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多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究

津金 昌一郎 [ 国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 予防研究部部長 ]

研究概要:
1990年から、全国約14万人の地域住民を対象に、生活習慣・生活環境とがんなど生活習慣病との関連を調べるコホート研究が行われている。平成23年度には、禁煙、節酒、減塩、活発な身体活動、適正な肥満指数の5つの健康習慣の積み重ねとがん発生との関連を調べ、60歳以上でも生活習慣の改善によってがん予防効果が期待できることなどを示した。

■多目的コホート研究はさまざまな病気と生活習慣の関係を明らかにする研究

平均寿命より前の死亡や、がん・心筋梗塞・脳卒中などいわゆる三大疾病の発症には、食習慣・運動・喫煙・飲酒などの生活習慣・環境が深く関わっています。生活習慣を改善することで、これら病気の発症をある程度未然に防ぐことができると考えられています。しかし、どんな食事がいいのか、飲酒の適量はどれくらいか、などについて日本人の疫学的データは十分とはいえない状況でした。そこで私たちは、生活習慣・環境と病気との関係を明らかにするために、全国11ヵ所の保健所をはじめ、国立循環器病研究センターや国内の大学、研究機関、医療機関などと連携し、日本各地にお住まいの約14万人の方々から、生活習慣・環境についての情報を集め、病気の発症に関する追跡調査を1990年から行っています(多目的コホート研究:JPHC Study)。このような、地域住民などの一定の集団を対象に、長期間にわたって追跡調査を行い、原因と結果の因果関係を究明する研究を「コホート研究」と呼びます。生活習慣と病気の関連を把握するために行う疫学研究の中では信頼性の高い方法です。私たちの研究は、がん予防だけでなく、心筋梗塞、脳卒中などさまざまな病気に関する調査を行っているため「多目的コホート」と名付けられました。

この研究により、日本人の生活習慣病予防に関する、より確かな情報を得ることができます。そして、科学的な根拠に基づく予防ガイドラインの策定などに、役立つエビデンスを提供できると考えています。

2011年より、次世代のコホートのパイロット研究も開始しました(次世代多目的コホート研究:JPHC-NEXT)。
今後もさらに研究を深めつつ継続していきます。

大規模コホート研究の推進

■生活習慣を一つでも改善すればがんになる確率は着実に低下する

私たちはこれまでに、さまざまな生活習慣・環境による、がんや循環器病のリスクについて報告してきました。特にがんの「リスク要因」として、喫煙、大量の飲酒、肥満・やせ、運動不足、塩分の取りすぎなどについて探り、その影響の大きさを定量的に明らかにしました。また、わが国では、無作為化比較試験によるがん検診の有効性を検証することは難しいという現状において、「胃がん検診を受けている人は胃がんによる死亡率が低い」など、胃がん検診や大腸がん検診の効果を支持する、コホート研究ならではの結果も得ています。

平成23年度もさまざまな研究報告を行いました。3月には、「禁煙、節酒、減塩、活発な身体活動、適正な肥満指数」の5つの健康習慣とがん予防の関係についての研究結果を公表しました。
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2942.htmlncc管轄サイトへのリンク

この5つの健康習慣のうち、ゼロか一つを実践している人を基準として、2個以上実践している人との間で、がんのリスクを比較しました。すると、実践している健康習慣が多いほどがんのリスクは低く、一つ増すごとに、男性で14%、女性で9%低下しました(図)。さらに、この効果は、男性では年齢に関係なく、女性では60歳以上のグループでみられました。つまり、60歳以上でも、これら5つの健康習慣の実践によって、がん予防効果が期待できることが分かりました。

本年度はこのほかに、肉類全体の摂取量が多いグループ(約100g/日以上の群)で男性の結腸がんリスクが高くなり、赤肉の摂取量が多いグループ(約80g/日以上)で女性の結腸がんのリスクが高くなったなどの研究結果を報告しました。これまでに得た研究結果は研究班ホームページで公開していますのでご覧ください。
http://epi.ncc.go.jp/jphcncc管轄サイトへのリンク

5 つの健康習慣とがんのリスク