 先端医療科・消化管内科 医員)


【研究費】

大鵬薬品工業株式会社

【薬剤提供】

TAS-102・・・大鵬薬品工業株式会社
ベバシズマブ・・・中外製薬株式会社

【共同研究者】

独立行政法人国立病院機構四国がんセンター、公益財団法人がん研究会有明病院、静岡県立静岡がんセンター


【用語解説】

*1 TAS-102(トリフルリジン・チピラシル塩酸塩):
TAS-102は、DNAに取り込まれることで抗腫瘍効果を発揮するFTD(トリフルリジン)と体内でFTDの分解を阻害する TPI(チピラシル塩酸塩)を配合した新規作用機序を有する経口の新規ヌクレオシド系抗悪性腫瘍剤です。日本では2005年から第I相試験を開始し、現在は確立された治療法がない大腸がんの治療薬として開発が進められ、日本における第II相試験において、標準的な化学療法をすべて施行され、有効な治療選択肢のない切除不能進行再発大腸がんの患者さんを対象として、プラセボ(偽薬)と比較してTAS-102を投与された患者さんにおいて、生存期間の延長、死亡リスクの減少、がんの進行抑制が認められたため2014年5月に世界に先駆けて日本において承認をされました。その後欧米と共同して行われた第III相試験において、同様の成績が認められたことにより2015年に米国で、2016年には欧州において承認され、現在切除不能・進行大腸がんの標準治療薬として世界中で使用されています。

*2 医師主導治験:
以前は製薬会社だけが新薬の開発を行っていましたが、2003年7月に医師や歯科医師が治験を企画して医薬品開発にかかわることが認められました。このように医師や歯科医師が自ら治験を実施することを医師主導治験といいます。抗がん剤はその適応が細かく厳しく定められていますが、あるがん種に効くであろうことがわかっている薬剤でも、適応外であれば使うことができません。また、抗がん剤同士の併用も異なる製薬会社の薬の組み合わせは、1社の製薬会社だけで開発を進めることが難しいことが多く、有望な新薬の組み合わせによる開発が困難とされてきました。そこで国立がん研究センターでは、医師主導治験を積極的に行い、抗がん剤をはじめとする薬剤の適応や新たな新薬との組み合わせを広げる取り組み推進しています。

*3 「Lancet Oncology」誌について:
イギリスの歴史ある医学誌「Lancet」誌の姉妹誌として、2000年に創刊されたがん医療の専門誌です。 各臓器のがんから緩和ケア、医療システムまで、がんに関する幅広い内容を掲載しています。雑誌の重要度や影響度、注目度を示す「インパクトファクター」は33.900で、がん医療の専門誌 の217誌中で3位の評価を得ています(2016年度、Clarivate Analytics社調べ)。

*4 血管新生阻害剤(ベバシズマブ):
ベバシズマブは、世界初のヒトの血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)に対するヒト化モノクローナル抗体です。VEGFは、血管内皮細胞の細胞分裂を促進したり、血管透過性の亢進に関与するサイトカインで、正常な血管新生にも不可欠な調節因子である一方で、種々の癌細胞でも発現亢進が認められています。腫瘍組織では、VEGFが血管新生を促すことで栄養や酸素の供給を高め、癌細胞の増殖や転移に関与しているものと考えられており、ベバシズマブは、このVEGFと特異的に結合し、その生物活性を阻害することで抗癌作用を示す薬剤です。ベバシズマブは単剤もしくは他の抗がん剤との併用にて、大腸がんの他、非小細胞肺がん(扁平上皮がんを除く)、卵巣がん、子宮頸がん、悪性神経膠腫および乳がんにおいて承認され世界中で使用されています。現在ではベバシズマブ以外の血管新生阻害剤も開発され、承認されている薬剤もあります。



プレスリリース:
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