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「今、治療の必要ながん」と「様子をみてよい腫瘍」を判別する手がかりを発見

−不溶性フィブリン特異な構造の発見とその構造を認識する抗体の作製に世界で初めて成功−

2013年10月07日
独立行政法人国立がん研究センター

本プレスリリースのポイント
不溶性フィブリンのみがもつ未知の特異構造を発見した。
不溶性フィブリンの特異構造を認識する抗体の作製に成功した。
この抗体をがんの画像診断に応用することにより、「今、治療の必要なたちの悪いがん」と「様子をみてよいがんや良性腫瘍」の判別が期待できる。



独立行政法人国立がん研究センター(所在地:東京都中央区、理事長:堀田知光)は、病変部の不溶性フィブリン特有の未知の特異構造を発見し、その構造にのみくっつく抗体の作製に世界で初めて成功しました。本研究成果は、東病院臨床開発センター新薬開発分野 松村保広分野長の研究グループが、がん研究開発費、第3次対がん、最先端研究開発支援プログラムの支援を受けて行ったもので、英科学誌Nature姉妹誌のオープンアクセスジャーナル「Scientific Reports」誌に9月6日付けで掲載されました。

けがなどで出血をすると、血液中のフィブリノゲンと呼ばれるタンパクが集まって塊(かたまり)を形成して止血します。これをフィブリン塊と呼びます。がんが増殖するときも同様で、がんが周囲の血管を破壊して出血が起こると、血液中のフィブリノゲンが集まり、フィブリン塊をつくります。

通常、けがや梗塞(こうそく)、急性炎症などでフィブリン塊ができると、2週間程度で溶けて消失します[図1左]。それに対し、がんの増殖・出血・フィブリン塊形成という悪性凝固サイクルは、がんがある限り無症状で永続的に起こります[図1右]。つまり、不溶性フィブリン塊が無症状でずっと存在するのはがんに特徴的であるといえます。

図1
図1

松村分野長の研究グループはこの不溶性フィブリン塊に着目し、不溶性フィブリンだけにある3次元の特異構造を発見しました[図2]。この構造は、可溶性の状態ではタンパクの構造や分子内の相互作用によって閉鎖されているのに対し、不溶性の状態ではマウスからヒトまでその構造が保たれていることを明らかにしました。

図2
図2

さらに、この特異構造に付着する抗体、すなわち不溶性フィブリンのみを認識する抗体をつくりだすことに世界で初めて成功しました。担がん※1マウスに対し、この抗体を認識するプローブ※2を用いて造影検査を行った結果[図3]、悪性度の高い脳腫瘍の陽性率は100%であり、他のがんにおいても難治がんほど陽性率が高いことが判明しました。ヒトにおいても有用かどうかは治験で検証する必要がありますが、すでにキメラ抗体の作製に成功しており、今後2〜3年で治験に持ち込むことを想定しています。

図3
図3

がんの画像診断では、より小さな腫瘍を見つけるべく開発が進められる一方で、「小さな腫瘍を見つけても偽陽性率が高く意味がない」という極端な意見もあります。しかし重要なのは、治療が必要ながんを確実に見つけることで、結果的にがんによる死亡率を低下させることです。この抗体プローブの臨床応用が成功し、「今、治療の必要ながん」と「様子をみてよいがんや良性腫瘍」を判別することができれば、がん画像診断の真の目的である死亡率の低下に貢献できます。


原論文情報

Yohei Hisada, Masahiro Yasunaga, Shingo Hanaoka, Shinji Saijou, Takashi Sugino, Atsushi Tsuji, Tsuneo Saga, Kouhei Tsumoto, Shino Manabe, Jun-ichiro Kuroda, Jun-ichi Kuratsu & Yasuhiro Matsumura. Discovery of an uncovered region in fibrin clots and its clinical significance. Scientific Reports 3, Article number: 2604 doi:10.1038/srep02604 外部サイトへのリンク

<問い合わせ先・報道担当>
(問い合わせ先)
  独立行政法人国立がん研究センター東病院 臨床開発センター
  新薬開発分野 分野長 松村 保広
    E-mail:yhmatsum @ east.ncc.go.jp
    TEL:04-7134-6857
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<用語解説>

※1 担がん:がんを体内にもっている状態。
※2 プローブ:ある物質を検出するために用いる物質。