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GIST(じすと)

1.GIST(消化管間質腫瘍)について
2.症状について
3.診断について
4.治療について

1.GIST(消化管間質腫瘍)について

GIST(ジスト:Gastrointestinal Stromal Tumor)は、胃や腸の消化管壁の粘膜下にある未熟な間葉系細胞に由来する「肉腫」の一種とされ、いわゆる「がん」とは異なります。消化管粘膜下にできる腫瘍はGISTだけとは限らず、良性の平滑筋腫、神経鞘腫や悪性の平滑筋肉腫などもあります。GISTの発症率は年間に10万人に対して1〜2人くらいとされ、まれな腫瘍です。発症には男女差がなく、胃に最も多く見られ、序で小腸、その他の消化管になります。殆どの年齢層に見られますが、中高年に好発(60歳代でピーク)します。

2.症状について

吐き気や腹痛、下血・吐血やそれに伴う貧血などが起こることがあります。他の病気でもあらわれる症状ばかりで、GIST特有の自覚できる症状は特にありません。腫瘍が大きくなってからでないと症状が出ないため、発見が遅れることがしばしばみられます。

3.診断について

CTやMRI、内視鏡などによる画像診断で大きさや転移・浸潤などを確認します。また、細胞を採取して検査し、免疫組織染色でKIT陽性あるいはDOG1陽性であればGISTと診断されます。

4.治療について

GISTあるいはGISTが強く疑われる腫瘍に対しては原則的に手術治療を行います。組織採取が難しい小さい腫瘍、無症状の場合は経過観察の方針となることもありますが、GISTと診断された場合は、現在の日本のガイドラインでは腫瘍の大きさなどに関わらず、手術による治療が勧められています。GISTが見つかった時点で主病巣以外の場所にも転移を起こしているような場合は、内科的治療(化学療法)の適応となります。化学療法の効果、経過によっては、改めて外科的切除を考慮することもあります。このような進行したGISTに対する集学的治療は未だ確立した治療とはいえず、当センターでは肉腫専門の内科医や外科医、そして放射線科医などが密接に連携をとりながら、個々の状況に応じて治療方針を検討し患者さんに提案しています。

外科治療

手術治療についてGISTは胃がんや大腸がんと比べ周囲の組織に及ぶこと(浸潤傾向)が少なく、リンパ節転移も非常にまれとされていますので、多くの場合は腫瘍の切除において切除臓器の機能温存を考慮した部分切除が行われます。さらに大きさが5cm以下の胃や小腸のGISTであれば発生場所や発育形式を考慮して、腹腔鏡下手術を行うことがあります。GISTの手術では他の肉腫の手術と同様に、以下のことが重要になります。
  1. 偽被膜の損傷を起こさない安全なマージンを確保し肉眼的切除断端陰性を得ること
  2. 臓器機能温存を考慮した部分切除を推奨
  3. 予防的もしくは系統的リンパ節郭清は不要
  4. 術前のイマチニブ(分子標的薬)治療を行う場合は組織学的にGISTであることを確認後に治療を行い、1カ月前後での早期にイマチニブ有効性の確認が必要
手術後に病理組織検査結果より再発しやすさに応じた分類を行います。完全切除した後の推定再発率でGISTを分類したものがリスク分類です。肉眼的完全切除が行われたあとも高リスクと判定された場合は、再発予防目的にイマチニブ治療を行います。状況に応じて中間リスクの方にも再発予防目的に治療を行う場合もあります。

内科治療

GISTの成因としてc-kit遺伝子異常が発見され、臨床には異常なKITチロシンキナーゼ(c-kit遺伝子からできるタンパク質)を阻害するイマチニブが導入され、非常に高い治療効果を示しました。その後、イマチニブが効かない場合には、スニチニブが、スニチニブが効かないGISTにはレゴラフェニブが導入され、 GIST治療は近年大きく変わってきました。従来、長期生存がのぞめなかった疾患ですが、これらの薬剤の開発により、半数を超える方が5年を超える延命が可能となっています。希少な疾患であることもあり、エビデンスは少ない中で治療は行われます。従って、「GIST診療ガイドライン」に基づいた標準治療の実施が基本です。最も重要なことは、現状の内科治療では再発や転移したGISTを完全に治すこと(根治)は難しく、効果がある薬剤を、副作用をうまくコントロールしながらできるだけ休まず内服し、可能な限り長く効かせて治療を継続することが重要になります。これらの分子標的治療薬の副作用は、血液毒性、消化器毒性・肝毒性など従来の抗がん剤でしばしばみられる副作用とは異なり、皮膚毒性、循環器毒性、内分泌・代謝に関わる毒性など多岐にわたります。そのため、いろいろな職種の医療従事者から構成されるチーム医療体制が重要であるものの、経験の多い専門機関が少ないのが現状です。

最近では、これらの分子標的治療薬の効果とGISTの遺伝子異常との関係が明らかにされ、遺伝子診断に基づいた個別化医療もGIST治療では行われるようになっています。さらに、ガイドラインで記載されているように、イマチニブやスニチニブ、レゴラフェニブの効果がなくなった場合には、新薬の臨床試験への参加が“標準治療”として記載されています。従って、GISTの薬物治療は、イマチニブ、スニチニブ、レゴラフェニブ、新薬治験が標準治療とも考えられます。当センターは、GISTの新薬投与実績は、国内はもちろんアジアでもトップ施設になっていて海外の最新情報も集まっています。最先端の医療の提供が可能であり、セカンドオピニオンを含め当センターでの診療をお勧めします。

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中央病院・東病院のGIST診療に携わる医師のカンファレンス風景
中央病院・東病院のGIST診療に携わる医師のカンファレンス風景

土井 俊彦 希少がんセンター 成人の化学療法・新規薬剤開発担当 土井 俊彦(どい としひこ)
先端医療開発センター 新薬臨床開発分野(柏キャンパス)ncc管轄サイトへのリンク
国立がん研究センター東病院 先端医療科、消化管内科
後藤田 直人 希少がんセンター 腹部の手術担当 後藤田 直人(ごとうだ なおと)
国立がん研究センター東病院
肝胆膵外科
内藤 陽一 希少がんセンター 成人の化学療法・新規薬剤開発担当 内藤 陽一(ないとう よういち)
先端医療開発センター 新薬臨床開発分野(柏キャンパス)ncc管轄サイトへのリンク
国立がん研究センター東病院 先端医療科、乳腺・腫瘍内科
西田 俊朗 国立がん研究センター中央病院 西田 俊朗(にしだ としろう)
胃外科