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分野別治療方針肺がん

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はじめに

肺がんは、大腸がんに次いで罹患率が高く(2019年がん統計)、死亡率では最も高いがんです(2021年がん統計)。小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分類されますが、陽子線治療の対象となるのは非小細胞肺がんです。

陽子線治療 肺がん

陽子線治療の適応とは

他にも有望な治療法がある中、特に陽子線治療の特徴を生かせる対象は次のようなケースです。

早期の非小細胞肺がん

肺内に単発の原発腫瘍があり、リンパ節や骨などへの転移がない症例です。

標準治療は、手術(肺葉切除+肺門および縦郭リンパ節郭清)ですが、体への負担も大きく、高齢者や呼吸機能不良の場合、標準的な手術が困難なこともあります。その場合、次善の治療として原発腫瘍やその周りだけを切除する縮小手術が実施されることがありますが、それと同様に原発腫瘍のみを対象として放射線治療を実施することもあります。

陽子線治療を用いると、周囲の正常肺組織への線量を低減し、病巣のみに線量を集中させることが可能となります。

図1図1 早期肺がんに対する陽子線治療の一例
腫瘍に集中した線量分布が得られている。 

将来展望

治療期間の短縮
早期肺がんに対して、さらに治療期間を短縮した試みがあります。今後、当院では、1回線量6.6GyE×10回=総線量66GyEのスケジュールを用いて、安全性と有効性を確認する臨床試験を実施する予定です。66GyE/10回は、これまで実施してきた80GyE/20回と生物学的に同等の線量スケジュールであり、同様の治療効果が期待できます。

局所進行肺がん

局所進行非小細胞肺がんとは、縦郭リンパ節に転移があるため根治的な手術が不能な肺がんで、非小細胞肺がんの約3分の1を占めます。病気の進展度合いにもよりますが、抗がん剤による化学療法、放射線治療、あるいは両者を組み合わせた治療がおこなわれます。放射線治療が可能な場合、現状では化学療法と放射線治療の同時併用療法が標準治療と考えられています。それでも生存期間中央値は16カ月から20カ月と、予後不良のがんであり、さらなる治療効果の改善が求められています。

さまざまな新規抗がん剤や分子標的薬剤が開発される一方、放射線治療については線量増加による治療効果の改善が試みられています。線量増加をおこなうと、周囲の正常肺に対する影響が懸念されますが、陽子線治療を用いることにより副作用を増やすことなく線量増加を実施できる可能性があります。今後、当院では、安全性を確認しながら、治療成績の改善を目的として、陽子線治療を用いた放射線治療の線量増加試験を実施する予定です。

セカンドオピニオン

現状、腫瘍径が5センチメートル以内で、リンパ節転移や遠隔転移のない早期の非小細胞肺がんを対象としています。局所進行非小細胞肺がんに対する陽子線治療は、臨床試験の準備が整い次第、開始いたします。そのほか、非小細胞肺がんに対する陽子線治療のセカンドオピニオンを希望される場合には主治医と相談の上初診予約受付(電話番号:04-7134-6991 平日8時30分から17時15分)にお電話いただき、予約をおとりください。

参考文献

  • pdated results of high dose proton beam therapy (PBT) for stage I non-small cell lung cancer (NSCLC). Keiji Nihei, Takashi Ogino, Masakatsu Onozawa, Hideki Nishimura Sep 23 - 27, 2007, Barcelona ECCO14 (ESTRO26)
  • High dose proton beam therapy for stage I non-small cell lung cancer. Keiji Nihei, Takashi Ogino, Satoshi Ishikura, Hideki Nishimura Int J Radiat Oncol Biol Phys 65(1):107-111,2006.

更新日:2023年8月29日