9.食道がんの放射線化学療法のオーダーメイド医療へ向けて
「もう一つの遺伝子解析」である、がん細胞で起きている遺伝子の機能・構造異常の解析の分野で、ミレニアム・ゲノム・プロジェクトにより大きく推進されたのがDNAチップ(マイクロアレイ)を用いたがん組織の網羅的遺伝子発現解析です。この方法により、一度に20,000個に及ぶ遺伝子の発現の変化が、高い精度で一挙に把握できるようになりました。DNAチップを用いた研究の一例を示します。

食道がんでは手術と放射線化学療法の両方が行われていますが、放射線化学療法が良く効く症例を治療前に判別する事ができれば、全体の治療成績を格段に向上させる事ができます。放射線化学療法後、長期生存した症例15例と、早期に亡くなった11症例について約12,000個の遺伝子をDNAチップで解析したところ、178個の遺伝子の発現のパターンが両群で大きく違う事がわかりました。図で、赤はその遺伝子が強く発現していることを、緑は発現が低いこと、黒は中間であることを示しています。このようにして、がん組織における多くの遺伝子の発現パターンを調べることで、その患者さんに最適な治療、すなわちオーダーメイド医療を行う事ができるようになると期待されます。