1.染色体欠失の分子機序
染色体欠失は、がん抑制遺伝子の不活性化を引き起こす主要なゲノム異常である。そこで我々は、種々のがんにおけるp16がん抑制遺伝子の失活を引き起こす9p21領域のホモ欠失の切断点を解析した。その結果、欠失を引き起こす二本鎖DNA切断(DNA
double strand breaks; DSBs)の発生とそれに続くDNA再結合の分子機序が推定された。リンパ性白血病ではRAG蛋白質複合体によるrecombination-signal-sequence様配列におけるDSBの発生とVDJ組換えにより欠失は生じるが、固型がんでは、p16遺伝子座近傍の非特定部位におけるDSBの発生とDNA断端の非相同末端組換え修復によって生じると考えられた。
2.二本鎖DNA切断に感受性の高いゲノム/染色体構造
p16欠失の切断点は特定のゲノム領域に集中したとから、ヌクレオチド配列以外に二本鎖DNA切断への感受性を規定するゲノム/染色体構造が存在することが示唆された。そこで、生きたHela細胞に制限酵素MspIを導入することにより、ゲノム領域間でのin
vivoでのDSBs感受性の差異を検討した。その結果、p16、p14ARF、p15遺伝子のプロモーター領域では、MspIによる切断感受性感受性が高いことが明らかになった。また、リンパ性白血病、固形がんにおける切断点切断点集中領域はMspI感受性領域と一致した。以上より、これらの領域は、DNAヌクレアーゼを含むDNA傷害因子による攻撃に感受性の高いクロマチン構造をとることが示唆された。