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研究所長ごあいさつ



研究所長写真 国立がん研究センター研究所は、その前身である旧・国立がんセンターの主要な部局の一つとして、昭和37年の設立以来、日本におけるがんの基礎研究を強力にリードしてきました。平成22年4月1日に当センターは独立行政法人へと移行し、世界最高の医療と研究の実現を目指した体制の整備や組織改革などの様々な取り組みが進められています。研究所においても、これまでの約50年の間に先人が築いて来られた幾多の歴史的な業績を礎としながらも、基礎研究者の本来の姿である挑戦的かつ独創性を重んじる精神に立脚し、患者目線に立った新たな研究への飛躍的展開が求められています。本年4月1日より当研究所の所長を拝命し、改めてその責任の重大さを真摯に受け止めると同時に、世界に冠たるがん研究所となることを目指して、私の全精力を注力したいと考えています。

 社会の高齢化に伴いがんの罹患者数は今後さらに増加し、10数年後には国民の二人に一人ががんで亡くなると言われています。がんの原因究明・本態解明に基づいた効果的な治療法や予防法の開発やがん特異的な早期診断技術の確立により、がんの罹患率及び死亡率の低減を実現する必要があります。出口を見据えた基礎研究を重点的かつ強力に推進することは言うまでもありませんが、同時に、2つの病院と研究所、そして予防・検診研究センターと研究所の連携を一層強化することにより、がんの予防から早期診断・病態診断、治療、緩和ケアまでを見据えた「効果的で患者に優しい個別化医療の実現」に資する研究成果を精力的に生みだしていくことが、新生研究所が取り組むべき喫緊の課題と考えています。

 個々の患者およびがん細胞の特性の理解に基づいた個別化医療を実現するには、詳細な患者情報と個々人及び個々のがんのゲノム等の分子情報を基盤とした、研究所(基礎)と病院(臨床)の連携によるトランスレーショナルリサーチ(TR)への精力的な取り組みが必須です。研究所で得られた成果を臨床展開することを目指すだけでなく、日常臨床から見出された問題点の解決に向けた病院と研究所との連携した取り組みを円滑に進めることが大切だと考えます。加えて、診療情報及び精緻な病理学的情報とリンクさせたバイオバンクの構築や、多層オミックス解析等を中央化させるコアファシリティー体制の整備と人員の重点配置が、TRを効率良く推進するためには必要です。また、研究所のポテンシャルをさらに高めていくためにも、有能な若手研究者の積極的登用、研究員の流動化、病院と研究所の人的な交流についてもこれまで以上に積極的に推進したいと考えています。これらの取り組みは、質の高い基礎研究や個別化した医療を実現し、世界をリードするがん研究センターとして機能するためには不可欠の研究基盤と位置付け、研究所の新たな改革の一つとして精力的に取り組んで行きます。

 研究所として、個人の独創的な発想に基づく研究の質と重要性を見極め、それらを育んでいくことは変わらず大切にすることに加え、今後は、ゲノム・エピゲノム・プロテオーム等の情報を利用した医療の実現など、組織として力を結集して集中的に取り組むべき様々な課題が我々を待ち受けています。チームとしてこれらの課題を克服し、その成果を広く世界に向けて発信できる活気に満ち溢れた魅力ある研究所とすべく、この重責を果たしていく所存ですので、皆さんのご支援を頂ければ幸いです。

平成23年4月
研究所所長 中釜 斉