野菜摂取が日本人に多い男性の下部胃がんリスクを低下 << 国立がん研究センター
ホーム > プレスリリース > 野菜摂取が日本人に多い男性の下部胃がんリスクを低下

野菜・果物と胃がんとの関連性について日本人約19万人対象のコホート研究をプール解析
野菜摂取が日本人に多い男性の下部胃がんリスクを低下

2014年12月18日
独立行政法人国立がん研究センター

独立行政法人国立がん研究センター(理事長:堀田知光、東京都中央区、略称:国がん)は、野菜と果物の摂取と胃がんとの関連性について、日本の4つのコホート研究*1の191,232人のデータを用いて、胃がん全体、部位別(胃の上部1/3に発生する胃がんと、下部2/3に発生する胃がん)、組織型別でプール解析*2を行いました。

その結果、日本人において野菜・果物摂取による胃がん全体のリスクの低下傾向がみられましたが有意性は認められませんでした。一方、男性において日本人に多い下部胃がん(胃の下部2/3に発生)のリスクが低下する可能性が示されました。

本研究は、がん研究開発費の助成による「科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」(主任研究者:がん予防・検診研究センター 予防研究部長笹月静)の成果で、欧州のがん専門誌「Annals of Oncology」外部サイトへのリンク」において発表しました。


1.研究背景

胃がんの発生率は減少傾向がみられますが、いまだ、日本ではもっとも頻度が高く、死亡数も第二位を占めています。特に野菜・果物の摂取が胃がん予防に効果的であるという症例対照研究*3が数多くあることから、食事とがんの関連の研究を評価する世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)のプログラムにおいて、野菜(非でんぷん質のもの)と果物が胃がんを予防するのは、ほぼ確実と評価されています。しかしながら、その後発表された欧州10か国のコホート研究、オランダ、中国、米国、スウェーデンの5つのコホート研究の結果はばらばらであり、どちらとも言い難い状況になっています。また、症例対照研究からは胃がんの組織型別に効果が異なる可能性が示されていますが、そこまで踏み込んだコホート研究の結果はほとんどありません。

国立がん研究センターがん予防・検診研究センターでは、国内で行われている多数のコホート研究の結果を取りまとめて大規模なプール解析を行うことで、日本人の生活習慣とがんのリスクの関連を的確に評価し、日本人のためのがん予防法を提示することで、がん予防に貢献する研究を行っています。


2.調査方法

調査対象は、2つのコホートから成る多目的コホート研究ncc管轄サイトへのリンク*4、宮城県コホート研究*5JACC研究外部サイトへのリンク*6の4つのコホート研究に参加している191,232人です。

調査開始時の食事に関するアンケート調査から野菜・果物の摂取量(g)を、1日に摂る野菜全体、緑黄色野菜、果物全体、野菜と果物全体で推定し、摂取量の低い順にQ1からQ5までそれぞれ同じ人数になるように5つのカテゴリーに区切りました。そこから、平均で約11年の追跡期間中に胃がんになった2,995人について摂取量カテゴリーごとの胃がんリスクを比較しました。

胃がんに関わる他のリスク要因である喫煙、塩の摂取量、総エネルギー量の違いが結果に影響しないように調整を行いました。


3.研究結果

1)胃がん全体のリスク

2つのコホートから成る多目的コホート研究、宮城県コホート研究、JACC研究の4つのコホート研究に参加する191,232人のうち、平均で約11年の追跡期間中に胃がんになった2,995人について、摂取量の最も低い群のQ1を基準としリスクを分析しました。

  • 野菜も果物も、男女とも摂取量の最低群に比べ最高群でリスクの低下傾向がみられましたが、統計学的に有意な低下ではなく、大きな差は見られませんでした(図1)。
  • 本研究では、野菜と果物の合計についても調べており、男性ではリスクの低下傾向がありましたが、統計学的に有意ではなく、女性では関連がみられませんでした。
図1
摂取量 Q1低→Q5高

2)部位別・組織型別の胃がんリスク分析

4つのコホート研究の中で、部位別、組織型別胃がんのデータが利用可能であった2つのコホートから成る多目的コホート研究と宮城県コホート研究の3つのコホート研究に参加する149,217人について部位別、組織型別にリスクを分析しました。
  • 部位別分析
    胃がんになった人のうち、胃の上部1/3に発生したのは258人、下部2/3に発生したのは1,412人で、摂取量の最も低い群のQ1を基準としリスクを分析しました。

    下部胃がんについては、男性で野菜全体の摂取量が最も少ない群に比べた場合の最も多い群(Q5)のリスクは0.78と統計学的有意に低く、摂取量が多いほどリスクが低い傾向がみられました(図2)。緑黄色野菜の摂取量についても、同様に統計学的に有意なリスク低下がみられました。 抗酸化作用のある成分に富む野菜・果物には胃がんの原因であるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)などによる細胞のDNAへのダメージを抑える働きが期待されています。また、これまでの研究でピロリ菌感染が下部胃がんのリスクを上げることが確認されています。野菜がピロリ菌による発がんに予防的に働き、よりピロリ感染との関連が強い下部胃がんリスクの低下がはっきりとみられたと推察されます。

    一方、女性では野菜摂取と下部胃がんとの関連性はみられませんでした。女性では野菜摂取量が男性に比べて多く、リスクになるほど不足している人が少なかったために、はっきりした関連がみられなかったと推察されます。
    上部胃がんについては、男女において野菜・果物いずれも統計学的に有意な関連性はありませんでした。

  • 組織型別分析について、男性では分化型、未分化型ともに野菜・果物との関連性がみられませんでしたが、女性では、果物全体の摂取量が多いほど分化型胃がんのリスクが低下する傾向がみられました。しかし、胃がんの組織型別の分析については、これまでの研究結果からもはっきりしたことは言えないため、今後さらに研究を進める必要があります。
図2
摂取量 Q1低→Q5高


4.データの有用性と研究の限界について

この研究では、日本で行われている大規模な前向き研究から19万人という対象者を得て、質の高いデータによるプール解析が行われました。いずれも長期追跡データがあり、胃がん発生以前に得られた情報により、共通する他の要因について統計学的な調整を行うことができました。ただし、ピロリ菌感染についての情報がありませんでしたが、研究対象となった年代における日本人のピロリ菌感染率が9割以上であることから、ピロリ菌感染者において、野菜摂取が胃がんリスクを下げる効果があるものと考えられます。また、野菜・果物の摂取量についてのデータは研究開始時のものであり、追跡中の変化を考慮した検討ができませんでした。胃がんの主な別の要因については調整を行いましたが、測定されていない要因の影響を除くことはできていません。


5.論文情報

Shimazu T, Wakai K, Tamakoshi A, Tsuji I, Tanaka K, Matsuo K, Nagata, C, Mizoue, T, Inoue, M, Tsugane, S, Sasazuki, S for Research Group for the Development and Evaluation of Cancer Prevention Strategies in Japan. Association of vegetable and fruit intake with gastric cancer risk among Japanese: a pooled analysis of four cohort studies. Ann Oncol. 2014;25:1228-33.
URL: http://annonc.oxfordjournals.org/content/early/2014/03/10/annonc.mdu115



用語解説
*1 コホート研究:
大規模な対象集団を設け、最初に生活習慣などについてアンケート調査などを行い、その後長期にわたって病気の発生を観察する研究。

*2 プール解析:
複数の研究の元データを共通の方法によって解析し直し統合する解析手法。

*3 症例対照研究:
症例と対照に過去の生活習慣などを聞き取り比較する研究方法。コホート研究と異なり、今回のテーマの場合、胃がん患者(症例)と胃がんになっていない人(対照)で過去の野菜や果物の摂取状況の回答に偏りが生じる可能性がある。

*4 多目的コホート研究:
全国11保健所管内の住民を対象に1990年に開始されたコホート研究。開始年により2つのコホートに分かれる。

*5 宮城県コホート研究:
宮城県14市町村の住民を対象に、1990年に開始されたコホート研究。

*6 JACC研究:
全国45地区の住民を対象に、1988年に開始されたコホート研究。



プレスリリース:
野菜・果物と胃がんリスク(PDF)



<問い合わせ先>
  独立行政法人国立がん研究センター
〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
がん予防・検診研究センター 予防研究部 予防評価研究室長 島津 太一
    TEL:03-3542-2511(内1783) FAX:03-3547-8578
    E-mail:tshimazu @ ncc.go.jp

  独立行政法人国立がん研究センター 企画戦略局広報企画室
    TEL:03−3542−2511(代表)/FAX:03−3542−2545
    E-mail:ncc-admin @ ncc.go.jp
    迷惑メール防止のために@の前後にスペースが入っております。メールソフトにより、スペースが入ったままでは送信できない場合がございます。送信できない場合は、スペースを削除してご利用ください。