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がん診療連携拠点病院の院内がん登録による5年相対生存率初集計
−全がんおよび5大がんの都道府県値を公開−

2015年9月14日
国立研究開発法人国立がん研究センター



国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:堀田知光、所在地:東京都中央区、略称:国がん)は、全国のがん診療連携拠点病院の院内がん登録について、治癒の目安とされる5年を経過した時の相対生存率を、施設所在地の都道府県別に集計し、全がんおよび主要5部位(胃、大腸、肝臓、肺、乳房)の結果を報告書にまとめウェブサイトで公開しました。

集計対象は177施設約17万症例で、初めて全国規模の都道府県別5年相対生存率が提示されました。

国立がん研究センターがん対策情報センター「がん情報サービス がん登録・統計」統計ページ
URL:http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/brochure/hosp_c_reg_surv.htmlがん情報サービスへのリンク

がん診療連携拠点病院は、全国どこでも質の高いがん医療を提供できるよう、がん医療の均てん化を目標に整備が行われているもので国により指定されます。

国立がん研究センターがん対策情報センターでは、がん診療連携拠点病院での院内がん登録方法の標準化を促進し、また診療実態に関する集計を毎年行い、集計結果は国や都道府県のがん対策や、各施設の診療実態の把握、方針検討に活用されています。今回新たに集計した5年相対生存率は、がん医療を評価する重要な指標として世界的に用いられているもので、がん診療連携拠点病院の評価やがん医療均てん化の評価指標として活用が望まれています。


1.がん診療連携拠点病院2007年診断 5年相対生存率 集計結果のポイント

相対生存率とは
がんと診断された場合に、治療でどのくらい生命を救えるかを示す指標。あるがんと診断された人のうち、○年後に生存している人の割合が、日本人全体で○年後に生存している人の割合に比べてどのくらい低いかで表します。
生存率は、性別、年齢、治療方法、併存する疾患など患者背景の差が大きく影響します。生存率そのものではなく、その要因分析が重要となります。
全がんの5年相対生存率
本集計における全がんの5年相対生存率は64.3%で、既存集計の地域がん登録の58.6%よりやや高く、全がん協の69.0%よりやや低い傾向が見られました。これは、がんの進行度が比較的早期であったり、手術の実施が可能な例が多かったりなど対象患者の背景が影響しているものと思われます。
主要部位における全病期の5年相対生存率
胃71.2%、大腸72.1%、肝臓35.9%、肺39.4%、女性乳房92.2%でした。
部位別の都道府県別集計
胃・肝臓・肺については都道府県間のばらつきがあり、その背景にはがんの進行度が影響している可能性が考えられ、地域における病院が担う役割の差も影響していると考えられます。一方、大腸・乳がんについては都道府県による生存率のばらつきが少ないものの、個々の都道府県でみると患者背景の差が見られました。


2.調査概要

調査対象
調査対象施設:293施設
対象症例:2007年診断症例
集計対象
その施設で初回治療が開始された、15歳以上100歳未満(小児がんを含まない年齢層)
収集総数:234施設291,745例(協力率79.9%)
集計対象:177施設168,514例(予後把握率90%の施設を対象とし、57施設は集計対象外)
集計項目
性別、年齢、部位区分、治療前ステージ、病期(がんの進行状況)、観血的治療の有無(手術の有無)、組織型(肺がんの場合)、生存状況情報(予後情報)
集計方法
国立がん研究センターがん対策情報センターがん統計研究部において作成されたコホート生存率表(2013年版)を用い、EdererII法にて対象例の相対生存率を推定
公表基準
・ 全がんの生存状況把握割合が90%以上の施設
・ 集計範囲(対象)が原則50例以上の都道府県 一般的に対象症例数が50例未満の場合は、推定された生存率の信頼性が低くなるため非公表としました。
・ 都道府県内での対象施設が2施設以上 1施設であった場合は非公表としました。


3.本集計により示された課題

生存率は、生存状況が確認できなかった場合、打ち切り例として観察対象から外され、母数が小さくなることによって生存率が実際の値より高く算出されてしまいます。そのため、信頼できる生存率を算出するためには、生存状況把握割合が国際的には95%以上が望ましいとされています。本集計における生存状況把握割合は、最も高かった施設で99.9%、最も低かった施設は72.3%と大きな差がみられ、全体では93.1%でした。本集計では、集計対象基準を既存集計の全国がん(成人病)センター協議会と同様の90%以上とし、その結果、データの提出のあった234施設のうちの57施設は集計対象外となり、基準を満たした177施設が集計対象となりました。

生存状況は、施設内の情報(来院情報や死亡退院情報)だけですべてを把握することは困難で、地方自治体への外部照会が必要となりますが、地方自治体の対応には差があるのが現状です。そのため、人口の多い地方自治体が対応しない場合、その地区の生存率が不明となりがん対策を検討する上で大きな障害となることが懸念されます。

がん登録推進法の施行により、来年2016年診断例からは全国がん登録が実施され、各施設での生存確認調査が円滑に実施されることになります。しかし、それ以前の診断例については本集計により示された課題が残ることとなり、精度の高い日本のがん医療の評価指標を得るためにはその解決が望まれます。


4.今後の予定

がん診療連携拠点病院の院内がん登録は、施設間評価を目的としており、本来は施設ごとの生存率の集計を行う必要があります。しかし、本集計においては、標準的な院内がん登録が開始された初回年であったため登録精度にばらつきがあったことや、生存状況把握割合に起因する生存率の信頼性を考慮し都道府県別集計のみの公表としました。 2008年症例分以降は、各施設の生存率に大きく影響する様々な患者背景に留意した施設別生存率と、都道府県別では主要5部位以外も公表することを検討していきます。

本集計結果は、施設別生存率の評価に向けての第一歩であり、この結果をもとに、がん医療の実態評価を行うための方向性を示し、課題を解決していく出発点となるものと考えます。


5.本集計結果における留意点

本集計による生存率は、既存の生存率集計と比べ、より広汎な集計データといえますが、2007年当時のがん診療連携拠点病院に限ってのデータであることに留意する必要があります。
2007年当時の院内がん登録はまだ課題が多かった時期であり、施設数が少ない都道府県のデータについてはかなりの偏り、あるいは不正確さが存在していることを想定する必要があります。
一般に生存状況把握割合が低いほど、生存率は高く算定される傾向があります。また、対象の何%が生存しているかを計算する「実測生存率」と異なり、同条件の人が生存している確率を100%としたとき、対象の生存している確率が何%かを計算するのが「相対生存率」で、さまざまな公表データと比較する場合には注意が必要です。
各都道府県や施設の患者背景(性別や年齢、がんの進行度、治療方法)の傾向を踏まえた解釈が必要です。また、患者の全身状態や併存疾患などの情報も大きな影響を与えますが、本集計では収集されていません。
都道府県のがん対策評価においては、がんの罹患率、死亡率も組み合わせた解釈が必要であり、罹患率の減少や死亡率の減少があって初めてがん対策が効果的であったといえます。


6.既存生存率集計との比較

5年相対生存率については、都道府県が行う地域がん登録と全国がん(成人病)センター協議会による院内がん登録によるふたつが既存集計として公開されています。しかし、いずれも施設や地域が限定的で、また症例数が少ないなどの課題があります。

地域がん登録
地域の実態把握のため都道府県が実施するもので、最新の全がんの5年相対生存率は58.6%で、登録精度の高い宮城・山形・新潟・福井・滋賀・大阪・長崎の7府県の3年分(2003〜2005年)約19万例のデータを元に算出されています。対象として、上皮内がんは除かれており、他にも年齢100歳以上を除くなどに限定して算出されています。
全国がん(成人病)センター協議会
全がん協の5年生存率は、本集計と同様に院内がん登録をベースとしたものです。最新の全がんの5年相対生存率は69.0%で、同協議会に加盟するがん専門診療施設29施設の2005〜2006年診断例から算定した約8万5千例を元に算出されています。 良性腫瘍・上皮内がんおよび病期0期を除き、年齢では15歳未満と95歳以上を除外した上で、自施設で初回治療を開始した例のみを集計対象としています。



プレスリリース:
がん診療連携拠点病院の院内がん登録による5年相対生存率初集計(PDF)
資料(PDF)



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〒104-0045 東京都中央区築地5-1-1
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TEL: 03-3542-2511(代表) 内線1624
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