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食道がんについて

正しく知ろう 体と病気のしくみ

現代は、日本人の2人に一人が生涯のうちにがんに罹患する時代といわれています。がんは体のどの臓器にもできる可能性がありますが、臓器によってその症状は全く異なります。自身の病気を理解するために、まずは「食道」とは何か、を理解することからはじめましょう。

食道とは?

食道は、口から胃につながる細長い筒状の管の様な臓器です。いわゆる食物が通る「消化管」の一部で、口から入った後の食事の最初の通り道ですが、他の消化管(胃、大腸など)と同様にがんができることがあります。

食道の位置と構造の画像

食道がんの症状

食道にがんができると、様々な症状が起こります。具体的な症状の解説を以下に記載します。

胸がしみるような感覚

食べ物を飲み込んだときに胸の奥がちくちくと痛んだり、熱いものを飲み込んだときにしみるように感じる、といった症状は、がんの初期のことにみられます。早期発見のためには、症状を自覚した時に内視鏡検査を受けることをお勧めします。がんが少し大きくなると、逆にこのような感覚を感じなくなります。

食物がつかえるような感覚

がんが大きくなると食道の内側が狭くなり、食べ物がつかえて気が付くことになります。特に丸のみしがちな食物(硬い肉、すしなど)を食べたとき、あるいはよく噛まずに食べた時に突然生じることが多い症状です。がんがさらに大きくなると、食道をふさいで水も透らなくなり、唾液も飲み込めずに吐いてしまうことになります。

体重減少

食べ物がつかえると食事量が減り、栄養が足りなくなって体重が減少します。3ヶ月間に5-6kg体重が減少したら注意が必要です。

胸痛・背部痛

がんが食道の壁を貫いて外に出て、周りの肺や背骨、大動脈を圧迫するようになると、胸の奥や背中に痛みを感じるようになります。これらの症状は、肺や心臓などの病気でもみられますが、肺や心臓の検査だけでなく、食道も検査してもらうよう医師に相談してください。

声のかすれ

食道のすぐ脇に声を調節している神経があり、これががんで壊されると声がかすれます。声に変化があると、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診する場合が多いのですが、喉頭そのものには腫瘍や炎症はないとして見すごされることもあります。声帯の動きだけが悪いときは、食道がんも疑って、食道の内視鏡やCT検査をすることをお勧めします。

食道がん ~どこから発生し、どう広がっていくのか?~

食道は筒状の臓器であり、その筒を構成している壁は何層もの構造でできています。粘膜上皮、粘膜固有層、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層であり、一番壁の内側にある粘膜は「重層扁平上皮」という組織で覆われています。食道がんはこの一番内側の粘膜から発生します。日本人の食道がんの90%以上がこのタイプの「扁平上皮癌」であり、60~70歳の男性に多く発病します。

食道壁の構造とがんの深さ(T 因子)の分類の画像

がんは発生するとどんどん増大していき、何層もの壁を越えて拡がっていきます。これを「浸潤」といいます。食道は胃や大腸と同じ消化管ですが、粘膜下層にあるリンパ管がより多く張り巡らされているため、がんの浸潤による「リンパ節転移」を起こしやすい臓器です。

  • 粘膜筋板に浸潤すると5%から10%
  • 粘膜下層浅層に浸潤すると10%から0%
  • 粘膜下層深層に浸潤すると20%から40%

よって、粘膜固有層までに限局するがんは内視鏡下切除の適応となりますが、粘膜筋板より深層に浸潤した場合は食道のがんを切除するだけでなく、これら周辺のリンパ節を共に摘出すること(郭清)が必要となります。(しかし、患者さんの基礎疾患や体力などを考慮し、手術ではなく化学放射線療法などその他の治療法を選択する場合もあります。)

また、食道の周りには、気管や心臓、大動脈、肺静脈など重要な臓器がたくさんあります。そのため食道にできたがんがどんどん浸潤していき、食道の壁を越えるところまで浸潤していくと、切りとることができない重要な臓器にがんが及んでしまい、手術でがんをきれいに取り切ることが難しくなる場合もあります。

この様に食道がんは、他の消化管のがんと比べると治療が難しくなる場合もありますが、手術だけでなく抗がん剤による化学療法や放射線治療も組み合わせて、しっかりとした治療を行えば十分に治療できる可能性があります。

手術による治療だけではなく、内科や放射線科の先生方とも連携し、患者さん個人個人に最も合う食道がん治療を提供できるようにしています。

胸部食道がん(胸腹部食道がん)

診断:がんの広がり(進行度)を調べる

がんの進行度を診断するため、上部消化管バリウム造影、上部消化管内視鏡、頸胸腹部CT、頸部・腹部超音波の各検査を行います。そして、毎週火曜日に行われる食道外科、消化管内科放射線治療科および放射線診断科が参加する食道カンファレンスにおいてこれらの検査結果を検討し、進行度を診断しています。このように、すべての症例に対し、複数の診療科の専門家が集まって診断を行うことで、より正確な治療方針を立てられるようにしています。

上部消化管バリウム造影

バリウムを飲み、エックス線で撮影をします。この検査では、病変の大きさと位置関係を見ることができます。

上部消化管バリウム造影

上部消化管内視鏡

病変の位置、大きさ、数を調べるだけでなく、組織を採取して確定診断を行います。特殊な染色液(ルゴール液)を用いて、小さな病変まで見つけ出します。

上部消化管内視鏡の画像

頸胸腹部CT

病変の位置、広がりや深さ、周囲臓器との関係を見ることができます。リンパ節転移や遠隔臓器転移も調べます。

頸胸腹部CTの画像

頸部・腹部超音波

頸部超音波では頸部リンパ節への転移の有無を、腹部超音波では肝臓への転移の有無を調べます。

PET

上記の検査で診断が確定されない場合のみ、放射性ブドウ糖液を用いて検査します。

進行度分類:病期

病期とは、がんの進行度を表す言葉です。病期は以下の3つの因子によって、4段階に分類されます(図8、表1、表2参照)。

  • T 因子:がんの深さ
  • N 因子:リンパ節転移
  • M 因子:遠隔リンパ節転移または臓器転移

図8:食道壁の構造とがんの深さ(T 因子)の分類

食道壁の構造とがんの深さ(T 因子)の分類の画像

がん情報サービスより転載

表1:食道がんTNM分類(UICC第7版)

表1:食道がんTNM分類(UICC第7版)の画像

表2:食道がん病期分類(UICC第7版)

表2:食道がん病期分類(UICC第7版)の画像