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2005年までにがんと診断された6万症例のデータを新たに追加し5年生存率を集計
画期的システムKapWebで公開

2014年9月19日
独立行政法人国立がん研究センター

独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田知光、所在地:東京都中央区、略称:国がん)がん対策情報センターは、研究開発費研究事業「わが国におけるがん登録の整備に関する研究」(班長:西本寛)において、全国がん(成人病)センター協議会ncc管轄サイトへのリンク(以下、「全がん協」)に加盟する29のがん専門診療施設の1997年から2004年までの24万診断症例をデータベース化し、全部位の集計値に加え、37種類の部位別(一部重複あり)のがん種の病期、性別、年齢、初回治療の組み合わせで5年後までの平均生存率を算出するシステムKapWeb(カップウェブ)を2012年10月23日より公開しております。KapWebは、全がん協のホームページで公開しており、これまで新規に約20万件、1日平均約100件の方にアクセスいただいております。
全がん協 URL: http://www.zengankyo.ncc.go.jp/ncc管轄サイトへのリンク

この度、研究班では2005年までに新たにがんと診断された6万症例をデータベースに追加し、2010年までの5年生存率をみることができるようになりました。これにより、1997年から2005年までの9年間約30万症例をもとに様々な条件設定で生存率をみることができます。
また新たに、英語ページと利用者の声を収集するアンケートページを追加し9月19日に一般公開いたしました。
一般公開にあたっては、がん対策情報センター患者・市民パネルの皆様から協力者を募り、16名の方にテスト版のレビューを行っていただきました。その結果、「年齢や性別ごと等、細かいデータを検索できるのでよかった」「同年齢の方のデータを知ることが出来役に立つ」「外国人と同じデータを見ながら会話をすることが可能になりよかった」「がん情報サービスへのリンクが貼ってあることがよかった」等のご意見をいただきました。一方で、「言葉の意味、使い方等が説明不足」「がんの説明文章が準備中」のご指摘をいただいており、鋭意改善に向け努力しております。
さらに、希少がん、難治性がん等の生存率についてもご希望がありましたが、症例数が少なく今回は掲載しておりません。このような患者さんの声にも答えつつ、増え続けるがん患者さんの受療の一助として、また将来のがん対策のための道標として活用いただきたいと思います。

1.がんの生存率集計の現状

がんの生存率は、がんの罹患や死亡とともに、がん対策の立案・評価に不可欠な指標で、地域がん登録(全国がん罹患モニタリング集計)などでも集計されていますが、最新データの2003年から2005年(3年分)診断の5年生存率における対象症例は7県分の約19万症例で、その他の地域の登録精度などが課題となっています。
現在、研究班で開発中のこのシステムは、がん専門病院の生存率を公表していくための先駆的な取り組みです。 また、生存率の公開について、諸外国ではインターネット配信されているものの多くが予測値であるのに対し、このKapWebは日本全国の基幹的がん専門診療施設の診療成績が一括で公表され、大規模なデータによる実測値をもとにがん以外の死亡を考慮し補正した相対生存率を示すものです。これは、欧米先進国から公表されている全がんでの5年生存率と比べて日本(全がん協)のがん治療水準の高さを示すものとも言えます。

2.生存率と追跡率

生存率とは、診断から一定期間後に生存している確率のことで、がん医療を評価する重要な指標のひとつです。通常は治療後5年経過した時の生存率を治癒の目安としています。部位により10年生存率を用いることもあります。信頼性の高い生存率を算定するためには、診断から5年(10年)後における患者の生死を把握する生存確認調査が必須で、その確認が出来ない場合は、生存としてカウントされるため生存率が実際よりも高くなってしまいます。
追跡率の世界基準は95%以上で、今回調査においては部位ごとに追跡率90%以上の基準を満たす施設の症例を集計対象としています。

3.生存率の推移

図は、胃がん、大腸がん、肝臓がん、肺がん、乳がん、子宮がん、前立腺がん、そして全部のがんを集計した5年生存率の年次変化を示します。
今回の集計でがんの5年生存率は、全てのがんの合計で1997年の61.7%から徐々に改善し、2005年には68.0%に達しています。すなわち年率、約0.7%ずつ治療成績が改善していることが見てとれます。理由としては、化学療法、放射線療法や早期発見技術の進歩が貢献していると考えられます。

生存率の改善

生存率の推移

4.がんサバイバー生存率について

また、治療開始から一定期間生存した患者さんの生存率については、長く生存した患者さんほどその後の生存率の改善をみることができる傾向にあります。特に早期のがんでは、長期にわたって再発しない傾向があります。しかし、乳がんなど、長い生存期間を経て再発してくるがんも存在します。

5.相対生存率とは

生存率には、実測生存率と相対生存率があります。実測生存率とは、死因に関係なくすべての死亡を計算に含めた生存率で、この中にはがん以外の死因による死亡も含まれます。がん以外の死因で死亡する可能性に強く影響しうる要因(性、年齢など)が異なる集団で生存率を比較する場合には、がん以外の死因により死亡する確率が異なる影響を補正する必要があります。
性、年齢分布、診断年が異なる集団において、がん患者の予後を比較するために、がん患者について計測した生存率(実測生存率)を、対象者と同じ性・年齢・分布をもつ日本人の期待生存確率で割ったものを相対生存率といいます。生存率を世界と比較する際も相対生存率が用いられます 。

6.全がん協生存率と院内がん登録からKapWebまで

全国がん(成人病)センター協議会ncc管轄サイトへのリンク(以下「全がん協」)は、国立がん研究センターを事務局とし、がん診療の中核的な役割を担う全国32のがん専門診療施設が加盟する協議会です。1973年(昭和48年)に発足した全がん協は、院内がん登録の推進とがん治療成績の向上を明らかにするための研究班を組織し、早くから治療成績の集計を行ってきました。がん診療が高度化する一方、インターネットの普及を背景に、精度や患者背景の明示されない生存率データが散見されるようになり、医療の現場に混乱をもたらすことが危惧されました。  このため、全がん協は、2004年に施設別生存率公表のための精度基準を作成、2007年には精度基準を達成した施設の病期別施設別生存率を公開しました。公表は社会的なインパクトをもって迎えられましたが、一方で施設間の生存率格差が明らかとなり、その格差が何によるものなのかという議論を喚起しました 。

KapWebの概要

●集計対象データ
1997年〜2005年に全がん協加盟施設で診断治療した全部位の入院がん患者約30万症例を集計しています。また、今後一年あたり約5万症例が追加される予定です。

集計対象施設:
2005年診断症例については、以下の全国がん(成人病)センター協議会加盟29施設が対象で、このうち部位ごとに追跡率90%以上の施設を収集しています。

北海道がんセンター、青森県立中央病院、岩手県立中央病院、宮城県立がんセンター、 山形県立中央病院、茨城県立中央病院、栃木県立がんセンター、群馬県立がんセンター、 埼玉県立がんセンター、国立がん研究センター東病院、千葉県がんセンター、 国立がん研究センター中央病院、がん研有明病院、東京都立駒込病院、 新潟県立がんセンター新潟病院、富山県立中央病院、福井県立病院、 静岡県立静岡がんセンター 、愛知県がんセンター、名古屋医療センター、滋賀県立成人病センター、 大阪医療センター、大阪府立成人病センター、兵庫県立がんセンター、 呉医療センター・中国がんセンター、山口県立総合医療センター、四国がんセンター、 九州がんセンター、大分県立病院

集計表    KapWeb累積症例数

●集計方法
性別、年齢階級、がんの部位・病期、手術療法の有無等を、KapWebユーザーが指定すると、その条件に一致した症例の5年生存率がウェブ上で集計されます。集計には、臨床で広く用いられているカプラン・マイヤー法が用いられ、サーバ上で計算が行われます。集計結果は、ユーザーのパソコン端末から、インターネットエクスプローラなどのブラウザを用いて表示されます。

●KapWeb(カップウェブ)の特色
1) 広範な集計カテゴリ
特定施設で外科など限定された症例でしか公表されてこなかった生存率が、全部位の集計値に加え、37種類の部位(一部重複あり)・病期で性別年齢ごとに集計表示されます。
2) データ提供への配慮
がん告知の直後など受容のための心の準備が整わない時期にある患者さんや治療前に生存率についての情報を望まない方のために、説明と統計ページ回避の画面を用意しています。
3) 生存率曲線の形
生存率曲線の形を表示することで、引き続き再発に注意が必要か、再発の多い時期を乗り切ったのかといった見通しを得ることができます。
4) がんサバイバー生存率
初発患者さんの生存情報のみならず、治療開始から一定期間生存した患者さんの生存率の集計が可能です。がんの部位によっては、長く生存した患者さんほどその後の生存率の改善を見ることができます。
5) 治療法別生存率
手術の有無による治療成績の集計が可能です。
今回新たに追加した新機能
6) グローバル化対応
英語でも操作可能になりました。
7) アンケート機能
ウェッブ上でアンケート調査に答えられます。集計結果については自動集計機能で確認させていただき今後の参考にします。


KapWebの使い方

(1)トップページからKapWebについての解説が2画面あります。初めてお使いになる方のための注意が書かれています。
トップページ

(2)取説画面
かんたんデータ画面とくわしいデータ画面の2画面の使い方を解説しています。ここで、どちらのデータ画面で検索するかを選択してください。
取説画面

(3)かんたんデータ画面
このページで、部位、臨床病期、性別の各項目を選択してください。項目を選択したら「計算」のボタンをクリックしてください。KapWebが計算を始めます。データや選択した項目によっては、計算に時間がかかり、結果の表示までお待ちいただくことがあります。
かんたんデータ画面

(4)検索結果画面
あなたの選択した項目に基づいた5年生存率のグラフが表示されます。計算に用いられた症例数とそのデータを提供した医療機関の名前がグラフの右側に表示されます。
検索結果画面

(5)詳細データ画面
この画面では、さらに詳しいデータの検索ができます。かんたんデータ画面の項目に加えて、診断年、手術、年齢で絞り込むことができます。また、がんサバイバー生存率も算出することができます。
詳細データ画面


データの読み方
例えばKapWebのデータからご自分で下記のようなグラフを作成して読み取ることも出来ます。

●転移が予後を決めるがん
前立腺がんでは相対生存率で見ると1期から3期まで生存率は保たれ、転移の出現する4期のみ生存率が低下します。
  ●足の速いがん
肺がんやすい臓がんでは、1期から生存率は低下し、進行の早さが治療成績を厳しいものにしています。
転移が予後を決めるがん   足の速いがん
     
●いつまでも再発するがん
乳がんや一部の血液がんでは生存率が直線的に低下し、どの時期でも一定の割合で再発が続きます。初回治療後も定期的な経過観察が欠かせません。
  ●生存率の改善
下図は肺がんの女性の3期のがんについて、年とともに生存率が改善していく推移をみたものです。1998年から2005年まで、8年間で8.7%、すなわち年率1.1%ずつ治療成績が改善していることが見てとれます。 理由としては、化学療法の進歩が貢献していると考えられます。
いつまでも再発するがん   生存率の改善

●引用ルール
がん協生存率を引用される場合は「全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(xxxx年xx月集計)による」と記載してください。生存率データは1年間に複数回updateされています。また、書籍に引用の際はグラフ右側に表示されるデータ提供施設名も記載してください。

●本サイトへのリンクについて
本ページへのリンクはご自由に張っていただいて結構です。ただし、TOPページをリンク先としてください。


■プレスリリース:
生存率算出システム【KapWeb】に2005年までにがんと診断された6万症例追加(PDF)

■説明資料:
KapWeb説明資料(PDF:2MB)


<お問い合わせ先>

内容に関するお問い合わせ
  千葉県がんセンター研究所 がん予防センター(疫学研究部)
三上春夫(がん研究開発費研究班小班) 事務局:永瀬浩喜、高山喜美子、中村洋子
TEL:043-264-5431(代表)
E-mail:hmikami @ chiba-cc.jp
 

その他のお問い合わせ
  国立がん研究センター 企画戦略局 広報企画室
TEL:03−3542−2511(代表)/FAX:03−3542−2545
E-mail:ncc-admin @ ncc.go.jp

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