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皮膚腫瘍

皮膚がん(腫瘍)について

皮膚は(1)表皮(2)真皮(3)皮下組織(4)皮膚付属器に分けることができます。そしてそれらをつくっている細胞であればどの細胞から生まれるがんもすべて皮膚がんと呼ばれます。このため、皮膚がんといってもその種類は非常に多いということがいえます。

ところが、このたくさんの種類の皮膚がんの患者数すべてを足しても皮膚がんの患者数は少なく、日本人がかかるがんのうち、皮膚がんの患者数は上位10位にも入りません。

また、皮膚がんには人種によるかかりやすさの差があり、白人では日光(紫外線)によくあたる部位には悪性黒色腫、有棘(ゆうきょく)細胞がん、基底細胞がんという3大皮膚がんと呼ばれるものができやすく、決して少ないがんではありません。

このため皮膚がんは希少がんであるといっても、日本人にとっては希少がんであるという皮膚がんと、人種に関わらず世界中みても希少がんという、2つの側面をもっています。

以下に主な皮膚がんの系統別分類を示します。

  • 上皮系
    基底細胞がん
    有棘細胞がん
    乳房外パジェット病
    メルケル細胞がん
    汗腺がん
    脂腺がん
    毛包がん
  • 悪性黒色腫
  • 間葉系
    隆起性皮膚線維肉腫
    血管肉腫
    その他の肉腫(類上皮肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、未分化多形細胞肉腫など)

上皮系細胞由来の皮膚がん

この中で基底細胞がんは日本人の皮膚がんの中で最も多いもので希少がんには含まれません。

有棘細胞がん

誘因や発生母地がいくつも知られている皮膚がんです。古くは広い範囲のやけどのあとから発生するものや放射線照射後の慢性皮膚炎から発生するものが多かったのですが、近年は紫外線の影響を受けた頭皮、顔面の皮膚に発生するものが増えています。これらの部位に治りにくいびらんや潰瘍、紅色の結節で出血しやすいもの、硬い角化性結節などが出現したら有棘細胞がんを疑います。皮膚表面にできますので気が付きやすく、早めに専門医を受診して診断がつけば90%は手術だけで治癒が期待できます。ただし、手術以外の方法の有効性があまりわかっていないこと、新しい抗がん剤の開発が遅れており、手術できない場合やがんが再発、転移して広がっている場合に治療できる病院は限られています。

乳房外パジェット病

アポクリン汗腺というにおいのする汗をつくって出す部位の細胞が変化して発生すると考えられています。「がん」という名前がついていませんが、がんの一種で、典型的な場合、外陰部や肛門の周りにできて何年もの長い間、表皮の中という浅い部分で大きく広がります。真皮に浸潤すると転移する力をもちますが、リンパ節転移を起こした場合の手術方法の確立が遅れていることや、リンパ節転移が多発したり、内臓転移を起こしたりした場合の抗がん薬による治療方法の開発がほとんどされていないため、このように進行した場合の治療経験のある病院が有棘細胞がん以上に限られています。乳房外パジェット病は70から80歳代の高齢の患者さんの多い病気です。そして60歳代以下の若い人に発症する場合、高齢者に比べ真皮に浸潤する時期が早く、リンパ節転移を起こしやすいことが考えられ、注意が必要です。

メルケル細胞がん

メルケル細胞という名前の細胞ががん化してできます。高齢者の頭部や顔面にできることが多く、このがんも紫外線との関連が指摘されています。最近はウイルスによる発がんの可能性も考えられています。外科手術の際、原発巣は腫瘍の大きさより2センチメートル以上の余裕をもって切除することが望ましいとされています。リンパ節へ転移しやすいため、原発巣の手術を行うときはリンパ節が腫れていなくてもセンチネルリンパ節と呼ばれるがんの転移が最初に起こるリンパ節を見つけ、病理組織検査することが推奨されています。放射線治療もよく効きます。メルケル細胞がんは希少がんであるため薬物療法の開発が遅れていますが、肺の小細胞がんによく似た形をしており、薬物療法もこのがんの治療を参考にして行います。

汗腺がん、脂腺がん、毛包がん

上皮細胞由来の希少がんの中でもさらにまれながんです。手術方法は悪性度によって有棘細胞がんや基底細胞がんの切除範囲に準じて決められます。原発巣が手術できない場合や限られた転移巣に対しては、放射線治療が行われます。患者さんの数が非常に少ないため、手術で切り取るのが最も確実にがんを取り除く方法であり、がん化学療法は、上記3種類の皮膚がんよりさらに有効な薬剤についての情報がなく、治療法の選択が難しくなります。

皮膚腫瘍診療風景写真

悪性黒色腫

悪性黒色腫は、表皮の中にある色素細胞(メラニン細胞)ががん化したもので、皮膚がんの中では「神経外胚葉系細胞由来」のものという分類がされています。そして、他の希少がんとは少し異なった特徴をもっています。悪性黒色腫はオーストラリアやハワイなど紫外線の強い地域に住む白人には、日本人の何十倍もの頻度で発生します。そして同じように悪性黒色腫でもタイプ(病型)が違っています。この点で悪性黒色腫は日本人にとっては希少がんということになります。また、悪性黒色腫は色素細胞(メラニン細胞)が存在する部位であれば皮膚でなくても、全身どこにでも発生します。口腔や鼻腔、食道、外陰部、直腸・肛門といった粘膜と呼ばれるところや、眼(ぶどう膜)などの部位にできる悪性黒色腫は人種を問わず、まれです。

皮膚の悪性黒色腫

日本人には少ないのですが、人種差があって白人には多いがんなので、手術方法は海外で確立されたものと同様のものや、さらに日本人特有のきめ細かさを加えた諸外国以上の方法で治療可能です。

放射線治療はあまり効かないことが知られています。ただし、脳転移に対する定位放射線治療(ガンマナイフやサイバーナイフなど)は効果的で、通常の放射線治療に比べて予後が半年以上延長するようになりました。骨転移に対して痛みを軽くする効果も、他のいろいろながんと同じくらいの効果があります。

薬物療法については40年近く進歩がありませんでしたが、2011年以来、海外では続々と新薬の開発がなされています。ところが日本には対象となる患者さんが白人に比べて少ないと考えられていたために、これらの新薬の開発や発売が後回しにされてきました。

このように海外では使える薬剤があるのに日本の患者さんには使えない、手に入らない状態をドラッグラグといいます。われわれ日本の専門家は、このドラッグラグを解消するためさまざまな努力を行い、国際共同で行う新薬開発に何度か参加することで、日本にも新薬が使えるようになることを待っている患者さんが大勢いることを証明しました。2014年はドラッグラグ解消の第一歩となる画期的な変化の年となります。

粘膜や眼の悪性黒色腫

1つ1つの臓器に発生する悪性黒色腫の数が少なく、多くの診療科にまたがって診療を行ったり、情報の共有をする必要があり、また手術方法、放射線治療、薬物療法すべてについて、熟知している専門家が限られています。このため、これらは皮膚腫瘍ではありませんが、われわれ皮膚腫瘍科医が十分に協力して診療を行う必要のある病気です。

ダーモスコピーを使って悪性黒色腫(メラノーマ)の診察中画像
ダーモスコピーを使って悪性黒色腫(メラノーマ)の診察中

間葉系

隆起性皮膚線維肉腫

皮膚の真皮を構成する線維細胞の中から発生することが多い肉腫です。転移する力は元来弱いので、原発巣の初回手術で23センチメートルから3センチメートルの余裕をもって切除して治してしまうことは大切ですが、切除の大きさよりも十分な深さで切除してしまうことがもっと重要です。再発を繰り返すと、みえないがん細胞がばらばらに散らばったり、もともとの細胞の性質が変化して悪性度が増したりする傾向があり、注意が必要です。

血管肉腫

発生頻度は代表的な皮膚がんである悪性黒色腫の1/10以下ですが、悪性度の高いことで有名な悪性黒色腫よりも治りにくいやっかいな腫瘍です。高齢の方の頭皮や顔面に、外傷をきっかけにできることが多いほか、乳がん、子宮がんなどの手術後の腕や足の浮腫が続く部位や、がん治療のために行った放射線照射部位の皮膚にできることがあります。赤紫色の内出血やあざのようにみえるものから始まりますが、正確な範囲がわかりにくく、効果的な手術方法が定まっていないため、手術だけで治すことは困難です。

ただ、放射線治療も抗がん剤もよく効くことがわかってきており、ある程度の長期間、これらさまざまな種類の治療を組み合わせて行うことで、治療成績の向上が期待されています。

その他の肉腫(類上皮肉腫、平滑筋肉腫、脂肪肉腫、未分化多形細胞肉腫など)

まれな肉腫の中でも、さらに少ない腫瘍です。皮膚表面からのめだち方や見つけられ方によって、患者さんは皮膚科に紹介されたり、整形外科に紹介されたりすることが多く、この時点でもこれらの腫瘍についての情報がばらついてしまいますので、専門病院でのより綿密な診療連携体制が必要です。

皮膚腫瘍風景写真

山崎 直也
  • 希少がんセンター 皮膚腫瘍担当 山崎 直也(やまざき なおや)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 皮膚腫瘍科
堤田 新
  • 希少がんセンター 皮膚腫瘍担当 堤田 新(つつみだ あらた)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 皮膚腫瘍科
高橋 聡
  • 希少がんセンター 皮膚腫瘍担当 高橋 聡(たかはし あきら)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 皮膚腫瘍科
並川 健二郎
  • 希少がんセンター 皮膚腫瘍担当 並川 健二郎(なみかわ けんじろう)
  • 国立がん研究センター中央病院
  • 皮膚腫瘍科