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研究活動

国立がん研究センター研究所では、これまでに肉腫、GIST、神経内分泌腫瘍、脳腫瘍などの希少がんを対象として、診断や治療最適化のためのバイオマーカーおよび創薬標的の探索が長年にわたって行われてきました。臨床の課題を基礎研究のテーマとし、臨床医が研究所で実際に研究に従事するという、ユニークな共同研究の体制が築かれてきました。また、国立がん研究センターでは、希少がん患者さんが病院や診療科の枠を超えて最新・最適な治療を受けられるようにと、希少がんセンターが設立されました(2014年6月)。希少がん研究分野は、このような診療・研究の流れを促進することを目標としています。

希少がん研究分野は、希少がん特有の課題に取り組みます。希少がん研究には、いわゆる5大がん(肺がん、胃がん、大腸がん、肝臓がん、乳がん)の研究にはない課題や困難な点が存在します。すなわち、創薬・基礎研究のツールである細胞株や動物モデルが得難い、症例が少なく臨床検体が集まりにくい、市場規模が小さく新しい診断技術・薬のための研究資金が得難い、などです。希少がん研究分野は、このような課題に取り組んでいきます。

希少がん研究分野は、単なる基礎研究ではなく臨床に役立つ成果を目的とし、問題解決指向型の研究を行います。正確な診断の補助となるバイオマーカーの開発、治療の効果をあらかじめ予測するためのバイオマーカーの開発、手術後の再発を予測するバイオマーカーの開発、新しい抗がん剤の開発、既存の抗癌剤の適応拡大につながる研究、などを行います。同時に、それぞれの希少がんに特有の遺伝子の異常がどのように病態に反映されているのか、あるいはそれらの遺伝子の異常がどのように診断や治療に役立つのか、という基礎的な研究も実施します。いずれの研究も、臨床医との共同研究体制や臨床検体(バイオバンク)を十分に活用した研究を行います。また、シーズ探索の技術開発から実用化を目指した診断技術の開発まで、学際的な研究を推進します。

希少がん研究分野では、多施設の共同研究を積極的に行います。希少がん研究の場合は症例が少ないことから、単施設だけで研究を遂行することは困難です。今までに培われてきた国内外のネットワークを基盤とし、そしてさらにネットワークを拡張し、臨床医・研究者と連携をとって研究を遂行していきます。

希少がん研究分野の前身である、腫瘍プロテオミクス・プロジェクト、プロテオーム・バイオインフォマティクス・プロジェクト、および創薬プロテオーム研究分野では、2001年より希少がんを含むがんの基礎研究に興味のある博士号取得前の臨床医を多数受け入れ、臨床のアイデアを取り入れつつ研究指導を行ってきました。これからも、希少がんの研究に興味のある臨床医、大学院生を歓迎します。

研究成果の応用には民間企業の方々との連携が、研究の初期段階より必要です。実用化に近いところで活躍されている方の意見を取り入れ、自分たちの研究がどのように世の中に役立つのかを考えていきたいと思います。私どもとの共同研究に関心のある企業の方々を歓迎します。

希少がん研究分野は、我々の研究があってよかったと、いつの日か患者さん、医療従事者の方、そして世界中の方々に思っていただける成果を目指し、研究に取り組んでいきます。皆様のご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。  

2014年8月15日
国立がん研究センター研究所 希少がん研究分野
分野長 近藤格