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悪性リンパ腫(あくせいりんぱしゅ)

更新日 : 2023年10月10日

公開日:2014年4月28日

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お知らせ

第16回 皮膚リンパ腫 国立がん研究センター×国際医療福祉大学 「オンライン 希少がん Meet the Expert」

(収録日:2023年5月26日)

「オンライン 希少がん Meet the Expert」【第16回 皮膚リンパ腫 国立がん研究センター×国際医療福祉大学】を一部動画公開しました。

はじめに

悪性リンパ腫は、年間10万人あたり30人程度の発生と報告されており、日本の成人では最も頻度の高い血液腫瘍です。一言で「悪性リンパ腫」と言っても様々な疾患単位が含まれており、頻度の高いタイプから非常にまれなタイプまで多岐にわたります。悪性リンパ腫は、血液中の「リンパ球」ががん化した疾患であり、主にリンパ節、脾臓および扁桃腺などのリンパ組織に発生しますが、胃、腸管、甲状腺、肺、肝臓、皮膚、骨髄および脳など、リンパ組織以外の臓器にも発生します。発生した部位により症状および診断の契機が異なります。正確な診断に基づき適切な治療を行うことで、少なくとも一部の病型は根治できる可能性があります。

悪性リンパ腫の診断と分類

悪性リンパ腫の確定診断は、外科切除や生検により採取された腫瘍の一部を用いた病理組織診断に基づきます。臨床的に悪性リンパ腫が強く疑われる状況でも、一回の生検では確定診断に至らず、再度生検が必要な場合があります。悪性リンパ腫は、病理組織学的に50種類以上に分類されますが、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大別されます。非ホジキンリンパ腫は、B細胞性とT/NK細胞性の二つに分類され、更に細かい病理組織型に分けられます(がん情報サービス<悪性リンパ腫>(がん情報サービスへリンクします。))。非ホジキンリンパ腫においては、病理組織分類に加えて、病状の進行速度によって三つの悪性度に分類されます(がん情報サービス<悪性リンパ腫>(がん情報サービスへリンクします。))。この分類は、診断後無治療の場合に予測される進行速度に基づいています。非常にゆっくり進行することが予想されるため、病変が小さくリンパ腫による症候をおこしていなければ慎重な経過観察が可能な低悪性度のものから、急激に進行するため、早急な治療開始が必要な高悪性度のものまで様々です。悪性リンパ腫診療において、正確な病理組織診断と悪性度分類が、適切な治療方針を決定する上で重要です。

悪性リンパ腫の治療

悪性リンパ腫の治療は、化学療法と放射線治療が中心です。患者さんの全身状態、病理組織診断、悪性度および臨床病期(ステージ)に基づいて治療方針を決定します。

病期I期およびII期の限局期においては、化学療法と放射線照射の併用療法を病変部位への放射線照射を化学療法の後に追加が可能であれば実施します。ホジキンリンパ腫に対する化学療法は、ドキソルビシン・ブレオマイシン・ビンブラスチン・ダカルバジン併用療法(ABVD療法)が現在の標準的治療法です。B細胞性非ホジキンリンパ腫に対する治療法は、病理組織型および悪性度に基づき決定します。最も頻度の高い病理組織型である、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に対しては、シクロフォスファミド・ドキソルビシン・ビンクリスチン・プレドニゾロン併用療法(CHOP療法)と抗CD20モノクローナル抗体であるリツキシマブを併用するR-CHOP療法が標準的治療法と位置づけられています。二番目に頻度の高い濾胞性リンパ腫は、一般的に年の単位で緩徐に進行する低悪性度B細胞リンパ腫に位置づけられています。濾胞性リンパ腫は、緩徐に進行するため自覚症状が乏しい場合も多いですが、難治性であり、治療に関しては

  1. 慎重な経過観察
  2. リツキシマブ単剤療法および
  3. リツキシマブ併用化学療法

の三つが主な選択肢です。腫瘍量を判断指標のひとつとして、患者さんと相談した上で治療方針を決定します。マントル細胞リンパ腫やバーキットリンパ腫のような中高悪性度B細胞非ホジキンリンパ腫に対しては、年齢および臓器機能から実施可能(強い副作用に耐えられる)と判断されれば、強力多剤併用化学療法を考慮します。一方でT細胞性非ホジキンリンパ腫に対してはCHOP療法が標準的治療法と考えられていますが、一般に治療効果はB細胞性非ホジキンリンパ腫と比較して不良です。そこで治療効果を高めることを目的とした造血幹細胞移植などの強力多剤併用化学療法を目指した治療を計画する場合もあります。また一部の病理組織型においては、それらに特化した標準的治療法が確立しています。本邦において発生頻度の高い成人T細胞白血病リンパ腫に対しては、年齢および臓器機能から実施可能と判断されれば、同種造血幹細胞移植を目指して多剤併用化学療法を実施します。限局期の節外性NK/T細胞リンパ腫、鼻型に対しては、同時化学放射線療法が標準的治療法に位置づけられています。

悪性リンパ腫治療風景写真

悪性リンパ腫の治療後の問題点

悪性リンパ腫治療後の問題点として、二次がん(白血病など別の血液腫瘍を含む)、不妊、心臓や肺を含む臓器障害、糖尿病などの生活習慣病、骨粗鬆症などの晩期合併症が知られています。治療終了後も医師の勧める期間定期的な受診を受けることと、職場や地域の検診等を積極的に受診することをおすすめします。

 希少がんリーフレット

悪性リンパ腫

啓発ポスター 

「リンパ腫啓発月間ポスター」を患者会支援団体の皆さんとの連携・協働を通して作成しました。

2023年9月

2023年9月 リンパ腫啓発月間

2022年9月

2022年9月 リンパ腫啓発月間

2021年9月

2022年9月 リンパ腫啓発月間

2020年9月

20210317_9月_悪性リンパ腫

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執筆協力者

棟方 理
  • 棟方 理(むなかた わたる)
  • 希少がんセンター
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 血液腫瘍科
伊豆津 宏二
  • 伊豆津 宏二(いづづ こうじ)
  • 希少がんセンター
  • 国立がん研究センター
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