胃外科 << 国立がん研究センター東病院

胃外科

1.胃外科について
2.診療について
      ・先進医療:手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」を用いた胃がん手術
3.研究について

1.胃外科について

 胃外科長
木下 敬弘 (きのした たかひろ)   木下 敬弘 (きのした たかひろ) 外来診療日:木(交代制)、金
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医、指導医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医、指導医
日本消化器内視鏡学会 専門医、指導医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医
開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術などの胃がん外科治療が専門です。多くの選択肢のなかから個々の患者さんに最も適した手術方法を、高いクオリティで提供することを目標にしています。
 医員
海藤 章郎 (かいとう あきお)   海藤 章郎 (かいとう あきお) 外来診療日:月・木(交代制)
  専門医・認定医資格など:
日本外科学会 外科専門医
日本消化器外科学会 消化器外科専門医
日本内視鏡外科学会 内視鏡外科技術認定医
胃がん患者さんにとって最適な治療が受けられるように、院内の各科と連携して診療にあたります。手術治療を専門に行っております。

当科では胃がん、胃粘膜下腫瘍(GISTなど)、食道胃接合部がん(噴門部がん)に対する外科治療を行っています。私たちは2人の診療スタッフで週3日(月・木・金)の外来診療を行っています。病状の進行によっては食事や水分が摂りにくい場合もあります。そのような場合は適宜、迅速対応させていただきますので遠慮なくご相談ください。また、他院で診療を受けている場合の医療相談(セカンドオピニオン)も受け付けております。

2.診療について

◇当科の特徴

2015年の1年間、当科で外科手術を行った疾患は胃がん(食道胃接合部がん含む)256例、胃粘膜下腫瘍(GISTなど)14例でした。胃がんの年度別手術件数の推移は図1のグラフの通りで、国内有数の豊富な手術件数を誇ります。

腹腔鏡下胃切除はこれまで多くの経験と実績を積んできました。その手技のクオリティは国内外から高い評価を得ており、学会などにおける指導的立場にあります。腹腔鏡下手術は第4版胃がんガイドラインでは「臨床病期Iに対する幽門側胃切除」が日常診療の1つとして推奨されています。胃全摘、また病期II以上の進行がんに対する安全性や効果に関しては、エビデンスに乏しく、議論の余地が残されており、当科でも多施設臨床研究に参加し、その検証を進めています。

また、2014年6月から手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」(Intuitive Surgical社)を用いた腹腔鏡下胃切除を導入しました(図2参照)。ロボット支援胃がん手術は、厚生労働省に先進医療として認可されており、当科も基準を満たした施設として、先進医療下の臨床研究として行っています。詳しくは「先進医療:手術支援ロボットを用いた胃がん手術」のページや、がんセンター広報誌「日々歩」をご覧ください。

胃がんの手術においては、根治性(病気を治す)、低侵襲性(体に負担が少ない)、機能温存(胃の機能・容量をなるべく残す)のバランスが重要です。当科ではアプローチ法として開腹、腹腔鏡、ロボット支援の3つの選択肢を有するとともに(図3参照)、がんの根治性を保持しつつも胃の機能をなるべく温存できるような術式を選択します。当科はガイドラインを基準とした科学的根拠から、また豊富な経験から、患者さん一人ひとりに最も適した手術方法を考え、提供するよう努力しております。

図1 当科の年度別手術症例数と特徴
図1 年度別胃がん手術症例数

図2 ロボット支援下手術
図2 ロボット支援下手術
通常の腹腔鏡手術に、鉗子の先端が人間の指のように自由に屈曲する関節機能が付加されたのが、ダ・ヴィンチ手術(ロボット手術)です。術者は操作用コンソールに座り専用の3Dハイビジョン画像を見ながら、患者さんの体内に挿入されたロボット鉗 子の動きを操作します。

図3 アプローチ法による手術創の違い
図3 アプローチ法による手術創の違い

◇診療の流れ

外来を受診されましたら、まず病状・病期(ステージ)の把握のため、内視鏡検査・CT検査・透視検査などを行います。これらの検査結果をもとに、外科・消化管内科放射線診断科消化管内視鏡科の合同カンファレンスにて、各患者さんに最も適した治療方針を検討します。例えば、胃がんの診断を受け、他院で手術治療を勧められて当科を受診しても、早期がんで適格条件を満たせば内視鏡的切除(ESD)の方針になることもありますし、反対に高度な腫瘍進展が認められれば根治切除不能と判断し、化学療法の方針となることもあります。また、CT検査で腹膜播種が疑われる場合は、当科にて全身麻酔下に審査腹腔鏡検査を行い、確認した後に治療方針を決定する場合があります。

入院されてからの周術期(術前〜術後)管理は、ほぼ全例でクリニカルパスを用いて行っています。胃切除術の場合、術後7〜10日で退院する場合がほとんどです。

◇化学療法の併用

当院ではがん専門病院の強みを生かし、消化管内科と密接に連携し、術前・術後の化学療法併用を行っています。根治手術を行い病理結果でステージII以上と診断されると、術後に抗がん剤投与(術後補助化学療法)が推奨される場合があります。

また、これまでは治療困難とされた患者さんに対しても、抗がん剤、分子標的薬と外科手術をうまく組み合わせることで、治療成績の向上を目指しています。発見時に根治切除不能と診断されても、化学療法によって根治手術が可能となる患者さんも散見されるようになり、今後の検証が待たれています。

高度リンパ節転移例、スキルス胃がんなどの治療困難例に対する術前化学療法に関しては、臨床試験の結果待ちであり、有効性に関して現時点では明らかなエビデンスはありませんが、ご相談のうえ行うこともできます。

◇治療成績

当院で1995年から2004年までに胃がん手術治療を行った患者さんの治療成績は図4のとおりです。

図4 1995〜2004年 胃がん手術治療成績
図4 1995〜2004年 胃がん手術治療成績

◇胃GISTに対する診療

GISTは希少な腫瘍ですが、当院では豊富な治療経験を有しています。治療の基本となる外科切除では、できるだけ低侵襲(腹腔鏡下手術)で機能温存を目指した手術を行っています。また消化管内科と密接に連携し、分子標的薬を用いた抗腫瘍治療も行います。

3.研究について

国立がん研究センターでは質の高いがん治療を国民に提供するとともに、先進的な治療法を積極的に開発・応用し、未来に向けた治療体系を確立させる責務もあります。将来の標準治療法を決めるためには臨床試験を行って、いくつかの治療法の優劣を調べる必要があります。当科はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)外部サイトへのリンクの一員として多施設共同の臨床研究に参加協力して、得られたエビデンスを活かしたがん治療成績の向上に努めています。また、より安全な手術を目指し、手術手技や術式を開発する研究も精力的に行っています。
  1. 臨床病期I期胃癌に対する腹腔鏡下胃全摘術および腹腔鏡下噴門側胃切除術の安全性に関する非ランダム化検証的試験 (JCOG1401)
  2. Stage II胃癌に対するS-1術後補助化学療法の期間短縮の意義を検討する試験 (JCOG1104)
  3. 進行胃癌に対する腹腔鏡下手術と開腹手術の安全性と根治性に関するランダム化II/III相比較研究 (JLSSG0901)
  4. 腹腔鏡下胃全摘術/噴門側胃切除術の食道空腸吻合におけるCircular stapler法とLinear stapler法のランダム化第II相比較試験(大阪大学との共同研究)
  5. 食道胃接合部癌に対する縦隔リンパ節および大動脈周囲リンパ節の郭清効果を検討する介入研究
  6. 切除可能胃癌に対するda Vinci surgical system (DVSS)によるロボット支援胃切除術の安全性、有効性、経済性に関する多施設共同臨床試験(先進医療B)
  7. ハイリスク消化管間質腫瘍 (GIST) に対する完全切除後の治療に関する研究 (STAR ReGISTry)
これらの研究に関しては患者さんへの十分な説明のもとに、ご理解・ご協力をお願いしながら進めております。