国立がん研究センタータイトルバー トップページへ 東病院トップへ
※PC環境によりサイズ変更できない場合があります
文字サイズ | 拡大 | 標準 | 縮小 |

spacer
トップ > 東病院 > 診療内容と診療実績のご案内 > 上腹部外科

上腹部外科

1.上腹部外科について
2.診療について
3.研究について


1.上腹部外科について

担当医師名 外来診察日 診療科 専門分野
小西 大
(こにし まさる)
小西 大 (こにし まさる)
副院長(医療安全管理担当)
肝胆膵腫瘍科 科長
後藤田 直人
(ごとうだ なおと)
後藤田 直人(ごとうだ なおと)
肝胆膵腫瘍科 肝胆膵外科
外来医長
高橋 進一郎
(たかはし しんいちろう)
高橋 進一郎 (たかはし しんいちろう)
肝胆膵腫瘍科 肝胆膵外科
病棟医長
木下 敬弘
(きのした たかひろ)
木下 敬弘 (きのした たかひろ)
消化管腫瘍科 胃外科
医長
加藤 祐一郎
(かとう ゆういちろう)
加藤 祐一郎(かとう ゆういちろう)
消化管腫瘍科 胃外科
医員

当科は「上腹部外科」という国内でもあまり聞き慣れない診療科名ですが、主に上腹部にある腹部臓器、胃・肝臓・胆道(胆嚢、胆管)・膵臓などに発生した悪性腫瘍に対する外科的治療を行っています。悪性腫瘍は進行具合によっては時として一臓器に留まらず、近傍の他臓器に及ぶことがあり、そのような状況では手術も拡大切除(多臓器合併切除)が要求されます。ある程度近傍に存在する臓器を全て扱う外科であることは専門性を保ちつつ、このような拡大手術も躊躇なく行えるという点で非常に強みがあります。

私達は6人の診療スタッフで外来診療を毎日行っています。病状の進行によっては食事や水分が通りにくい方、黄疸がでている方などいらっしゃいますが、初めて受診される場合でも初診予約を毎日受け付けていますので迅速に対応させていただきます。


2.診療について

当科で主に担当する診療は胃がん、十二指腸がん、肝臓がん(原発性、転移性)、胆道がん(胆嚢、胆管)、膵臓がんなどに対する手術です。その他、上腹部にできた特殊な腫瘍などの外科的切除も担当します。年別症例数の推移は表1のとおりで年間通じて非常に多くの手術を行っています。

治療方針については初めての外来受診が当科であっても必ずしも手術ということにはなりません。内視鏡検査や画像検査(CT、MRI、超音波検査など)を行ったうえで、放射線診断科による進行期を含めた正確な診断のもと、内科・外科の合同カンファレンスにて一人一人の患者さんの検査結果を検討しながら治療方針を決定しています。例えば、胃がんの診断で手術加療をすすめられて当科を受診されても進行状況によっては、消化器内科医の判断のもと内視鏡的切除の治療方針となることもありますし、反対に当院での精密検査により広範囲な腫瘍進展が確認されれば、根治切除不能と判断し化学療法の方針となることがあります。

入院されてからの周術期(術前〜術後)管理はクリニカルパスを用いて行っています。現在私達が担当するほとんどの術式にこのクリニカルパスを導入し、胃切除術や単純な肝切除術では術後7〜11日で退院されています。

表1 年別主要手術疾患数
図1 年別主要手術疾患数


【胃がん】
当院における胃がんの年間手術症例は300例以上と国内有数の手術件数を誇ります。当院の胃がん手術の特徴は、体に侵襲の少ない腹腔鏡手術・機能温存手術、通常の根治胃切除、他臓器合併切除を行う拡大手術に至るまで、経験豊富な専門スタッフによって行われる点です。
腹腔鏡手術は傷が小さく低侵襲な点、拡大視画像によってリンパ節郭清においても精度向上が得られる点から胃がん手術においても有用な手技として評価が高まっており、今後はますます普及が拡がるであろうとされています。しかしながら現在のところ、胃がん治療のガイドライン上はまだ標準治療とは位置づけられていないため、開腹手術と比較した臨床試験を行っています。
このような腹腔鏡手術に対しても当院では習熟したスタッフ(日本内視鏡外科学会技術認定医)によって質の高い安全な手術を提供しています。腸管の再建も鏡視下で行う完全腹腔鏡手術を基本としているため、傷はほとんど目立たないのが特徴です (図1)。

図1 胃がん手術の手術創
図1 胃がん手術の手術創
また今後は開発が目覚ましい抗がん剤、分子標的薬と外科手術をうまく組み合わせることで治療成績を向上することが期待されています。当科も消化器内科と密に連携してこのような集学的治療を行っています。進行がんで術前抗がん剤(S-1+CDDP)が予後改善に寄与するかどうかは現在臨床試験が進行中です。手術の結果、病期II,IIIと診断された場合は、ガイドラインに従い術後の抗がん剤(S-1)内服が推奨されています。
当院で1995年から2004年までに胃がんに対して手術加療を行いました治療成績は図2のとおりです。

図2 1995年〜2004年までの胃がん手術治療成績
図2 1995年〜2004年までの胃がん手術治療成績


肝胆膵がんに対する手術治療について
肝臓、胆道(胆管や胆嚢)、膵臓、さらには十二指腸やファーター乳頭部といった部位に発生する、いわゆる肝胆膵のがんは多くが難治性です。また解剖学的にも隣接する臓器が多く、重要血管が近傍に位置することから腹部手術の中でも難易度の高い手術が多いことも特徴です。しかしながら当院ではこうした難易度の高い肝胆膵のがんに対する手術におきましても、豊富な手術経験を持つスタッフ(日本肝胆膵外科学会認定、肝胆膵外科高度技能指導医)による質の高い手術を行っています。

年別主要手術件数としては肝胆道系のがんに対する肝切除術、腹部手術の中でも難易度の非常に高い胆膵がん系に行われます膵頭十二指腸切除術、そして前述しました腹腔鏡下胃切除術は表2のとおりです。

表2 年別主要手術件数
図2 年別主要手術件数

2010年4月に新たに保険診療として認可されました腹腔鏡下の肝外側区域切除、肝部分切除術も当院で行っています。腹腔鏡手術は胃がんの診療でもご説明申しあげましたが、手術の傷が小さいことが最大の特徴です。肝臓の手術は一般的には大きな傷で行われることが多いのですが、こうした傷が小さくて済む肝切除術も積極的に行っています。しかしながらこの手術は全ての患者さんに行っている訳ではなく、安全面を考慮しつつ腫瘍の大きさや肝臓内での腫瘍の位置によって適応を決定しており、比較的小さな腫瘍で肝の外側区域や辺縁に位置する腫瘍を適応としております(図3)。


図3 腹腔鏡下肝切除術の適応

図3 腹腔鏡下肝切除術の適応

それぞれの疾患に対する当科の診療の特徴は以下のとおりです。

【肝細胞がん】
B型肝炎やC型肝炎を原因として発生することが多いのがこの肝細胞がんです。肝細胞がんは時として径が10cmを越えるような大きな腫瘍として発見されるときがあります。このような場合も全身状態、肝機能から判断して手術に耐えられると判断されれば、積極的に手術加療を行っています。大きな主腫瘍に加えて、他にも肝臓内に多数の小さい肝細胞がんが認められるような場合も大きな腫瘍に対しては手術以外の治療効果があまり期待できないため減量切除という手術でまず主腫瘍を切除し、その後肝動脈塞栓術などを組み合わせるような治療も行っています。

【転移性肝がん】
大腸癌肝転移を中心に胃がん、膵神経内分泌腫瘍の転移を含め年間50〜60例の転移性肝癌切除を行っています。肝転移は大腸癌で最も高頻度に認められる遠隔転移形式ですが、肝切除が可能な場合根治が期待可能であり術後5年以上ご健在の方が半数近くいらっしゃいます。根治切除不能な大腸癌肝転移であっても化学療法が効いて小さくなった場合切除が可能になる場合があります。当院ではこの様な手術を今までに60例以上行っています。また、再発減少目的に術後補助療法の臨床試験を行っており治療成績の向上を目指しています。

【胆道がん、十二指腸がん】
胆汁の流れる所、胆管に生じるがんを総称して胆道がんといいます。胆道がんは肝内胆管がん(胆管細胞がん)、胆管がん、ファーター乳頭部がんに分けられます。このファーター乳頭部は十二指腸にあり、十二指腸がんに対しても診療を行っています。胆管がんは、がんの存在が肝臓内から膵臓内までの広範囲なことがあり、そのような場合は上述したような難易度の高い膵頭十二指腸切除術に加えて肝切除術も付加することもあります。当院ではこうした手術に対しても対応可能です。
一方で、詳細な画像診断のもと腫瘍の存在範囲が比較的限局していると思われるような場合は患者さんへの負担ができるだけ小さくなるような胆管と胆嚢だけを切除して再建する肝外胆管切除術や、十二指腸がんに対しても悪性度の低いがんであれば膵臓を温存する膵温存十二指腸切除術というような縮小手術も積極的に取り組んでいます。胆道がんの術後については現在再発予防目的に術後補助療法に関する臨床試験も肝胆膵内科と協力して行い、治療成績の向上に努めています。

【膵がん】
膵癌は難治がんの一つと考えられていますが、遠隔転移がなく周囲主要動脈に浸潤が無い場合手術により根治の可能性があります。膵頭部に腫瘍がある場合は膵頭十二指腸切除、膵体部部に腫瘍がある場合は膵体尾部切除を行います。現在Gemcitabine(ジェムザール)による術後補助療法が標準治療と考えられており当院では2007年より導入していますが、さらに効果の高い術後補助療法を開発するため臨床試験を行っているところです。また、今後は主要血管に近接もしくは浸潤する切除境界領域膵癌に対する術前放射線化学療法の臨床試験を肝胆膵内科、放射線科と共同して行う予定です。膵癌以外の膵腫瘍についても膵管内乳頭腫瘍に対する手術を今までに120例以上行っており、また粘液性嚢胞腫瘍、神経内分泌腫瘍等の比較的希少な腫瘍に対する手術経験が数多くあります。


3.研究について

国立がん研究センターでは質の高いがん治療を国民に提供するとともに、先進的な治療法を積極的に開発・応用する責務もあります。将来の標準治療法を決めるためには臨床試験を行って、いくつかの治療法の優劣を調べる必要があります。当科はJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の一員として多施設共同の臨床研究や単施設での臨床研究などを主導、あるいは参加協力して、得られたエビデンスを活かしたがん治療成績の向上に努めています。

またより安全で適正な手術を目指し、手術手技、手術術式、術後管理の改良する研究も精力的に行っています。

(胃がん)
1.進行した大型3型、4型胃がんに対する術前化学療法の有効性を検証する試験(JCOG0501)
2.治癒切除不能の進行がんに対する胃切除の意義を検証する試験(JCOG0701:韓国と共同)
3.漿膜下層浸潤がん・漿膜露出がんにおける網嚢切除の意義を検証する試験(JCOG1001)
4.臨床病期Iの胃がんに対する腹腔鏡手術の妥当性を検証する試験(JCOG0912)
5.高度リンパ節転移を伴う進行胃癌に対する術前Docetaxel+CDDP+S-1の第II相試験(JCOG1002)

(肝胆膵がん)
1.大腸がん肝転移切除後の手術単独に対して補助化学療法の有効性を検証する試験(JCOG 0603)
2.膵臓がん術後補助化学療法における塩酸ゲムシタビン療法とゲムシタビン+S-1の併用療法との有用性に関する比較試験
3.肝細胞がん術後補助療法としてのペプチドワクチンの有効性に対する臨床試験
  胆道がん術後の対するS-1による補助化学療法の有用性に関する臨床試験
4.膵体尾部切除における器械吻合器を用いた膵断端処理の安全性に関する多施設共同、無作為化群間比較試験(SNS-RCT)
5.肝臓外科手術におけるエネルギーデバイスを用いた肝切離法の有効性に関する多施設共同無作為化群間比較試験(EPL-trial)

これらの研究に関しては患者さんへの十分な説明のもとに、ご理解・ご協力をお願いしながら進めております。