胃外科 << 国立がん研究センター東病院

胃外科

1.胃外科について
2.診療について
      ・先進医療:手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を用いた胃がん手術
3.研究について

1.胃外科について

 胃外科長
木下 敬弘 (きのした たかひろ)   木下 敬弘 (きのした たかひろ) 外来診療日:木(交代制)、金
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医、指導医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医、指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医、指導医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術などの選択肢のなかから、それぞれの患者さんに最も適した手術方法を、高いクオリティで提供することを目標にしています。
 医長
徳永 正則 (とくなが まさのり)   徳永 正則 (とくなが まさのり) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医、指導医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医、指導医
日本消化器病学会 専門医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
胃がんの治療は、外科切除だけでなく、化学療法、内視鏡治療など多岐にわたります。ひとりひとりの患者さんにとってのベストの治療を提供することを目標にしています。
 医員
海藤 章郎 (かいとう あきお)   海藤 章郎 (かいとう あきお) 外来診療日:
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医
胃がん患者さんにとって最適な治療が受けられるように、院内の各科と連携して診療にあたります。
 がん専門修練医
海藤 章郎 (かいとう あきお)   砂川 秀樹 (すながわ ひでき)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
安心して胃癌の治療が受けられるよう、サポートいたします。
 がん専門修練医
杉田 静紀 (すぎた しずき)   杉田 静紀 (すぎた しずき)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医
消化器がん外科治療認定医
ICD制度協議会 インフェクションコントロールドクター
日本静脈経腸栄養学会TNTDoctor
主に入院中の診療を担当させていただきます。患者さん一人一人が安心して手術を受け、元気に退院されるように努めてまいります。
 がん専門修練医
渡邊 将広 (わたなべ まさひろ)   渡邊 将広 (わたなべ まさひろ)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医
それぞれの患者さんのニーズにあった、安全かつ質の高い医療を提供できるよう心がけています。困ったこと悩んでいることがあれば気軽にご相談ください。
 レジデント
登内 晶子 (とのうち あきこ)   登内 晶子 (とのうち あきこ)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
患者さんにより良い医療を提供できるよう、診療にあたらせていただきます。
 レジデント
佐藤 怜央 (さとう れお)   佐藤 怜央 (さとう れお)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医
皆様が安心して手術を受け、術後も生活の質を保って頂けるように安全で精巧な手術を追求していきます。
 レジデント
小野  武 (おの たけし)   小野  武 (おの たけし)
  専門医・認定医資格など:
日本静脈経腸栄養学会 TNTDoctor
常に最善を尽くし、より良い医療を提供できるよう頑張ります。

 レジデント
秋本 瑛吾 (あきもと えいご)   秋本 瑛吾 (あきもと えいご)
  専門医・認定医資格など:

患者さんに寄り添った医療を提供できるように頑張ります。

 短期レジデント
阿部 郁 (あべ いく)   阿部 郁 (あべ いく)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
患者さんの立場にたち、最適な治療を提供できるよう努力していきます。


2.診療について

◇はじめに

2016年の1年間に、胃がん(食道胃接合部がん含む)243例、胃粘膜下腫瘍(GISTなど)32例の手術を行いました。胃がんの年度別手術件数の推移は図1のグラフの通りで、国内有数の豊富な手術件数を誇ります。当科では3人のスタッフと3人のがん専門修練医および5人のレジデントで診療を行っております。また、消化管内科・消化器内視鏡科・放射線診断科などの他科医師や看護師・栄養士・薬剤師・理学療法士などの他職種のスタッフと密に連携をとったチーム医療を行い、患者さんに最適な診療を提供できるよう心がけています。

表1 2016年 手術症例 疾患別内訳
疾患名 症例数
胃がん 243
GIST 15
その他 17
275

図1 当科の年度別手術症例数と特徴
図1 年度別胃がん手術症例数

◇胃がんに対する診療

胃がんの手術においては、根治性(病気を治す)、低侵襲性(体に負担が少ない)、機能温存(胃の機能・容量をなるべく残す)のバランスが重要です。治療方針は、原則として胃がん治療ガイドラインに従い決定されますが、患者さんの状態(年齢、併存症の有無、病気の進行度など)はそれぞれ異なります。患者さんひとりひとりに最も適した治療方針、手術術式を提供することを目指して、日々の診療にあたっています。なお、胃がんの治療は手術だけではありません。当科を受診された場合でも、手術以外の治療法が最も適していると判断された場合には、専門医師の外来受診をおすすめさせていただきます(このページの中程に記載のある「診療のながれを」ご参照ください)。

◇当科の特徴

当科では患者さんに少しでも負担の少ない手術を提供することを目指して、腹腔鏡手術、ロボット支援手術(低侵襲手術と記載されることもあります)に積極的に取り組んできました。また、術後の胃の機能を温存することを目指した、機能温存手術にも積極的に取り組んでいます。

腹腔鏡下胃切除術は第4版胃がん治療ガイドライン(2014年刊行)では「臨床病期I期に対する幽門側胃切除」が日常診療の1つとして推奨されているのみで、胃全摘、あるいは臨床病期II以上の進行胃がんに対する腹腔鏡下胃切除術の安全性や効果に関しては、十分なエビデンスがありません。これまで当科では胃全摘、進行胃がんに対する腹腔鏡下胃切除術の安全性を示すことをめざした多施設臨床研究に参加協力するとともに、現在までに約1200例(うち腹腔鏡下胃全摘:約150例、腹腔鏡下噴門側胃切除術:約130例)の腹腔鏡下胃切除術の経験と実績を積んできました。特に難易度の高い、食道胃接合部がんを含む胃上部がんに対する腹腔鏡下胃全摘・噴門側胃切除における当施設での手術手技のクオリティは国内外から高い評価を得ており、学会などで指導的立場にあります。腹腔鏡手術だけでなく、開腹手術も同等のクオリティで行っており、それぞれのアプローチ法のメリット・デメリットをお話し、患者さんの希望に沿って手術アプローチを決定しています。なお、2016年に当科で行った手術のアプローチ法別の手術術式の内訳は表2の通りで、80.7%の患者さんが腹腔鏡下胃切除(ロボット支援下胃切除を含む)を受けられました。

表2 2016年 手術症例 術式別内訳
開腹手術 62  
   幽門側胃切除 18  
   幽門保存胃切除 0  
   噴門側胃切除 3  
   胃全摘 17  
   膵頭十二指腸切除 0  
   胃部分切除 10  
   その他(バイパス、試験開腹など) 14  
腹腔鏡手術(ロボット支援手術) 213  
   幽門側胃切除 110 (29)
   幽門保存胃切除 4  
   噴門側胃切除 22 (5)
   胃全摘 23 (3)
   胃部分切除 10  
   その他(バイパス、審査腹腔鏡など) 44  

また、2014年6月から手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」(Intuitive Surgical社)を用いた腹腔鏡下胃切除を導入し、これまで61人の患者さんに手術を行いました(図2参照)。胃がんに対するロボット支援手術は先進医療制度下に行われており、当科も協力医療機関として先進医療制度下の臨床研究に協力しました(先進医療制度下の胃がんに対するロボット支援手術は2016年12月で登録終了となりました)。今後ロボット支援下胃切除を希望される患者さんには個別に胃外科外来で相談させて頂きます。詳しくは「先進医療:手術支援ロボットを用いた胃がん手術」のページや、がんセンター広報誌「日々歩」をご覧ください。

図2 ロボット支援下手術
図2 ロボット支援下手術
通常の腹腔鏡手術に、鉗子の先端が人間の指のように自由に屈曲する関節機能が付加されたのが、ダ・ヴィンチ手術(ロボット手術)です。術者は操作用コンソールに座り専用の3Dハイビジョン画像を見ながら、患者さんの体内に挿入されたロボット鉗 子の動きを操作します。

◇診療の流れ

外来を受診されましたら、まず病状・病期(ステージ)の把握のため、内視鏡検査・CT検査・透視検査などを行います。これらの検査結果をもとに、外科・消化管内科放射線診断科消化管内視鏡科の合同カンファレンスにて、各患者さんに最も適した治療方針を検討します。例えば、胃がんの診断を受け、他院で手術治療を勧められて当科を受診しても、早期がんで一定の条件を満たせば内視鏡的切除(ESD)の方針になることもありますし、反対に高度な腫瘍進展が認められれば根治切除不能と判断し、化学療法の方針となることもあります。また、進行度によっては、全身麻酔下に腹腔鏡検査を行い、微小転移の有無(腹膜播種の有無)を確認した後に治療方針を決定する場合があります。

入院されてからの周術期(術前〜術後)管理は、ほぼ全例でクリニカルパスを用いて行っています。クリニカルパスとは、検査や治療の予定とタイムスケジュールを示した治療計画書です。胃切除術の場合、術後7〜10日で退院する場合がほとんどです。

◇化学療法の併用

当院ではがん専門病院の強みを生かし、消化管内科との連携を密接に行っています。手術でがんが完全に切除された場合でも、ステージによっては再発予防のための抗がん剤治療(術後補助化学療法)をお勧めすることがあります。また、胃がんがより進行した患者さんに対しては、化学療法(術前補助化学療法)を行った後に手術を行うこともあります。

また、従来の治療では治療困難(手術の適応とならない)とされていた患者さんに対しても、新規に開発された抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤と外科手術をうまく組み合わせることで、治療成績の向上を目指しています。消化管内科との密接かつ積極的な取り組みにおより、発見時に根治切除不能と診断されても、積極的な化学療法により根治手術が可能となる患者さんも散見されています(図3)。

図3 化学療法により臨床病期IVから手術が可能となった胃がん
図3 化学療法により臨床病期IVから手術が可能となった胃がん

◇治療成績

当院で2008年から2012年までに胃がん手術治療を行った患者さんの治療成績は図4・表3のとおりです。

図4 2008年〜2012年 胃がん手術治療成績 (生存曲線 全生存率)
図4 2008年〜2012年 胃がん手術治療成績 (生存曲線 全生存率)

表3 2008年〜2012年 胃がん手術治療成績 (全生存率・無再発生存率)
病期 患者数 全生存率(%) 無再発生存率(%)
    (3年) (5年) (3年) (5年)
IA 524 98.2 97.5 97.8 96.9
IB 103 97 93.6 93 90.7
IIA 84 96.4 88.6 90.4 84.9
IIB 82 88.1 86.4 82 77.6
IIIA 63 88.1 82.2 79.7 77.7
IIIB 70 79.6 67 57.2 57.2
IIIC 71 56.9 49.9 48 41.5
IV 56 41.1 16.5

◇胃GISTに対する診療

GISTは希少な腫瘍ですが、当院では豊富な治療経験を有しています。治療の基本となる外科切除では、腫瘍の被膜を傷つけずにきれいに切除するという原則を守りながらも、できるだけ低侵襲かつ機能温存を目指した手術を行っています。2011年から2016年の6年間に当科でGISTに対して外科切除を行った患者さんは69人で、そのうち腹腔鏡下手術を72%の患者さんに行いました。噴門や幽門などの重要な機能を温存するために経口内視鏡と腹腔鏡で協力しながら行う手術(LECS)も行っています。また消化管内科と密接に連携し、必要な場合は分子標的薬を用いた抗腫瘍治療も組み合わせながら治療を行います。

3.研究について

国立がん研究センターでは質の高いがん治療を個々の患者さんに提供すると同時に、先進的な治療法を積極的に開発・応用し、未来に向けた治療体系を確立させる責務もあります。当科はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)外部サイトへのリンク胃がんグループの一員として多くの多施設臨床研究に参加し、得られた経験、エビデンスを活かしたがん治療成績の向上に努めています。JCOGで行われる臨床研究以外にも、安全な術式、手術手技を開発することを目的とした研究にも積極的に参加しています。現在、当科では以下の臨床研究を行っております。
  1. 局所進行胃癌に対する術前術後化学療法の術後補助化学療法に対する優越性に関するランダム化第III相試験(JCOG1509:図5):遠隔転移のない進行胃がん患者さんの標準治療は、胃癌治療ガイドラインにおいて手術(胃切除)+術後補助化学療法(抗がん剤)とされています。この臨床研究は胃切除を行う前に術前化学療法を行うことで治療効果が良くなるかを標準治療と比較する臨床研究です。全国で470人の胃がん患者さんに参加いただく予定です。

    図5.JCOG1509試験
    図5.JCOG1509試験
  2. 高度リンパ節転移を有するHER2陽性胃癌に対する術前トラスツズマブ併用化学療法の意義に関するランダム化第II相試験(JCOG1301C:図6): HER2蛋白が発現している胃がんには「トラスツズマブ」という抗がん剤が効果的であることが分かっています。この臨床研究では、リンパ節に転移がみられ、HER2蛋白が発現している進行胃がんの患者さんを対象として、術前化学療法を行った後に手術および術後補助化学療法を行います。術前化学療法としてこれまで有効とされているSP療法(S-1+シスプラチン療法)を行った患者さんと、SP療法にトラスツズマブを加えたSP-T療法(S-1+シスプラチン+トラスツズマブ療法)を行った患者さんの効果・副作用を比べることを目的としています。全国で130人のHER2陽性の胃がん患者さんにご協力いただく予定です。

    図6:JCOG1301C試験
    図6:JCOG1301C試験
  3. 腹腔鏡下胃全摘術/噴門側胃切除術の食道空腸吻合におけるCircular stapler法とLinear stapler法のランダム化第II相比較試験(大阪大学との共同研究):腹腔鏡下に胃全摘あるいは噴門側胃切除を行ったあとには、新たな食物の通過経路のために食道と空腸をつなぐ(食道空腸吻合)必要があります。腹腔鏡下の食道空腸吻合法には大きく分けて、環状の自動吻合器を使用する方法(Circular stapler法)と線状の自動縫合器を使用する方法(Linear stapler法)があります。どちらの方法がすぐれているかを明らかにすることがこの研究の目的です。
  4. 食道胃接合部癌に対する縦隔リンパ節および大動脈周囲リンパ節の郭清効果を検討する介入研究
  5. 固形がん患者に対するMogamulizumab(抗CCR4抗体)・Nivolumab(抗PD-1抗体)術前併用投与の安全性を観察するための第T相治験
ランダム化について:臨床試験に登録後、どちらの治療法を受けていただくかは「ランダム」に(五分五分の確率で)決まります。患者さんや担当医が治療法を選ぶと、その意思が影響して比べたい治療法の患者さんの特徴に偏りが生じてしまい、正しい臨床研究の結果を得ることができません。ランダム化はどちらがよいかわかっていない治療法を比べるには最もよい方法と考えられており、世界中の臨床研究で採用されています。

これらの研究に関しては患者さんへの十分な説明のもとに、ご理解・ご協力をお願いしながら進めております。