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乳腺外科

1.乳腺外科について
2.診療について
3.研究について


1.乳腺外科について

担当医師名 外来診察日 診療科 専門分野
和田 徳昭
(わだ のりあき)
和田 徳昭 (わだ のりあき)
月・水 乳腺科・血液化学療法科
副科長
乳腺外科
米山 公康
(よねやま きみやす)
米山 公康 (よねやま きみやす)
月(午後)・金 乳腺科・血液化学療法科
医長
乳腺外科
山内 稚佐子
(やまうち ちさこ)
水(午後) 乳腺科・血液化学療法科
非常勤医師
乳腺外科

当院における治療を希望されるかたは、お気軽にお問い合わせください。

わが国の乳がんは年々増加の一途をたどり、女性がんの中で罹患率の1位となりました。それでも他の先進諸国の中ではまだ低い方で今後ますます増加するものと予想されます。

また、一般市民への乳がんの啓発、自己検診、乳がん検診の普及により早期乳がんの割合が多くなってきました。当院でも乳がん手術件数は増加し2010年以後は年間290例の原発乳がんの手術を施行しました。

乳腺科は、再発以外の乳がんの診断、初期治療を担当しております。また術後補助内分泌療法を含めた術後経過観察を行います。これらに関する医療相談(セカンドオピニオン)も行います。乳癌の再発治療は化学療法科が担当となります。


2.診療について

当科初診の場合、乳腺科医による問診、視触診の後、各種必要な検査をオーダーします。乳がんの診断は、放射線診断部の医師がマンモグラフィ、超音波検査、MRIなどを駆使し画像的に良性悪性の判断を行い、乳腺科で細胞診、針生検、摘出生検、マンモトームなどを施行、得られた検体から病理診断医が組織学的に確定診断を行います。これらの結果から、乳がんと診断された場合、病気の性状を考慮し治療計画を立てます。現在乳がんの根治に手術は必須と考えられておりますが、薬物療法、放射線治療など複数の治療法を組み合わせることで治癒を高めようとしております。このため各科の医師で構成される乳腺治療カンファレンスにて適切な方法が決定されます。当院での乳がん診療は「チーム医療」として行われ、乳腺科だけでなく、化学療法科放射線治療部放射線診断部精神腫瘍科、病理、形成外科看護部薬剤部臨床検査部などが協力して最新の治療が安心して実施できる体制を整えております。

1)手術療法

手術は乳がんの治癒に必要不可欠な治療であります。一般に乳がんの手術は、しこり(腫瘤)のある乳房と腋窩リンパ節(「えきか」と読み、腋の下にあるリンパ節)の両方が手術対象となります。

乳房の手術は、乳房の大きさに対してがんの存在範囲が限局しており、がんの遺残なく切除可能で、十分整容性が保てると判断される場合は乳房温存術(乳房部分切除術)が適応となります。しこりが大きな場合でも、手術の前に薬物療法を施行することで、しこりを小さくすることができれば温存が可能となります。当院では術前の正確な画像診断や術前薬物療法を施行し腫瘤を縮小化することにより、全原発乳がん手術例の70-80%で温存が可能となりました。乳房を温存する場合、欠損部分が大きいときは周囲の乳腺・脂肪を授動し充填するなどきれいな乳房を形成する工夫をしております。しかし、乳房温存が安全かつ整容性を保つことが困難であり全切除が必要と判断した場合は、形成外科医による乳房再建術もご提案いたします。

また、乳がんは腋窩リンパ節に転移しやすいため、術前に明らかに腋窩リンパ節が腫れて転移があると予想される場合には、がんの取り残しが無いように腋窩リンパ節の切除(腋窩郭清)が必要になります。しかし、これにより患側上肢の運動障害、知覚障害、リンパ浮腫などの後遺症がおこる可能性があります。一方、術前に正常と思われた腋窩リンパ節にも、画像では見つけることのできない小さながんの転移が20-30%の割合で存在します。いままでは、この腋窩リンパ節転移が正確に診断できなかったため、一律に腋窩郭清を施行してきました。しかし70-80%の方は術後に初めて転移がないと判明するため、本来であれば不必要な治療となります。そこでセンチネルリンパ節生検という新しい診断法・治療法が開発されてきました。センチネルリンパ節はがんが最初に転移するリンパ節であり、このリンパ節に転移がなければ残りのリンパ節にも転移がないと考えられ不必要な郭清を省略できます。当院では過去200例の実行可能性試験を経て、1999年から組織学的センチネルリンパ節陰性症例には腋窩温存を施行しております。2010年には実地臨床として182例センチネルリンパ節生検を施行、この内168例(78%)が腋窩温存となりました。また2010年4月からこの方法が保険適応となっております。

さらに小さな乳房腫瘤(1cm以下)に対して、ラジオ波焼灼療法といわれる方法が可能となりました。乳房腫瘤を切除するのではなく、体外から電極のついた針を刺入し熱により蛋白凝固懐死をおこさせ、がん細胞を死滅させるという方法です。適応があれば高度医療として施行しております。

このように適確な乳房温存方法やセンチネルリンパ節生検の導入など不必要な外科的侵襲を避けて患者さんに優しい医療の実践を目指しております。

2)薬物療法

乳房内の腫瘍縮小だけでなく、手術が不能な全身に散らばっているかもしれない微小ながんの根絶を目指し、術前術後に全身薬物療法を施行します。当院では化学療法科と連携して抗がん剤、ホルモン剤、分子標的治療薬などの薬物療法を施行します。2010年では手術をした原発乳がん手術症例の24%で術前薬物療法を施行しました。詳細は化学療法科をご覧ください。

3)放射線治療

基本的に乳房温存した場合、全摘後でも再発の危険性が高いと判断した場合は放射線治療を施行しております。詳細は放射線治療グループをご覧ください。

4)原発乳がん手術術式と件数

術式 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年
全切除+郭清 37 41 36 54 53
部分切除+郭清 76 54 56 59 58
全切除+センチネルリンパ節生検 4 18 12 36 38
部分切除+センチネルリンパ節生検 131 112 109 121 129
その他 5 12 14 21 14
合計 253 237 227 291 290
2009年、2010年は乳房同時再建術をそれぞれ13件、16件施施行しました。

5)乳がんの手術例の生存率

乳がんの病期分類
病期とはがんの進み具合の程度(進行度、ステージ)を示す用語です。乳がんの病期は、0期、I 期、II 期、III 期、IV期に分類されており、数が多くなるほどより進行した病状で、治しにくい状況です。 近年乳がん検診の普及や啓発活動のおかげで早期がんの割合が増えております。

当院における乳がん切除例の生存率
以下に1993年1月から2005年12月まで当科で乳がん手術を施行した症例の臨床病期分類と全生存率を示します。この症例数は以前に癌の既往のある方や両側同時乳がんの方を除いてあります。起算日は手術日を用いてあります。全生存率の算出には、がん以外の死因による死亡も含みます。2011年3月調査、平均観察期間104ヶ月[2-218ヶ月]。

1993年1月から2005年12月までの手術症例
病期 症例数 5年全生存率
10年全生存率
0 期 87 99% 93%
I 期 570 97% 94%
II 期 1104 90% 80%
III 期 214 66% 51%
IV 期 22 32% 11%
合計 1997


1993年1月から2005年12月までの臨床病期別生存曲線

1993年1月から2005年12月までの臨床病期別生存曲線


3.研究について

他の研究者と共同して種々の臨床試験、新たな治療・診断法の開発に取り組んでおります。センチネルリンパ節生検腋窩温存後の予後、後遺症の検討、センチネルリンパ節生検の適応拡大や術前内分泌療法の前向き試験、ラジオ波焼灼療法後切除試験、さらにJCOG、NSASBC試験などに参加しております。

また、高度医療として「早期乳癌へのラジオ波焼灼療法の安全性および有効性の評価に関する多施設共同研究」に参加しております。これは腫瘍径1cm以下の乳癌を対象とし、腫瘍本体を切除しないでラジオ波焼灼療法にて治療を行う新しい方法です。

2011年下記分担研究者となっております。

○ 厚生労働科学研究費補助金
  早期乳がんに対するラジオ波熱焼灼療法の標準化に係る多施設共同臨床研究