コンテンツにジャンプ
希少がんセンター

トップページ > さまざまな希少がんの解説 > 胸腺腫・胸腺がん

胸腺腫・胸腺がん

胸腺について

胸腺は、胸部の中央の前(腹)側に位置します。より具体的に説明します。胸部の左右の肺の間に挟まれる部分を縦隔と呼びます。胸腺は縦隔の上(上縦隔)かつ前(前縦隔)の方で、胸骨の裏側にあります。

大きさは成長とともに変化します。誕生時には10グラムから15グラム、思春期には最大の30グラムから40グラムになります、その後は徐々に小さくなり、成人以後は、脂肪の一部のようにみえます。

胸腺は免疫と関係のある役割を担っています。血液中には免疫を担当する細胞が何種類もありますが、胸腺と関わりがあるのは主にT細胞(胸腺のthymusから”T”が命名されています)です。一般に、骨の中(骨髄)で作られたリンパ球が、成熟したT細胞に変化していく際に重要な役割を果たします。免疫細胞の重要な機能として、自分の細胞を、間違えて外部の細胞と認識して攻撃することがないようにするものがあります(自己寛容と呼ばれます)。胸腺はT細胞にこの機能を与えます。

疫学について

胸腺がん・胸腺腫は30歳以上(とくに40歳から70歳)に発症します。男女差はありません。胸腺腫は人口10万人あたり0.44から0.68人が罹患すると言われており、まれな疾患です。胸腺がんはさらにまれと言われています。

症状について

胸腺腫・胸腺がんは周囲の組織に直接影響を与えるほど大きくならない限りは無症状です。50%の患者さんで症状がない状況で見つかるとも言われています。一般的には、無症状の患者さんは良性、有症状の患者では悪性のことが多いのですが、例外も多いことには気をつける必要があります。

悪性の場合には症状が出やすいのは、腫瘍が周りの臓器に入り込む(浸潤)しやすいからです。良性の場合は押し込む(圧迫)事がない限りは症状がでません。具体的には、咳、胸痛、呼吸困難などがあります。また血液の流れを止めるような部分にできてときには、狭窄症状が出現します。

その他、腫瘍が出している物質によって症状が出ることがあります(腫瘍随伴症候群と呼びます)。重症筋無力症、低ガンマグロブリン血症、多発筋炎などがあり、これらの症状から見つかることもしばしばあります(その場合は悪性度とは関係ありません)。

診断について

ガンマ画像検査としては、胸部レントゲン、CT、MRI、FDG-PETなどがあります。同じ場所にできる腫瘍は何種類かあるので、種別を同定する検査が必須です。具体的には、皮膚を通して針で腫瘍をとったり、手術で塊としてとったりします。この検体を顕微鏡でみて(病理検査)、胸腺腫(タイプが複数あります)、胸腺がんなどと診断をします。ガンマ画像検査は病気の広がりを確認することにも用います。一般に、胸腺腫や胸腺がんは胸郭(胸のなか)にとどまることが多い(とくに胸腺腫)です。この場合も、胸腔内での播種(胸腔などの同じ空間でがん細胞が拡がること)は高頻度にみられます。胸腺がんでは、他臓器などへの転移や直接浸潤も比較的多くみられます。

診療風景

治療について

ガンマ他のがんと同じように、病気の広がり(病期)に応じて治療をします(表2)。肺がんのように、患者さんの数が多くないので、研究が十分にされていません。そのため、治療法が確立しておらず、多くの施設が、それぞれの経験を加味して治療法を決定しています。

胸腺腫

ガンマ胸腺がんと比べて、進行が遅く、周囲の臓器への影響が出にくいです。早期に見つかり、手術治療を受ける機会も多いです。胸郭内に複数個あり、完治できない(すべてを完全には除去できない)場合にも、可能な限り手術や放射線治療をして腫瘍を小さくするなどがよいと考えられています。腫瘍を縮小させるために抗がん剤治療をすることもありますが、抗がん剤で完治することはありません。胸腺腫は転移などによって致死的になることが比較的少ないかわりに、腫瘍随伴症候群のコントロールにステロイドなどを使う必要があり、その合併症が問題になることも多いです。

胸腺がん

ガンマ胸腺腫よりもデータが少ないですが、可能な場合は手術や放射線治療をします。全身に拡がる、放射線や手術ができない場合には、肺がんに応じた抗がん剤が比較的有効とされています。

図1

図1 胸腺の位置と周辺臓器(正面)

図1 胸腺の位置と周辺臓器(側面)

病理分類(WHO)

  • A:Medullary thymoma
    紡錘形/卵円型の細胞で、核異型を認めない
  • AB:Mixed thymoma
    AとBの混合型
  • B1:Predominantly cortical thymoma
    密なリンパ球浸潤を伴う
  • B2:Cortical thymoma
    腫瘍上皮に明瞭な核小体が認められる
  • B3:Well-differentiated thymic carcinoma
    多角形の上皮がシート状に配列し、リンパ球の浸潤は少ない
  • C:Thymic carcinoma
    胸腺がん

病期分類(正岡)

  • Stage I
    肉眼的・組織学的にも被包化されているもの
  • Stage II
    (A)顕微鏡的に被膜浸潤が認められるもの
    (B)肉眼的に周囲の脂肪組織もしくは被膜に浸潤・癒着したもの
  • Stage III
    肉眼的に心膜、大血管、肺に浸潤したもの
  • Stage IV
    (A)胸膜・心膜播種
    (B)リンパ行性・血行性転移
後藤 悌
  • 希少がんセンター 呼吸器腫瘍担当 後藤 悌(ごとう やすし)
  • 国立がん研究センター中央病院 呼吸器内科