多地点合同メディカル・カンファレンス
[2006-第3回]
  日 時: 2006年2月9日(木) 16:30〜18:00  
  場 所:
特別会議室 管理棟1階
 
  テーマ:
腹膜偽粘液腫の病理と治療(PMP)
 
 
(静岡県立静岡がんセンター発信)
 
司会 静岡県立静岡がんセンター 副院長兼腹膜播腫科部長 米村 豊
 PMPは、極めて希な疾患である。本邦での発生頻度も不明で標準的治療法もないのが現状である。また、予後規定因子(組織型や手術、病期)も不明である。このネットワークでは、治療法、予後規定因子、病理学的診断基準などについて討論したい。
 
1.腹膜偽粘液腫の診断
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静岡県立静岡がんセンター 副院長兼腹膜播腫科部長 米村 豊
 疫学:腹膜偽粘液腫は100万人に1人の発生頻度があるとされているが、日本での実態は不明である。原発巣は男性では虫垂が圧倒的に多く、女性では卵巣からのものも多い。発症年齢は平均53歳である。
 播種形成のメカニズム:原発巣に蓄積された粘液性物質と腫瘍細胞が腹腔内へ穿孔し、ばらまかれる。腹水の中には粘液で囲まれた浮遊細胞が多数認められる。浮遊細胞は乳斑・横隔膜ストマータや腹腔に開孔しているリンパ管基始部に入り込み、粘液を産生しながら増殖し腹膜転移巣となる。したがって播種巣はリンパ管基始部の多い大網・横隔膜・ダグラスなどにみられる。また、肝臓・脾臓の被膜には横隔膜からの転移から接触転移で転移する。腫瘍細胞は増殖能は低いが、多量の粘液を産生するので粘液で構成された巨大な腫瘤を形成する。悪性化した腫瘍細胞は粘液腫瘤の中にも血管を誘導し、増殖する。しかし、リンパ・血行性転移はほとんど見られない。
 診断:腹部の膨隆からCT・細胞診で診断、虫垂炎やヘルニア手術の時診断、卵巣腫瘍と診断などである。細胞診ではPAS/AB陽性の粘液を認める、異型性の弱い上皮細胞集団が認められる。
 
2. 腹膜偽粘液腫の病理組織学的検討
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静岡県立静岡がんセンター 病理診断科 草深公秀
 腹膜偽粘液腫は、腹腔内に腫瘍性粘液が多量に播種した病態を示し、その原因としては、虫垂腫瘍や卵巣腫瘍の破綻によるものとされている。今回、当センターで、外科的に治療された腹膜偽粘液腫8例について、組織化学的及び免疫組織学的に検討した。粘液は、アルシャン青染色陽性、PAS染色弱陽性で、HID染色は陽性であった。その中に浮遊する上皮成分は、異型度からは良悪性の鑑別は困難であり、MIB-1 indexは2%〜20%で、CDX-2陽性、calretinin陰性であった。粘液自体はMUC2陽性、MUC5AC陽性、MUC6弱陽性であった。腹膜偽粘液腫は原発が確定困難な場合があるが、その粘液は、腸型であることが判明した。しかし組織学的良悪性の診断は困難である。
 
3.腹膜偽粘液腫症例の細胞診所見
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静岡県立静岡がんセンター 病理診断科 伊藤以知郎
 腹膜偽粘液腫の腹水細胞診による確定診断は、困難なことが多く、細胞診検査施行回数のうち約半数には上皮が確認できない。原因は、多量の粘液内に少数の腫瘍上皮が散在しているために細胞診プレパラート上に腫瘍上皮が観察される確率が低いためと見られる。細胞診陰性所見を繰り返す症例にも病像の進展が見られるため、長期にわたる緩徐な病像の進行を考慮し、疾患概念としてintermediate malignancyの考え方が必要と考えられる。
 
4.腹膜偽粘液腫の概念とその問題
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国立がんセンター中央病院臨床検査部 下田忠和
 腹膜偽粘液腫は稀で、その臨床的ならびに病理学的診断基準は曖昧である。以前から本疾患は虫垂や卵巣の粘液産生性腫瘍が、腹膜に播種性病変を形成する病変であると考えられてきた。しかしその中には原発が良性と悪性病変が含まれており、その区別は必ずしも明確にされていない。また虫垂では非腫瘍性の粘液瘤が原因とされるものも含まれている。今回は、原発部の良悪性と腹膜偽粘液腫の関係について、自験例をもとに文献的考察を加える。
 
5.腹膜偽粘液腫の外科治療
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静岡県立静岡がんセンター 副院長兼腹膜播腫科部長 米村 豊
 治療:化学療法はまったく効果がない。治療は主に外科手術である。原発巣切除と腹水のドレナージ、転移した粘液腫の減量を行う。可及的完全切除を行うことが肝要である。初回手術の際完全切除することが大切である。手術回数が増えるほど癒着は高度になり、合併切除などを余儀なくされ、術後合併症も増える。浸潤性がないので臓器合併切除をしないで播種を切除するようにする。術中温熱化学療法を行うことで遺残した腫瘍細胞を洗い流すことができる。洗浄液には10%デキストロース溶液を使うと、粘液が溶解し洗浄効果が上がるといわれている。腹水が際貯留した例では術後定期的に腹腔内洗浄を行うことも有効である。
 手術成績:組織型をDisseminated peritoneal adenomucinosis (DPAM), peritoneal mucinous carcinomatosis (PMCA), Bordeline の3型に分けると、予後はDPAMがもっとも良好で、PMCAは不良、Borderlineはその中間である。また、腹腔内を13箇所に分け、各々の部位の転移程度を4段階にわけ、それを集計し播種の程度を表すPeritoneal Carcinomatosis Index (PCI)を算出し、予後との関連をみた。PCI 15以下では有意に腫瘍を完全切除できる率は高く、予後も良好であった。播種を完全に切除できた例では予後は良好であるが、遺残した例では不良である。DPMAで遺残した例は腹部膨満などでQOLは悪いが、定期的腹腔洗浄で対応できる例もある。

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