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髄芽腫におけるU1 snRNA変異のメカニズムの解明

髄芽腫は、小児悪性脳腫瘍の中で最も頻度が高く、治療が極めて難しいことで知られています。私たちは、髄芽腫の全ゲノムシークエンスデータに工夫を加えた解析をすることにより、これまで見逃されていたU1 small nuclear RNA(U1 snRNA)に変異が起きていることを発見しました。U1 snRNA変異を持つ髄芽腫は特に予後不良であり、新しい治療の開発が望まれます。

U1 snRNAは細胞内で様々なRNAを認識し、それぞれのRNAが正しく機能するように処理をします。変異は他のRNAの認識を行う配列内に起きているため、腫瘍の細胞内では正常な細胞とは異なったRNAを認識してしまうと考えられます。従いまして、U1snRNA変異による異常は、ヒトの正常細胞では生じている可能性が低く、U1 snRNA変異をターゲットとした治療開発は副作用の少ない治療の開発が期待できます。

しかし、U1 snRNA変異がどのように髄芽腫の発生に関わるのかはまだ十分に解明されておらず、新規治療開発のためにはこのメカニズムを解明する必要があります。U1 snRNAはRNAが正しく作られ、正しい場所で機能するために複数の役割を持っていることが知られています。すなわち、U1 snRNA変異によってRNAの正常な機能に生じる異常の全体像を解明するには、この多様な役割のひとつひとつにどのような異常が生じるのかを分析し、その中で重要なイベントは何なのかを特定なければいけません。私たちはそれぞれの機能に最適な手法を組み合わせてRNAを次世代シーケンサーで解析することにより、U1 snRNA変異が髄芽腫を発生させるメカニズムを解明する研究を進めています。この研究により、治療が難しく予後不良な髄芽腫の有望な新規治療法の開発につながることが期待されます。(Suzuki H et al., Nature, 574(7780):707-711. 2019)

多様なU1snRNAの機能の解析

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