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国立がん研究センター 東病院

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診療について

はじめに

2016年の1年間に、胃がん(食道胃接合部がん含む)243例、胃粘膜下腫瘍(GISTなど)32例の手術を行いました。胃がんの年度別手術件数の推移は図1のグラフの通りで、国内有数の豊富な手術件数を誇ります。当科では3人のスタッフと3人のがん専門修練医および5人のレジデントで診療を行っております。また、消化管内科・消化器内視鏡科・放射線診断科などの他科医師や看護師・栄養士・薬剤師・理学療法士などの他職種のスタッフと密に連携をとったチーム医療を行い、患者さんに最適な診療を提供できるよう心がけています。

表1 2016年手術症例 疾患別内訳
疾患名症例数
胃がん 243
GIST 15
その他 17
275

図1 当科の年度別手術症例数と特徴

図1

胃がんに対する診療

胃がんの手術においては、根治性(病気を治す)、低侵襲性(体に負担が少ない)、機能温存(胃の機能・容量をなるべく残す)のバランスが重要です。治療方針は、原則として胃がん治療ガイドラインに従い決定されますが、患者さんの状態(年齢、併存症の有無、病気の進行度など)はそれぞれ異なります。患者さんひとりひとりに最も適した治療方針、手術術式を提供することを目指して、日々の診療にあたっています。なお、胃がんの治療は手術だけではありません。当科を受診された場合でも、手術以外の治療法が最も適していると判断された場合には、専門医師の外来受診をおすすめさせていただきます(このページの中程に記載のある「診療のながれを」ご参照ください)。

当科の特徴

当科では患者さんに少しでも負担の少ない手術を提供することを目指して、腹腔鏡手術、ロボット支援手術(低侵襲手術と記載されることもあります)に積極的に取り組んできました。また、術後の胃の機能を温存することを目指した、機能温存手術にも積極的に取り組んでいます。

腹腔鏡下胃切除術は第4版胃がん治療ガイドライン(2014年刊行)では「臨床病期I期に対する幽門側胃切除」が日常診療の1つとして推奨されているのみで、胃全摘、あるいは臨床病期II以上の進行胃がんに対する腹腔鏡下胃切除術の安全性や効果に関しては、十分なエビデンスがありません。これまで当科では胃全摘、進行胃がんに対する腹腔鏡下胃切除術の安全性を示すことをめざした多施設臨床研究に参加協力するとともに、現在までに約1200例(うち腹腔鏡下胃全摘:約150例、腹腔鏡下噴門側胃切除術:約130例)の腹腔鏡下胃切除術の経験と実績を積んできました。特に難易度の高い、食道胃接合部がんを含む胃上部がんに対する腹腔鏡下胃全摘・噴門側胃切除における当施設での手術手技のクオリティは国内外から高い評価を得ており、学会などで指導的立場にあります。腹腔鏡手術だけでなく、開腹手術も同等のクオリティで行っており、それぞれのアプローチ法のメリット・デメリットをお話し、患者さんの希望に沿って手術アプローチを決定しています。なお、2016年に当科で行った手術のアプローチ法別の手術術式の内訳は下記リストの通りで、80.7%の患者さんが腹腔鏡下胃切除(ロボット支援下胃切除を含む)を受けられました。

表2 2016年手術症例 術式別内訳
開腹手術62 
幽門側胃切除 18  
幽門保存胃切除 0  
噴門側胃切除 3  
胃全摘 17  
膵頭十二指腸切除 0  
胃部分切除 10  
その他(バイパス、試験開腹など) 14  
腹腔鏡手術(ロボット支援手術)213(37) 
幽門側胃切除 110 (29)
幽門保存胃切除 4  
噴門側胃切除 22 (5)
胃全摘 23 (3)
胃部分切除 10  
その他(バイパス、審査腹腔鏡など) 44  

また、2014年6月から手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」(Intuitive Surgical社)を用いた腹腔鏡下胃切除を導入し、これまで61人の患者さんに手術を行いました(図2参照)。胃がんに対するロボット支援手術は先進医療制度下に行われており、当科も協力医療機関として先進医療制度下の臨床研究に協力しました(先進医療制度下の胃がんに対するロボット支援手術は2016年12月で登録終了となりました)。今後ロボット支援下胃切除を希望される患者さんには個別に胃外科外来で相談させて頂きます。詳しくは「先進医療:手術支援ロボットを用いた胃がん手術」のページや、がんセンター広報誌「日々歩(関連ファイル)」をご覧ください。

図2 ロボット支援下手術

図2

通常の腹腔鏡手術に、鉗子の先端が人間の指のように自由に屈曲する関節機能が付加されたのが、ダ・ヴィンチ手術(ロボット手術)です。術者は操作用コンソールに座り専用の3Dハイビジョン画像を見ながら、患者さんの体内に挿入されたロボット鉗子の動きを操作します。

診療の流れ

外来を受診されましたら、まず病状・病期(ステージ)の把握のため、内視鏡検査・CT検査・透視検査などを行います。これらの検査結果をもとに、外科・消化管内科放射線診断科消化管内視鏡科の合同カンファレンスにて、各患者さんに最も適した治療方針を検討します。例えば、胃がんの診断を受け、他院で手術治療を勧められて当科を受診しても、早期がんで一定の条件を満たせば内視鏡的切除(ESD)の方針になることもありますし、反対に高度な腫瘍進展が認められれば根治切除不能と判断し、化学療法の方針となることもあります。また、進行度によっては、全身麻酔下に腹腔鏡検査を行い、微小転移の有無(腹膜播種の有無)を確認した後に治療方針を決定する場合があります。

入院されてからの周術期(術前から術後)管理は、ほぼ全例でクリニカルパスを用いて行っています。クリニカルパスとは、検査や治療の予定とタイムスケジュールを示した治療計画書です。胃切除術の場合、術後7から10日で退院する場合がほとんどです。

化学療法の併用

当院ではがん専門病院の強みを生かし、消化管内科との連携を密接に行っています。手術でがんが完全に切除された場合でも、ステージによっては再発予防のための抗がん剤治療(術後補助化学療法)をお勧めすることがあります。また、胃がんがより進行した患者さんに対しては、化学療法(術前補助化学療法)を行った後に手術を行うこともあります。

また、従来の治療では治療困難(手術の適応とならない)とされていた患者さんに対しても、新規に開発された抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤と外科手術をうまく組み合わせることで、治療成績の向上を目指しています。消化管内科との密接かつ積極的な取り組みにおより、発見時に根治切除不能と診断されても、積極的な化学療法により根治手術が可能となる患者さんも散見されています(図3)。

図3 化学療法により臨床病期IVから手術が可能となった胃がん

図3

治療成績

当院で2008年から2012年までに胃がん手術治療を行った患者さんの治療成績は図4・表3のとおりです。

図4 2008年から2012年 胃がん手術治療成績(生存曲線 全生存率)

図4

表3 2008年から2012年胃がん手術治療成績
(全生存率・無再発生存率)
病期患者数全生存率(%)
(3年)
 全生存率(%)
(5年)
無再発生存率(%)
(3年)
 無再発生存率(%)
(5年)
IA 524 98.2 97.5 97.8 96.9
IB 103 97 93.6 93 90.7
IIA 84 96.4 88.6 90.4 84.9
IIB 82 88.1 86.4 82 77.6
IIIA 63 88.1 82.2 79.7 77.7
IIIB 70 79.6 67 57.2 57.2
IIIC 71 56.9 49.9 48 41.5
IV 56 41.1 16.5

胃GISTに対する診療

胃GISTは希少な腫瘍ですが、当院では豊富な治療経験を有しています。治療の基本となる外科切除では、腫瘍の被膜を傷つけずにきれいに切除するという原則を守りながらも、できるだけ低侵襲かつ機能温存を目指した手術を行っています。2011年から2016年の6年間に当科でGISTに対して外科切除を行った患者さんは69人で、そのうち腹腔鏡下手術を72%の患者さんに行いました。噴門や幽門などの重要な機能を温存するために経口内視鏡と腹腔鏡で協力しながら行う手術(LECS)も行っています。また消化管内科と密接に連携し、必要な場合は分子標的薬を用いた抗腫瘍治療も組み合わせながら治療を行います。

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