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小児の肉腫

小児の肉腫について

小児期に発生する肉腫は骨肉腫に代表される骨腫瘍と横紋筋肉腫に代表される軟部腫瘍に大別されます。頻度は骨腫瘍の中では骨肉腫が最も多く、ユーイング肉腫がその次です。軟部腫瘍では横紋筋肉腫が最も多いといわれています。

骨肉腫

骨肉腫は成長期である10歳代の四肢、特に膝関節周辺に好発する悪性腫瘍です。日本における年間発症数は約70人と推測されています。原因は不明ですが、成長期である10歳代に最も多く全体の60%を占めることから、骨成長の速さと骨肉腫の発症の関連性が提唱されています。発症部位は約70%が膝関節周囲で大腿骨遠位端、脛骨近位骨幹端、次に10%が上腕骨近位骨幹端です。

症状は進行性の疼痛と患部の主張が特徴です。骨肉腫に対する治療は最初に抗がん剤を使って術前化学療法を行い、その後腫瘍切除術、術後に再度化学療法を行います。全体の治療期間は10カ月から1年位です。1970年代以降メソトレキセート大量療法(HD-MTX)、アドリアマイシン(ADR)とシスプラチン(CDDP)、イフォスファミド(IFO)の有効性が欧米で行われた臨床試験で次々に示され、現在ではこの4剤が骨肉腫に対する化学療法に標準的に用いられる薬剤となっています。わが国では多施設共同試験(NECO95-J)が行われ、その結果は欧米からの最新の報告と比較しても遜色ないものであり、現時点でわが国における標準治療と位置づけてよいと考えられています。具体的には術前化学療法としてHD-MTXとADR、CDDPを組み合わせたMAP療法を行い、その後腫瘍摘出術を行います。摘出標本の腫瘍の壊死率により術前化学療法の有効例にはそのままMAP療法で継続し、無効例にはMAP療法にIFOを加えた4剤で治療を行います。

現在は術前化学療法の効果が不十分であったstandard response症例に対して術後化学療法にIFOを追加することが予後を改善するかについての臨床試験が進行中です(JCOG0905)。初診時転移例に対する治療法は確立されたものはなく、依然として予後不良です。治療は施設の方針に沿って行われていますが、基本骨格は限局例と同様に化学療法を行い、原発巣も転移巣も含めできる限り切除する方法がとられています。最初に診断されたときに他の部位に転移がなければ適切な治療により約70%の患者さんが治癒やします。

ユーイング肉腫ファミリー腫瘍

ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)には骨ユーイング肉腫、骨外性ユーイング肉腫、未熟神経外胚葉腫瘍(primitive neuroectodarmal tumor: PNET)、胸壁に発症するAskin腫瘍などEWS-FLI1などの共通の染色体転座を有する疾患群が含まれます。ESFTの発症年齢は全年齢にわたりますが、約半数は思春期に発症します。日本での年間発症数は約50人と推測されています。骨ユーイング肉腫の発症部位は約50%が四肢で、次いで骨盤、肋骨に発症することもあります。一方骨外性ユーイング肉腫は体幹、四肢遠位部などに好発します。

症状は骨肉腫と同様に局所の腫脹または間歇(かんけつ)的な疼痛ですが、ほとんどのESFT患者の発症年齢は10代であるため、はじめ成長痛と間違えられることが多く注意が必要です。治療の流れは術前化学療法で腫瘍縮小をはかり、手術、放射線などの局所治療、その後、術後化学療法を行います。米国で行われた第3相試験の結果、現時点における現局性ESFTに対する標準的な治療はビンクリスチン(VCR)、ドキソルビシン/アドリアマイシン(DXR/ADR)、サイクロフォスファミド(CPA)の3剤で構成されるVDC療法、イフォスファミド(IFO)、エトポシド(VP-16)で構成されるIE療法を交代で行う、VDC-IE交代療法です。

わが国でも2003年にJapan Ewing Sarcoma Study Group(JESS)が設立され、米国で行われた第3相試験の結果に基づいて現局性ESFTに対する第2相多施設共同臨床試験を行いました。具体的には、VDC療法とIE療法を術前化学療法として交代で5コース行い、その後外科手術または放射線治療などの局所療法を行います。局所療法としては、外科切除可能症例は外科手術、術前化学療法終了時、腫瘍サイズ、部位、機能を著しく損なう場合など、外科切除不可能症例は放射線治療を選択します。放射線治療後外科切除可能となれば手術を行います。術後(局所療法後)化学療法はVDC-IE交代療法を12コース(術前含めて全17コース)行います。12コース目からはADRは使用せず、VCのみとします。治療の期間は約1年間です。

一方、転移例に対する治療成績は依然として不良で、未だ有効な治療法は確立されていません。VDC-IE療法にても予後の改善は望めていないのが現状です。busulfan、melphalan、VP-16等を使用した大量化学療法を併用した自家幹細胞移植にて予後の改善が期待できるという海外からの報告もありますが、ランダム化比較試験は行われていないため、大量化学療法の真の効果ははっきりしていません。わが国では転移性ESFTの治療は各々の施設の方針に沿って行われているというのが現状です。

最初に診断されたときに他の部位に転移がなければ適切な治療により約70%の患者さんが治癒やします。

横紋筋肉腫

横紋筋肉腫(RMS)は未分化な間葉系細胞(骨格筋の前駆細胞)から発生する軟部腫瘍で、四肢をはじめ全身のいたるところから発生します。日本での年間発症数は約60人と推測されています。組織学的にその細胞配列から胎児型(embryonal type)、胞巣型(alveolar type)、それに多形型(pleomorphic type)の3亜型に分類されています。それぞれの型によって発生部位、生物学的特性、予後は大きく違います。

治療法は現在のところどの型でも共通で、最初に手術で切除可能であれば切除後に抗がん剤治療を行います。大きさや場所により最初に切除できない場合は抗がん剤治療を数コース行い、腫瘍縮小をはかり、手術、放射線などの局所療法の後、術後化学療法を行います。横紋筋肉腫に有効な抗がん剤はVCR、アクチノマイシンD (Act-D)、CPA、 IFO、VP-16です。欧米で開発され、現在わが国でも行われている標準レジメンではVCR、Act-D、CPMの3剤を併用したVAC療法を17コース行っています。再発リスクの低い群(低リスク群の一部)にはCPAを用いないVA療法を用いています。また、転移のある場合はVAC療法による治療成績では満足のいくものではなく、米国ではイリノテカン、トポテカンなどの新薬を組み合わせた臨床試験が行われていますが、現在のところ予後の改善はみられていないのが現状です。治療の期間は約1年間です。

  • 胎児型:小児期のRMSで最も多くみられます。約半数が眼窩や眼瞼、咽頭、鼻腔、副鼻腔、耳周辺などの頭頚部に、次いで約30%が膀胱、前立腺などの泌尿生殖器系に発生します。予後は胞巣型に比べて良好です。
  • 胞巣型:小型で類円型の腫瘍細胞が胞巣状に増殖していることよりこの名前がついています。胎児型に比べて高年齢の10から20歳に多く発症します。四肢発症が多いことが知られていて、次いで傍脊椎、会陰部に発症します。90%以上で相互転座による、転写調節因子のPAX遺伝子異常(PAX3-FKHR、PAX7-FKHR)が認められ、その診断にも活用されています。
  • 多形型:成人、なかでも50歳代の男性に多いことが知られていて、小児では非常にまれです。

症状について

骨肉腫およびユーイング肉腫ファミリー腫瘍については、発症部位の疼痛があげられますが、成長痛と判断されることもあるため注意が必要です。横紋筋肉腫は腫瘍が大きくなることで、その周辺の神経などを圧迫し、発症部位により異なる症状があらわれます。また腫瘍の肥大による見える部分の腫れでも病気に気が付くことがあります。発熱や体重減少などの全身症状はまれです。

診断について

X線やCT、MRIなどで画像診断を行い、どこにどれくらいの大きさの腫瘍があるかを確認します。これに加え、生検により腫瘍細胞の種類を鑑別します。適切な治療を行うためには正確な診断が必要であるため、経験の多い医療機関を受診することが望まれます。

治療について

成人に発生する肉腫に比べて抗がん剤や放射線がよく効く種類の肉腫が多く、適切な治療の選択が大切です。外科手術や放射線治療、化学療法を組み合わせて治療を行います。

小児がん情報サービス(がん情報サービスへリンクします。)

細野 亜古
  • 希少がんセンター 小児・成人の化学療法担当 細野 亜古(ほその あこ)
  • 国立がん研究センター東病院
  • 小児腫瘍科・乳腺・腫瘍内科