悪性腹膜中皮腫 << 国立がん研究センター

悪性腹膜中皮腫(あくせいふくまくちゅうひしゅ)

1.悪性腹膜中皮腫について
2.症状について
3.診断について
4.治療について

1.悪性腹膜中皮腫について

悪性腹膜中皮腫は、中皮細胞ががん(悪性腫瘍)になった病気です。中皮細胞は胸膜、心のう膜などと共に、腹膜を作っている細胞です。腹膜は、おなかの内側(腹腔)をおおっています。ただし、同じように腹膜から発生するがんである、腹膜がんとは別の疾患です。2014年9月に報告されている厚生労働省の人口動態統計に基づく中皮腫がん情報サービスへのリンクによる死亡数の年次推移(平成7年〜25年)によると、2013年の中皮腫による死亡総数は1,410人であり、1995年の死亡総数500人と比較して3倍弱に年々増加しています。悪性腹膜中皮腫の発症原因の一つとしてアスベスト(石綿)が知られています。暴露後40年前後の潜伏期間を経て発症することが報告されており、1970〜80年代からアスベストが使われていた過去の経過を踏まえて、日本においては2020年代後半が発症のピークと考えられています。これらの悪性中皮腫の患者のうち、8割程度が悪性胸膜中皮腫、2割弱が悪性腹膜中皮腫、残りがその他発症となっています。

2.症状について

悪性腹膜中皮腫は検診が確立していません。また、腹腔内の病気であるため、早期では症状が出ない、という特徴があります。進行すると腹水貯留による腹部膨満感(お腹が張った感じ)、腹痛、腰痛、食欲低下、排便の異常、腹部のしこりなどお腹の症状を感じます。

3.診断について

悪性腹膜中皮腫は、採血や画像検査では確定診断にならず、組織をとる(生検する)ことでの確定診断が必要となります。ただし、採血や画像検査は疾患を鑑別するためには重要な検査となります。特に、同じように腹膜病変を起こすことが多い、消化器がん(胃がんがん情報サービスへのリンク大腸がんがん情報サービスへのリンクなど)や腹膜がんを除外するために、内視鏡検査や婦人科の診察を行うことも重要です。採血では、CA125値やCA15-3などが高いことが多いです。腹部超音波での腹水や腹膜の肥厚も参考となります。CT検査では、腹水や腹膜の結節や肥厚などが分かることがあります。腹水検査や腹水細胞診も診断の助けにはなりますが、はっきり中皮腫を疑う腹水検査所見を示すのは5割程度といわれており、診断に確定的な検査とはいえません。診断のための組織生検は、腹腔鏡や開腹して生検を行うのが通常ですが、もし超音波ガイド下に病変が疑われる部分を安全に生検出来た場合も、9割程度で正確に診断が可能だったという報告もあります。生検結果を元に病理組織検査を行った場合、上皮型、肉腫型、さらにそれらが入り混じった二相型の3タイプに分かれ、特に上皮型で、経過や治療反応性が良好であることが分かっています。特に職業関連でアスベスト暴露があった場合、悪性中皮腫との関連が強い場合には労災認定の可能性があります。

4.治療について

悪性腹膜中皮腫は根治が難しい疾患であり、手術や放射線などの治療の効果は限定的とされています。薬物療法として、化学療法 (抗がん剤治療)が治療の主軸のひとつとなっています。悪性腹膜中皮腫に限った治療の研究は多くなく、人数の多い悪性胸膜中皮腫の研究結果に基づいて治療が行われることが多いです。悪性腹膜中皮腫に限って承認されている抗がん剤はありませんが、悪性胸膜中皮腫に承認されているペメトレキセドや、シスプラチンなどの併用化学療法が使用されることが多いです。

近年、欧米で上皮型や播種病変が限局している場合に、腫瘍減量手術と腹腔内化学療法、温熱化学療法の併用で治療効果が高いことも報告されていますが、現時点で化学療法単独と比較してどちらが優れているかは分からないこと、治療法が複雑なためどの施設でも行っている治療ではないなどの点は注意が必要です。


執筆協力者
米盛 勧 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 米盛 勧(よねもり かん)
国立がん研究センター中央病院
乳腺・腫瘍内科 先端医療科
野口 瑛美誠 希少がんセンター 成人の薬物療法担当 野口 瑛美(のぐち えみ)
国立がん研究センター中央病院
乳腺・腫瘍内科