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胆道がん(肝内胆管がん)の治療標的となる新たながん遺伝子を発見、さらにその遺伝子の働きを阻害する薬剤も特定

アンメットメディカルニーズの高い胆道がん初の分子標的薬開発に向け始動

2013年11月21日
独立行政法人国立がん研究センター

独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田知光、東京都中央区、略称:国がん)は、胆道がんに分類される肝内胆管がんの治療標的となる新たながん遺伝子を発見、さらに細胞株を用いた実験でその遺伝子の働きを阻害する薬剤も特定することに成功しました。本研究は、国立がん研究センター研究所(所長:中釜斉)がんゲノミクス研究分野柴田龍弘 分野長による「第3次対がん総合戦略研究事業 国際協調に基づく日本人難治がんゲノムデータベースの構築(国際がんゲノムコンソーシアム研究)」の成果で、米科学誌「Hepatology」にて論文掲載予定で、電子版にて先行公開されました。

今後、胆道がんにおいては初となる特定のゲノム異常を狙った分子標的薬の開発に向け、国立がん研究センター中央病院、東病院をはじめ全国の多施設で胆道がん患者の情報を集め臨床研究を開始し、2014年早期の臨床試験を目指し準備を進めます。

難治希少がんの診断や治療に関する研究は、日本のがん医療を担う国立がん研究センターが取り組むべき重大課題の一つであり、最新の高速シークエンス技術を駆使し、当センター研究所のゲノム解析研究基盤や早期臨床開発拠点、バイオバンク、施設横断的な症例の集約などの相互連携により、さらに新しい治療標的の発見と効果的な治療薬の早期開発に取り組んで参ります。


1.研究概要

本研究では、国立がん研究センターのバイオバンクに集められた日本人胆管がん症例を対象として、高速シークエンサーによって発現している遺伝子の網羅的解読(RNAシークエンス)を行い、新たながん遺伝子として機能するFGFR2融合遺伝子を2つ同定しました。さらに細胞株を用いた実験により、がん遺伝子による細胞増殖が2種類の低分子FGFR阻害剤によって選択的に阻害されたことを確認しました。検討したFGFR阻害剤のうち1つについては、すでに他のがんを対象とした臨床試験が開始されています。

FGFR2 融合遺伝子が認められたのは肝内胆管がんの約14%にあたる66人中9人で、肺がんや大腸がんにみられるKRAS遺伝子やBRAF遺伝子の変異とは相互排他的であることがわかりました。さらにFGFR2融合遺伝子陽性のがん細胞を正確に診断する方法(分子診断法)についても開発しました。


2.今後の展望

国立がん研究センター中央病院(中央区築地)、東病院(千葉県柏市)のほか、全国の複数施設において胆道がん患者の情報を集め、FGFR2陽性がん細胞を同定する分子診断法を確立するとともに、FGFR2 融合遺伝子の臨床病理学的、分子生物学的特徴を明らかにする観察研究を実施し、来年2014年早期には日本で臨床試験を開始できることを目指して、準備を進めます。

国立がん研究センター中央病院の肝胆膵内科 科長 奥坂拓志は次のように述べています。
「胆道がんは、有効な治療法が少なく、患者さんの予後が極めて不良な、大変に厳しい疾患です。内科治療に使える抗がん剤も他のがんと比較し極端に少ないのが現状です。今回の研究成果が、胆道がんの効果的な標準治療確立の一歩となり、患者さんの希望の光となることを期待しています。」

図 胆道がん(肝内胆管がん)の治療標的となる新たながん遺伝子を発見、さらにその遺伝子の働きを阻害する薬剤も特定


原論文情報

FGFR2 tyrosine kinase fusions define a unique molecular subtype of cholangiocarcinoma
Hepatology
Yasuhito Arai, Yasushi Totoki, Fumie Hosoda, Tomoki Shirota, Natsuko Hama, Hiromi Nakamura, Hidenori Ojima, Koh Furuta, Kazuaki Shimada, Takuji Okusaka, Tomoo Kosuge and Tatsuhiro Shibata
DOI: 10.1002/hep.26890
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/hep.26890/abstract 外部サイトへのリンク


3.アンメットメディカルニーズの高い胆道がんの現状

肝内胆管がんは、肝外胆管がん、胆のうがん、十二指腸乳頭部がんとともに胆道がんに分類されます(肝臓内に発生することから、肝臓がんに分類されることもあります)。胆道がん全体での国内年間罹患者は約2万人、死亡者数は1.8万人という膵がんに次いで予後の悪い難治がんです。全世界的に見ると頻度の低い希少がんと位置づけられているため、大規模な臨床試験を実施することが難しく、有効な治療法も十分には確立していません。例えば、胆道がんに適応の抗がん剤は6剤ときわめて少なく、この6剤の中には、近年他のがんにおいて承認が相次いでいる分子標的薬は含まれていません。

参考資料:胆道がんの現状(PDF)



国立がん研究センター研究所について
国立がん研究センター研究所は、その前身である旧・国立がんセンターの主要な部局の一つとして、昭和37年の設立以来、日本におけるがんの基礎研究を強力にリードしてきました。発がんの要因と分子機構の解明から予防・診断・治療法の開発を目指す研究まで、がんの克服に向けた研究を幅広く展開しています。分子レベルの研究を通してがんの本態を解明し、新たな治療薬・治療法を含む革新的医療シーズの開発を目指す研究や、有効で副作用の少ない個別化医療の実現を目指した研究、バイオマーカーの開発による新たな診断法の開発を目指す研究等を強力に推進しています。がん患者の生活の質や治療効果を高める方法論の開発にも努めています。革新的な研究領域の開発と、それらへの挑戦に資する研究を一層推進するとともに、これらの研究を通して、若手研究者を含む国際的な人材育成にも貢献しています。国際的なリーダーシップを目指す当センターの戦略の一貫として、国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC)などの国際的な研究の連携にも積極的に取り組んでいます。

バイオバンクについて
国立がん研究センターでは、患者さんの検査に使われた血液や組織、手術などで摘出されたがん組織の残りなどと、それらに付随する診療情報、診療後の経過情報を、患者さんの同意のもとバイオバンクで管理しています。これらは、当センターや産学官の研究者により、いろいろな臓器の各種のがんがどのような遺伝子等の異常で起こるかといったがんの本態を解明する研究や、バイオマーカーを同定しがんの新しい診断方法を開発する研究、がんの新しい治療薬をつくるための創薬標的になる分子を同定する研究に使われています。

プレスリリース:
胆道がんの治療標的となる新たながん遺伝子を発見(PDF)



<問い合わせ先・報道担当>
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  独立行政法人国立がん研究センター研究所 がんゲノミクス研究分野
  分野長 柴田龍弘(しばた たつひろ)
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  独立行政法人国立がん研究センター 広報企画室
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