トップページ > 診療科 > 食道外科 > 食道がんの手術について

食道がんの手術について

からだへの負担が少ない外科治療(低侵襲性外科治療)

当院では食道がんに対して、頸部・胸部・腹部の3領域に及ぶリンパ節郭清を行い、食道を切除する方法を標準手術としています。当院の特色として、食道がん手術をがん切除と再建に分け、がんの進行度に応じ手術方法の個別化を行っています。また、呼吸機能に問題がある方や80歳以上のご高齢の方に対しても積極的に手術を行っており、2期分割手術や縦隔鏡を用いた非開胸での手術など、よりからだへの負担が少ない手術を行っています。

食道がんに対する内視鏡外科手術

従来、食道がんに対する手術は、大きく胸を開いて癌を切除し、大きくお腹を開けて胃を用いて再建する手術が行われてきました。現在の内視鏡下手術(胸腔鏡下食道切除術・腹腔鏡下再建術)は、イメージ動画の通り小さい傷での手術が可能となりました。またカメラ(内視鏡)によってより拡大されてより鮮細にわかりやすくなった画像を基に、確実に食道と病巣を切除することができるようになりました。

以下にそれぞれの手術方法や術後の経過に関して詳しく説明をします。

胸腔鏡下食道切除

胸腔鏡下食道切除の画像

当院では、腹臥位(ふくがい:うつぶせのこと)で、手術器具を入れるポート(手術器具を入れる筒)を合計6個用いて手術を行っています。ポートの直径は、6個のうち2個が約1cm、残り4個は約05.cmと小さいものです。従来の大きく胸を切って開ける手術と比べて傷が小さく、痛みも少ない手術が可能となっています。

よりちいさい傷、より痛みの少ない傷での手術へ

胸腔鏡下手術の創と開胸手術の創

腹腔鏡下胃管再建

腹腔鏡下胃管再建の画像

当院では、過去に開腹手術を受けたことのない患者さんに対しては、お腹を大きく開けずにポートだけで手術を行う、腹腔鏡下胃管再建術を行っています。使用するポートの直径は、5個のうち2個が約1cm、3個が約0.5cmと非常に小さいものです。さらに、臍(へそ)の周囲を約4cm切開し、胃袋を食道の代わりとなるように胃管につくり変えます。

状態に応じた術式

二期分割手術

二期分割手術の画像

80歳以上のご高齢の方や臓器障害をもつ方では体への負担が大きく、一期的に手術を行うと、多くの場合術後に質の高い日常生活が営めません。そのような方に対して当院では、切除と再建を別の時期に行う「二期分割手術」を行っています。

二期分割手術では、一回目のがん切除の前に、胃カメラを用いて胃ろうを(内視鏡的胃ろう:PEG)を造設した後に、がん切除を行います。その後はいったん退院し、胃ろうによる栄養管理とリハビリテーションを行い、臓器機能の回復を待ち、条件が整ったら再入院し、2回目の手術となる再建術を行います。

縦隔鏡下非開胸食道切除

縦隔鏡下非開胸食道切除の画像

右胸腔内が癒着していたり、手術中に片方の肺だけでの換気では呼吸が維持できない方には、胸部の手術操作を加えず(胸腔鏡や開胸で胸の中を操作せず)頸部・腹部それぞれから食道のまわりを剥がして、トンネルを開通させるように食道を切除する「縦隔鏡下非開胸食道切除手術」を行っています。胸部での操作を行わないため、からだへの負担が非常に少ない手術となっています。

術後経過について

 手術から退院までの経過
術後経過のイメージ動画「手術から退院までの経過」(YouTubeにリンクします。)

 

  • 手術当日
    術後は集中治療室(ICU)入室
  • 術後1日目
    気管支鏡、離床、歩行練習
  • 術後3日目から5日目
    一般病棟へ、尿管抜去、頸部や胸部ドレーン抜去
  • 術後6日目から8日目
    バリウム検査(レントゲン室)問題なければ飲水・食事開始
  • 術後14日目前後
    退院(ただし、放射線治療歴のある方は、食事開始は遅れる場合があります。)

手術後に出来るだけ早く元の生活に戻ることができるようするために、筋力維持を目的とした積極的なリハビリ、感染への予防対策、栄養管理、退院後の生活指導など多岐にわたる支援と介入を行っており、チーム一丸となって退院後も見据えた術後管理を行っています