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医師向けのコミュニケーション技術研修が、がん患者さんの気持のつらさ軽減に寄与

研修の普及により患者さんの意向を尊重した医療提供体制の整備に期待

2014年6月11日
独立行政法人国立がん研究センター
国立大学法人 岡山大学


独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田知光、東京都中央区、略称:国がん)の研究グループと岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の内富庸介教授(精神神経病態学)は、医師ががん患者さんの意向に添ったコミュニケーション技術を研修することにより、医師の共感的行動が増加するだけでなく、担当患者さんの気持ちのつらさが軽かったことを世界で初めて確認しました。

医師向けのコミュニケーション技術研修が国内外でさらに拡がれば、患者の意向を尊重した、より安全ながん医療提供体制が整うものと期待されます。

本研究は、厚生労働科学研究費補助金 第3次対がん総合戦略研究事業「QOL向上のための、主に精神、心理、社会、スピリチュアルな側面からの患者・家族支援プログラムに関する研究(主任研究者:内富庸介)」の成果で、米医学誌「Journal of Clinical Oncology」電子版に6月9日付で論文が掲載されました。 http://jco.ascopubs.org/content/early/2014/06/09/JCO.2013.51.2756.abstract外部サイトへのリンク


1.研究概要

進行、再発がんの告知を行う場合、患者さんの気持ちは不安定になるため、医療者の支援、とりわけ医師の共感は大きな支援になります。これまでに医師向けのコミュニケーション技術研修により患者さんへの共感(行動)は増えるが、実際の患者さんの気持ちのストレスや満足度に影響を及ぼしたとする報告はありませんでした。これまでに内富教授らは、がんに関連する悪い知らせを伝えられる際にどのように伝えられたいのかについて患者さんへの面接および質問紙調査を実施。その結果、医師による気持ちへの支援が特に重要であることを明らかにしました。今回、その結果を踏まえて新たな医師向けのコミュニケーション技術研修を開発し、その効果について厳密な科学的検証を行いました。

2006〜07年に国立がん研究センターに勤務する30人の医師(中央値38歳、33〜54歳)を対象に、模擬患者相手の2日間の実技研修を受けるグループと受けないグループに無作為に分けて実施されました。その後、各医師が担当した実際の患者さんに心理検査を行い、気持ちのつらさの程度、医師への信頼感やコミュニケーションに対する満足度などについて601人から回答を得て、数値化して比較しました。研修を受けた医師は、気持ちへの支援、話しやすい環境を設定する、わかりやすい情報の伝え方という点で研修を受けない医師に比べ、よい行動を示しました。さらに、研修を受けた医師が担当する患者さんの気持ちのつらさは、研修を受けていない医師が担当する患者さんよりも軽いことが分かりました。一方、研修を受けた医師は、コミュニケーションに対する自信も高く評価していました。


2.今後の展望

本研究において患者さんの意向に基づいたコミュニケーション技術研修プログラムは患者さんおよびがん診療医の両者に効果的であることが示されました。これまでコミュニケーション能力は性格など個人の資質の問題と思われがちでしたが、ベテラン医師になっても学習や訓練により行動は改善するという世界初の今回の結果の意義は極めて大きいと考えられます。すでに厚生労働省委託事業、一般社団法人日本サイコオンコロジー学会主催(松島英介代表理事)・特定非営利活動法人日本緩和医療学会共催(細川豊史理事長)としてコミュニケーション技術研修が実施されており、国内外でさらに拡がれば、患者さんの意向を尊重した、より安全ながん医療提供体制が整うものと期待されます(2007年〜2014年3月31日までの研修修了者は全国869名であり、今年度も東京と大阪で4回計画されています。その指導者研修は131名が既に修了しています)。



原論文情報
米国東部標準時間2014 年6月9日、月曜日、午後4 時(日本時間6月10日、火曜日、午前5時)発行の米医学誌「Journal of Clinical Oncology」電子版に下記のタイトルにて掲載されました。

Maiko Fujimori, Yuki Shirai, Mariko Asai, Kaoru Kubota, Noriyuki Katsumata, and Yosuke Uchitomi. Effect of Communication Skills Training Program for Oncologists Based on Patient Preferences for Communication When Receiving Bad News: A Randomized Controlled Trial
(悪い知らせを伝えられる際のコミュニケーションに関する患者の意向に基づいた、がん診療医向けのコミュニケーション技術研修プログラムの効果:無作為化比較試験)


プレスリリース:
医師向けのコミュニケーション技術研修ががん患者さんの気持のつらさ軽減に寄与(PDF)



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医歯薬学総合研究科精神神経病態学教室 内富庸介
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