コンテンツにジャンプ
がん対策情報センター

トップページ > 各部の紹介 > たばこ政策支援部 > プロジェクト > Prochaskaの行動変容ステージについて

Prochaskaの行動変容ステージについて

ここではProchaskaの変容ステージから、それぞれのステージの特徴について示します1)

無関心期

無関心期は、医療職からの助言に対して「あぁ言えばこう言う」といった心理的抵抗を示します。この時期の対象者は、行動を起こすことに全く価値を感じていません。行動を起こすことの負担ばかりを感じています。医療者の助言に対しては反論することが多く、言えば言うほど頑なに行動を起こすことを拒否します。この時期にタバコの害などのリスクを伝えては逆効果です。まずは相手の気持ちを十分に受け止め、共感的な態度をとるようにしましょう。そのような中で、相手が少しでも話を聞いてくれるタイミングがあれば、いつか禁煙したくなったときに役立つ情報提供を、相手の了解を得て行うとよいでしょう。この時期には動機付け面接法を用いることも推奨されます。

関心期

関心期は、禁煙したい気持ちが芽生え、禁煙することの価値とタバコを吸い続けることの価値が心の中で綱引きをしている状態です。この時の「禁煙したいけどタバコを吸い続けたい。」という心理を「両価性:アンビバレンス」と呼びます。例えば、宿題をしたくないけどやらなきゃいけないと思っている時に、親に「宿題しないとダメよ!」と言われると、急激にやる気がなくなるのと同じで、この時期には、我々医療者が進ませたい方向に押せば押すほどやる気がなくなり、行動を起こさなくなるということが起きます。まずは対象者の禁煙に対する気持ちをオープンクエスチョンで尋ね、否定せず共感的な態度で携わります。対象者の「禁煙したい」気持ちを含んだ言葉を少しでも引き出すことが重要です。アンビバレンスが収まってきている場合は、動機を強化していきましょう。

動機の強化の方法

アンビバレンスが収まっている場合、動機の強化を行います。動機の強化は、「その行動を起こすことでどんなよいことがあるか」といったメリットからの動機付けを行います。対象者の個別性を踏まえて動機の強化を行いましょう。

例)骨折で入院した35歳男性(家族:妻と子ども2人)に対する禁煙の動機の強化:
「禁煙することで奥さんやお子さんに気を遣うこともなくなりますし、骨折の痛みもコントロールしやすくなります。わざわざ暑い中に外に吸いにいかなくてもよくなりますし、ぜひ禁煙するとよいですよ。」

準備期

準備期は決意を表明する時期です。対象者はタバコを吸うことの悪影響を十分理解し、禁煙することのメリットを強く感じます。準備期の対象者は、すでに動機は高まりきっているので動機の強化を再度行う必要はありません。この時期の対象者は自ら本やインターネットを使い、禁煙するためにどうしたらよいのかを探しています。禁煙を実行するために医療者や周りの人に禁煙宣言をするとよいでしょう。また、禁煙を開始するときに困らないように、具体的な禁煙方法を対象者自身に考えさせましょう。「タバコを吸いたくなった時、どんなことをしたら乗り越えられそうですか?」等の声掛けをし、対象者が考えられなかったときや、的外れな回答だった場合に、例えば冷水を飲んだり歯磨きをするなど、看護師から対処法を提示します。また、この時期は「自分なら禁煙できる」といった自己効力感(禁煙達成への自信)を強化することが重要です2)。自己効力感の強化の仕方は4点あります。

自己効力感を高めるためには2)

  • 達成体験:今までの成功体験を思い出させる
  • 代理体験:他の誰か(特にできそうもない誰か)ができたという体験を聞く
  • 言語的説得:その道のプロから「あなたならできる」と言われる
  • 生理的情緒的調整:禁煙を大きく捉えず、気楽にやる

実行期

実行期は行動を変えてまだ間もない(6ヵ月以内)対象者を指します。この時期はまだ始まったばかりの変化に適応できず、がんばっている時期です。禁煙であれば離脱症状を乗り越えるために努力の必要な時期です。しかし、そのような中でも行動を変えることができた自分に自信を持てたり、その効果を少しずつ感じるようになります。この時期には、継続して自己効力感を高めるとともに、その行動が継続できるような強化子(きょうかし)を与えます。強化子とは、ある行動を続けるための快の刺激のことです。簡単に言えば、対象者が禁煙した時のご褒美のことです。医療者からのほめ言葉や笑顔が、この強化子になります。ぜひ、対象者のこれまでの努力を具体的に言葉で表し、褒めるようにしましょう。加えて、禁煙してよかったことを探させ、禁煙の効果を実感することも対象者の行動を継続させる一つの方法となります

維持期

維持期は行動を変えて6ヵ月以上経ち、禁煙していることが普通になる時期です。この時期には、何か問題があっても自ら解決し、行動を継続していきます。そのため、我々医療者のサポートを必要としなくなる時期です。この時期には自立を進め、自ら問題解決できるように促していきます。ただし、1年以上禁煙していても再喫煙する人がいるように、逆戻り(ステージが元に戻ってしまうこと)はよくあることです。どのような場面でそういった逆戻りが起きそうか、具体的に話し合い解決策を考えた上で、自立を促しましょう。喫煙は繰り返し再発する慢性疾患と言われています。喫煙者は長いプロセスの中で禁煙をしていきます。1度や2度の失敗は当然だと考え、対象者が再喫煙した場合は、その失敗経験から何を学び取るか話し合い、次の禁煙に生かすような前向きな言葉かけをしましょう。

体重増加について

禁煙できた人の多くは体重が増加します。日本人の場合は平均2kg程度と言われていますが、1/4の人は1年後に3.5kg以上の急激な体重増加が起こります3)。禁煙開始後の体重増加を抑制するためには、まずは運動が推奨されています。運動は禁煙開始直後の離脱症状を弱めること、禁煙後長期的には体重抑制効果があることが報告されています4)。禁煙が安定するまでは運動、離脱症状等が収まったら食事のコントロールをするとよいでしょう。

1) ジェイムズ・プロチャスカ他著,中村正和監訳.チェンジング・フォー・グッド.法研,東京,2005.
2) Bandura A. Self-Efficacy: The Exercise of Control. W. H. Freeman. New York, 1997.
3) Taniguchi C, et al. Factors associated with weight gain after smoking cessation therapy in Japan. Nursing Research, 62(6): 414–421. 2013.
4) Farley AC, et al. Interventions for preventing weight gain after smoking cessation. Cochrane Database Syst Rev. 18(1): CD006219. 2012.

禁煙支援担当看護職向け講習会プログラムの開発と実践のページへもどる