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ガスダーミンファミリー遺伝子の研究



ガスダーミン(Gasdermin、Gsdm)遺伝子は皮膚に異常を示す変異マウスRim3の原因変異を研究する過程で見つかった遺伝子です(文献1)。私たちはヒトのガスダーミン遺伝子(GSDM、のちにGSDMAと再命名)の研究を行い、この遺伝子は胃粘膜上皮の表層に存在する表層粘液細胞(pit cell)で発現しているが、胃がんではその発現が抑制されていること、そして、この遺伝子が表層粘液細胞のアポトーシス誘導の制御に関わる機能を持つことを明らかにしました(文献2)。
その後、この遺伝子の相同遺伝子(進化の過程で同じ祖先遺伝子を持つ構造がよく似た遺伝子)がヒトゲノムに3つ(GSDMB, GSDMC, GSDMD)あることがわかり、これらはガスダーミンファミリー遺伝子と名づけられました(文献3)。これらのファミリー遺伝子の食道及び胃での発現部位を調べたところ、GSDMBが分裂能を持つ細胞が多く存在する領域:食道上皮の基底層(Basal cell layer)あるいは胃粘膜上皮の峡部(Isthmus)に発現するという特徴を持つ一方、GSDMAは分化し終わった成熟細胞が存在する領域:食道上皮表層の角質層(Differentiated cell layer)あるいは胃粘膜上皮の胃小窩(Pit)で発現し、また、GSDMDは分化途中の細胞が存在する領域:食道上皮の有棘層(Suprabasal cell layer)及び胃粘膜上皮の全層で発現することがわかりました(文献4)。そして、それぞれのファミリー遺伝子を培養細胞に導入して発現させ、その細胞増殖に与える影響を調べたところ、GSDMA, GSDMC, GSDMDが細胞増殖抑制能を持つのに対し GSDMBは細胞増殖抑制能をほとんど持たないことも明らかになりました。これらのことは、胃粘膜あるいは食道の上皮において、それぞれのファミリー遺伝子が細胞の分化や増殖能に対応したそれぞれ固有の機能を持つことを示唆しています。
この研究は佐々木博己ユニット長と協力して行っています。
(研究責任者:佐伯宣久)


図1 GSDMA遺伝子は胃上皮の表層粘液細胞(Pit cell)のアポトーシスの制御に関わる機能を持つ。右のパネルはその模式図で、左のパネルは顕微鏡下で採取した胃の微小組織サンプルについてRT-PCRを行った結果である。転写因子LMO1は神経芽細胞腫におけるがん遺伝子であることがわかっており、組織によって異なる機能を持つことが示唆される(文献5)。
図1 GSDMA遺伝子は胃上皮の表層粘液細胞(Pit cell)のアポトーシスの制御に関わる機能を持つ。右のパネルはその模式図で、左のパネルは顕微鏡下で採取した胃の微小組織サンプルについてRT-PCRを行った結果である。転写因子LMO1は神経芽細胞腫におけるがん遺伝子であることがわかっており、組織によって異なる機能を持つことが示唆される(文献5)。


図2 食道及び胃におけるガスダーミンファミリー遺伝子の発現様式はそれぞれのファミリー遺伝子が固有の機能を持つことを示唆している。上の2つのパネルはそれぞれ食道及び胃の上皮の構造を示しており、矢印は上皮細胞が基底層(BasalまたはBase)にある幹細胞から分化し、表層に移動することを示している。胃粘膜上皮の幹細胞はBaseに存在するが、峡部(Isthmus)には盛んに分裂している細胞が存在しターンオーバーの速いPit cellの数を絶えず補っていると考えられている。下の2つのパネルは顕微鏡下で採取した食道及び胃の微小組織サンプルについてRT-PCRを行った結果である。
図2 食道及び胃におけるガスダーミンファミリー遺伝子の発現様式はそれぞれのファミリー遺伝子が固有の機能を持つことを示唆している。上の2つのパネルはそれぞれ食道及び胃の上皮の構造を示しており、矢印は上皮細胞が基底層(BasalまたはBase)にある幹細胞から分化し、表層に移動することを示している。胃粘膜上皮の幹細胞はBaseに存在するが、峡部(Isthmus)には盛んに分裂している細胞が存在しターンオーバーの速いPit cellの数を絶えず補っていると考えられている。下の2つのパネルは顕微鏡下で採取した食道及び胃の微小組織サンプルについてRT-PCRを行った結果である。


文献
1. Saeki N, Kuwahara Y, Sasaki H, Satoh H, Shiroishi T. Gasdermin (Gsdm) localizing to mouse Chromosome 11 is predominantly expressed in upper gastrointestinal tract but significantly suppressed in human gastric cancer cells, Mamm. Genome 11, 718-724 (2000)
2. Saeki N, Sasaki H, et al. GASDERMIN, suppressed frequently in gastric cancer, is a target of LMO1 in TGF-beta-dependent apoptotic signalling. Oncogene 26, 6488-6498 (2007)
3. Saeki N, Sasaki H. Gasdermin Superfamily: a novel gene family functioning in epithelial cells. In: Endothelium and Epithelium: composition, functions and pathology (Carrasco J, Mota M. eds.), Nova Science Publishers, Inc. (in press)
4. Saeki N, Sasaki H, et al. Distinctive expression and function of four GSDM family genes (GSDMA-D) in normal and malignant upper gastrointestinal epithelium. Genes Chromosomes Cancers 48, 261-271 (2009)
5. Wang K, Saeki N, Sasaki H, et al. Integrative genomics identifies LMO1 as a neuroblastoma oncogene. Nature 469, 216-220 (2011)