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研究参加の募集;若手臨床医・大学院生の研究参加について

基礎研究の研修の目的

臨床医の問題意識は、医学の新しい発見をするためにきわめて貴重です。どんなに優秀な基礎研究者でも、研究室で働いている限りは臨床の問題に触れる機会はほとんどありません。臨床の課題に直結した研究課題を見つけることができるのは、臨床医ならではの強みです。医学の歴史では多くの発見が臨床経験のある研究者によって行われてきました。臨床と基礎と両方がわかる臨床医あるいは研究者の存在が、医学の発展にはこれからも必要です。希少がん研究分野では、生涯にわたり臨床業務の傍ら研究を遂行・指導できる研究能力を身につけることを目標とした指導を行います。

医学部以外の大学院生についても、同様の指導を行います。医療の最先端ではどのようなことが問題になっているのかを学習していただきます。臨床医や病理医と一緒に研究をすることで、ある程度の医学的知識を身に着け、将来は臨床腫瘍学の知識のある研究者として活躍できることを目標とします。

3年間の目標

研修期間は3年間を想定しています。最初の1年で基本的な手技を身に着け、2年目から3年目にかけてデータを出して論文にまとめます。多くの方は大学院生として研修に参加しています。研修の目標は論文を仕上げることではありません。次のような目標を設定しています。

(1)研究計画書を自分で作成することができるようになること

設定する課題の重要性、今までに行われてきた研究の概説とその問題点、研究課題への優位性・独自性、アプローチの妥当性、予測される問題点と成果、などを客観的な根拠に基づき論理的に文章にする技術を学んでいただきます。この技術は、プレゼンテーション、論文作成、倫理審査のための研究計画書の作成、研究費申請書の作成などに役立ちます。

(2)実験手技を指導できる高いレベルまで習得すること

日々の実験を通じて、実験の具体的な手技、実験計画の立て方、問題に直面したときの考え方、データのまとめ方、などを学んでいきます。研究室の他のメンバーに技術を教えることができるようになって一人前です。指導を通じて自己の研鑽を図ります。

(3)論文を批判的かつ建設的に読む技術を取得すること

論文は完成された作品ではなく、間違いもあれば足りない点も多々あります。どちらかと言えば、及第点に達しない論文の方が多いのが現状です。それらを批判するのは簡単ですが、それだけでは足りません。批判するだけではなく、自分だったらこの研究をどのように改善できるのか、自分だったら次に何をするのか、という建設的な意見を語れるようになっていただきます。そのような技術を取得することで、論文はよりよい情報源となります。

(4)論文作成、学会発表の技法を高いレベルで習得すること

論文は書式の決まった定型文書です。どのような構成で論文が書かれているかを理解すれば、執筆という作業は短時間で楽に行うことができるようになります。また、書き方の作法を身に着けることで、論文執筆の指導を的確に行うことができます。学会発表も同様で、本質的なルールを身につけることで、上手な学会発表ができるようになります。日々の抄読会や議論を通じて論文作成や学会発表の基本を習得していただきます。

日々のスケジュール

月曜日から金曜日まで毎日朝8時半より簡単な研究打合せと約1時間の抄読会を行います。抄読会では、症例報告や新しい臨床研究、遺伝子レベルの機能解析や実験技術の改良まで、さまざまなテーマの論文を取り上げます。論文の読み方やプレゼンの手法は抄読会で培っていただきます。また、論文を題材に研究室のメンバーが自由活発に意見を交換することで、臨床と基礎と異なる背景をもつメンバーの意思疎通を図っています。

研究ディスカッションや学会予行演習は随時行います。また、臨床医の方は平日や週末の1日から2日の外勤、大学院生は必要に応じて講義に出席します。 

特筆する成果

希少がん研究分野の前身となる研究室では、2004年よりほぼ毎年、任意研修生(臨床医、学生)が国内外の学会でポスター賞や奨励賞を受賞しています。詳しくは、「学会賞など」をご覧ください。特筆するべきことは、臨床医の方であっても基礎の学会で学会賞を受賞しているということです。また、医学部以外の大学院生も国内外で何度も学会賞を受賞しています。基礎と臨床の両方を理解できる人材の育成が順調に行われています。  

研修終了後の進路

臨床医の方は、基礎研究の成果を論文にまとめ、一般病院や大学病院、国立がん研究センター中央病院で勤務する方がほとんどです。海外への研究留学を行った方もおられます。海外から留学に来られた方の中には、帰国後さらに精力的に活躍され教授に就任された方もいます(復旦大学脳神経外科、中国)。医学部以外の大学院生については、ルンド大学(スウェーデン)、製薬企業、診断薬会社などさまざまな領域で活躍しています。

大学などで臨床業務の傍らに研究を行われる方については、臨床側の研究のパートナーとして、論文作成、学会発表、研究費の申請などを引き続き一緒に行っていただいています。