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がんの早期診断、個別化治療に有用なバイオマーカーの開発



がん克服のために必要とされる「がんの早期発見」・「治療の個別化」目的として、がん検診に有用な腫瘍マーカーの開発およびがんの病態把握と治療法選択に有用なバイオマーカー(PDF:53KB)開発を行っている。

国立がん研究センター研究所創薬臨床研究分野・腫瘍プロテオミクスプロジェクトにおける、プロテオーム解析は大きく分けて下記の2つの解析方法(PDF:29KB)を用いている。

1. ダイレクトプロテオミクス(PDF:100KB)(本田チーム)
酵素消化することなしに、高分解能の質量分析機でタンパク質の質量を直接計測する方法(1)。全自動前処理ロボットと解析範囲の広いMALDI-OTOF-MS (matrix-assisted laser desorption/ionization orthogonal time-of-flight mass spectrometry)型の質量分析装置により定量再現性とスループットの高い解析を可能にしている。

2. ショットガンプロテオミクス(PDF:74KB)(尾野チーム)
タンパク質を酵素消化し、物理化学的な性状が均一なペプチドとして解析するため、網羅性が高い。国立がん研究センターでは同位体標識なしに正確な定量解析が可能なショットガンプロテオミクス手法として2DICAL(PDF:286KB)(2-Dimensional Image Converted Analysis of LCMS [Liquid chromatography and mass spectrometry])法を開発した(国際特許出願中)(2,3)。


現在進行中の研究プロジェクト

1. がん検診に有用な新しい腫瘍マーカーの開発
(厚生労働科学研究費補助金第3次対がん総合戦略研究事業
現在までに血漿・血清タンパク質のプロテオーム解析にて膵がん(4)、腎細胞がん(5)、子宮体がん(6)の診断マーカーを同定した。

第3次がん総合戦略事業「がん検診に有用な新しい腫瘍マーカーの開発」の研究班(PDF:31KB)では全国の7つの医療機関の共同研究にて膵がん、胃がん、大腸がん、肝細胞がんなどの患者様、鑑別疾患の対象となる良性疾患の方、および健常な方より血漿・血清検体を提供いただき、統計学的に十分な検体数での検証を目指して研究を行っている。

本研究班は国際がんバイオマーカーコンソーシアム(International Cancer Biomarker Consortium [ICBC])へ唯一の日本チームとして参加し、海外の研究機関と情報交換している。

2. がんの病態把握と個別化治療実現に関する研究
(独立行政法人医薬基盤研究所「医療保健分野における基礎研究推進事業」)
現在の診断法では同一のカテゴリーに分類される悪性腫瘍であっても、臨床経過や治療への反応性は症例間で大きく異なる。個別症例の違いを予測できるバイオマーカーを開発することで、治療の効果を最大限に引き出すことが可能になる。様々ながんの組織検体や血漿・血清検体を用いた大規模解析をプロテオーム及びマイクロアレイにて行い、治療奏効性・副作用の予測、再発・予後予測に有用なバイオマーカーの探索を続けている。2DICAL法を用いればホルマリン固定パラフィン切片の膨大なアーカイブが使用できるため、レーザーマイクロダイゼクションで抽出した微量検体(PDF:270KB)でも、大規模なタンパク質の定量解析可能となり(7)、がんの個性診断と個別化治療を実現するバイオマーカーの開発が今後大いに期待される。
最近、我々は、血漿検体の解析から、切除不能膵がんの標準治療薬として使用されるゲムシタビンの副作用予測マーカーを同定した(8)。ゲムシタビン単剤治療の有害事象は好中球減少症と血小板減少症であり生命を脅かす危険性さえある。ゲムシタビンによる血液毒性が治療前血中ハプトグロビン濃度と高い相関性がある(PDF:135KB)ことを見出し、それに基づく診断法を開発した(8)。ゲムシタビン治療に適さない症例を投与前に選別できるものと考えられる。一方、胃原発の消化管間質腫瘍の再発予測マーカー(PDF:38KB)として膜貫通型のセリンジペプチジルペプチダーゼDPPIV/CD26を同定した(9)。DPPIV陰性症例の98.0%は術後無再発であるのに対し、陽性例の約半数が再発し、両者の生存には明らかな有意差(P <0.00001)が見られた(9)。よって、DPPIV陰性症例は術後経過観察の緩和が可能であると考えられる 。

3. 糖鎖腫瘍マーカーの開発
(METI・NEDO委託事業 糖鎖機能活用技術開発プロジェクト)
2DICAL法の翻訳後修飾解析機能を応用し、癌における糖タンパク質の糖鎖構造変化を利用した卵巣癌や子宮体などの新規バイオマーカーを開発している。

4. 膵がんの血漿診断法の実用化に関する研究
(独立行政法人医薬基盤研究所「医療保健分野における基礎研究推進事業」)
血漿プロテオーム解析による膵がんの新規診断法(国際特許出願中)(4,10,16)を臨床検査やがん検診に実用化するために、民間企業と共同研究を行っている。


参考論文
1: Hayashida et al., Clin Cancer Res. 11:8042-7. 2005
2: Ono et al., Mol Cell Proteomics.7:1338-47, 2006
3: Ono et al., J Biol Chem, (in press)
4: Honda et al., Cancer Res, 65:10613-22, 2005
5: Hara et al., J Uro, 174:1213-7, 2005
6: Kikuchi et al., Cancer Sci, 98:822-9, 2007
7: Negishi et al., Cancer Sci, 100:1605-11, 2009.
8: Matsubara et al., JCO, 27:2261-8, 2009
9: Yamaguchi et al., JCO, 26:4100-8, 2008
10: Okusaka et al., JOP, 7:332-6, 2006
11: 本田、他 The LUNG Perspective 13:419-422, 2005
12: 本田、他 検査と技術 33:172-174, 2005
13: 本田、他 別冊医学のあゆみ 3:341-344, 2006
14: 下重、他 バイオテクノロジージャーナル, 3-4:1482-152, 2006
15: 本田、他 分子呼吸器病 10:133-135, 2006
16: 本田、他 日本臨床, 64:17445-1755, 2006
17: 本田、他 臨床と研究, 83:1270-1273, 2006
18: 山田、他 ファルマシア, 43:32-36, 2007
19: 下重、他 Annual Review呼吸器, Jan 20; 208-213, 2007
20: 尾野、他 公衆衛生, 71:100-101, 2007
21: 尾野、他 クリニカル プラクティス, 26:235-236, 2007
22: 本田、他 細胞工学別冊, Jul 5; 97-103. 2007
23. 山田、他 日本医事新報, 4329:89, 2007
24. 山田、他 細胞工学, 26:1006-1008, 2007
25. 尾野、他 実験医学増刊, 25:2714-22, 2007
26. 本田、他 実験医学増刊, 25:2732-8, 2007
27. 尾野、他 Cancer Frontier, 10:14-20, 2008
28. 原、他 西日本泌尿器科, 70:484-491, 2008
29. 尾野、他 遺伝子医学MOOK, 11:66-72, 2008
30. 佐藤、他 がんの分子標的治療, 51-61, 2008
31. 尾野、他 Surgery Frontier, 16:117-120, 2009
32. 本田、他 日本臨床, 67:180-185, 2009