小児白血病の原因究明に向けた基盤的研究
水谷 修紀 [
国立大学法人東京医科歯科大学 小児科 ]
ところが数年前に、ヒトの細胞や組織を移植しても拒絶せず、あたかも人体の一部のようになじんでしまう、実験用のネズミ「ヒト化マウス」が登場し状況が変わりました。私たちはこのヒト化マウスを使って、小児急性リンパ性白血病と同じ状態を、動物の体内に作り出すことに成功しました。このマウスの登場によって、患者さんの体内で起こっていることが、動物で再現できるようになったのです。このことは、白血病の原因解明や新薬開発にとって、大きな一歩となりました。
急性白血病では白血病細胞が体のあちらこちらに飛び火する「髄外浸潤(ずいがいしんじゅん)」が起こります。抗がん剤でいったん症状がなくなっても、肝臓などに白血病細胞が髄外浸潤していると、再発してしまいます。白血病の再発と髄外浸潤はとても関係が深いのですが、あまり研究は進んでおらず、しっかりとした治療法も今はありません。
私たちは、小児急性リンパ性白血病のヒト化マウスを使って、髄外浸潤が肝臓で起こるしくみと、それを抑える薬剤−AMD3100−について研究しています。これまで、次のことが分かってきました。
(1)肝臓からは白血病細胞を引き寄せる、SDF-1という物質が出ている。それを目がけて、肝臓に白血病細胞が集まってくる。
(2)白血病細胞の表面にあるCXCR4が、SDF-1を探知している。
(3)AMD3100はCXCR4に結合することで、SDF-1を探知できないようにしている。これによって、白血病細胞の飛び火が抑えられる。
(4)AMD3100を投与すると再発が抑えられ、延命効果が得られた。
これらのことから、AM03100は小児白血病を克服するための、新しい治療法となる可能性が見えてきました。実用化に向けて、これからもこの研究を続けていく予定です。
研究概要:
小児白血病は小児がんの中で最も発生頻度が高い。現在、治癒率は80%以上であるが、残りの20%は従来の治療薬では効果がない、再発すると治癒を期待できなくなる、といった問題も残っている。私たちはこのような状況を打破するため、ヒトの白血病を再現できる実験用ネズミを使って、新しい診断法や新薬の開発に取り組んでいる。
小児白血病は小児がんの中で最も発生頻度が高い。現在、治癒率は80%以上であるが、残りの20%は従来の治療薬では効果がない、再発すると治癒を期待できなくなる、といった問題も残っている。私たちはこのような状況を打破するため、ヒトの白血病を再現できる実験用ネズミを使って、新しい診断法や新薬の開発に取り組んでいる。
■小児白血病の新しい治療法や予防法の開発に取り組む
小児白血病は小児がんのおよそ4割を占め、小児がんの中では最も発生頻度の高いがんです。1970年代に10%台だった小児白血病の治癒率は、今では80%台に向上しています。しかし、現在の治療薬では治せないタイプが存在し、また一度再発してしまうと、治癒を期待できなくなるのが現状です。また、どのような子どもたちが小児白血病にかかる危険性が高いのか、それを予測する方法や予防法は今はありません。もしそういった方法が分かれば、子どもの白血病をもっと減らすことができます。私たちはこのような問題を解決するため、小児白血病の原因や発症するしくみを研究し、新しい治療法や予防法の開発に取り組んでいます。平成23年にも多くの研究成果が得られていますが、ここでは白血病の新しい治療法に関する京都大学中畑班員らの研究成果をご紹介します。■マウスの体内で小児急性リンパ性白血病を再現
病気のしくみを詳しく研究したり、新薬の効果を確認したりするとき、ヒトと同じような病気を持つ動物(モデル動物といいます)を使って研究するのが一般的です。しかし、ヒトの白血球を持つモデル動物は、これまでいませんでした。また、今までのモデル動物の病気は、ヒトのものと似てはいますが、完全に同じではない可能性が残っていました。ところが数年前に、ヒトの細胞や組織を移植しても拒絶せず、あたかも人体の一部のようになじんでしまう、実験用のネズミ「ヒト化マウス」が登場し状況が変わりました。私たちはこのヒト化マウスを使って、小児急性リンパ性白血病と同じ状態を、動物の体内に作り出すことに成功しました。このマウスの登場によって、患者さんの体内で起こっていることが、動物で再現できるようになったのです。このことは、白血病の原因解明や新薬開発にとって、大きな一歩となりました。
■急性リンパ性白血病の転移、増殖を抑える薬剤−AMD3100−への期待
急性白血病では白血病細胞が体のあちらこちらに飛び火する「髄外浸潤(ずいがいしんじゅん)」が起こります。抗がん剤でいったん症状がなくなっても、肝臓などに白血病細胞が髄外浸潤していると、再発してしまいます。白血病の再発と髄外浸潤はとても関係が深いのですが、あまり研究は進んでおらず、しっかりとした治療法も今はありません。私たちは、小児急性リンパ性白血病のヒト化マウスを使って、髄外浸潤が肝臓で起こるしくみと、それを抑える薬剤−AMD3100−について研究しています。これまで、次のことが分かってきました。
(1)肝臓からは白血病細胞を引き寄せる、SDF-1という物質が出ている。それを目がけて、肝臓に白血病細胞が集まってくる。
(2)白血病細胞の表面にあるCXCR4が、SDF-1を探知している。
(3)AMD3100はCXCR4に結合することで、SDF-1を探知できないようにしている。これによって、白血病細胞の飛び火が抑えられる。
(4)AMD3100を投与すると再発が抑えられ、延命効果が得られた。
これらのことから、AM03100は小児白血病を克服するための、新しい治療法となる可能性が見えてきました。実用化に向けて、これからもこの研究を続けていく予定です。
