遺族調査報告書
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●…調査に回答した患者遺族の平均年齢は67.4―69.2歳であり、性別は女性が54.8―66.2%で全ての疾患●…医療者は患者のつらい症状にすみやかに対応していたと回答した割合の疾患別の推定値は64.6―80.7%●…からだの苦痛が少なく過ごせたと回答した割合は、疾患別の推定値では37.3―52.5%であった。から50● 抽出方法の影響を補正した本調査の患者背景の属性や特性の分布は、全体として母集団と概ね同様で● 患者が死亡前1か月間で日常生活動作が自立であったのは、がん15.4%、心疾患16.9%、脳血管疾患本調査は、わが国において人生の最終段階の療養生活をどのように過ごしたか、その全体像を記述したものである。本結果は全体の推移を重視して解釈すべきものであり、最期の療養場所として、どこで死亡することが良い・悪いと単純に比較・判断することは困難である。例えば「介護施設で死亡した患者は、もともと痛みなどの症状が少なかったので、医学的な介入を必要とせず入院することがなかった」など、療養場所によって患者のもともとの病状が異なる。したがって、療養場所の違いを考察する際には病状や本人の治療への希望などに留意し、注意深く考察することが必要となる。5死因「がん」「心疾患」「脳血管疾患」「肺炎」「腎不全」の結果は、2018―2019年度と2023年度の調査結果の推移を示した。過去の調査結果からの推移を考察する際には、対象患者の死亡年(2017―2021年)の社会的な変化に留意する必要がある。例えば、2021年はCOVID-19の流行により、病院や施設の面会制限や在宅療養者の増加など、医療を取り巻く環境に変化が生じた。また、2018年および2020年の診療報酬の改定により、緩和ケア病棟在院日数の短縮化など、社会的な影響を踏まえた考察が必要である。本考察は、結果で先述した内容の繰り返しになるが、2023年度調査の結果と2018―2019年度の推移から見たわが国の現状を述べるとともに、結果を解釈するうえで留意すべき、結果に影響する患者や家族の背景について、考えられる要因等をまとめて記述する。患者・遺族の背景の全体像あった。対象患者の疾患ごとの死亡時の平均年齢はがん79.9歳、心疾患87.4歳、脳血管疾患86.1歳、肺炎88.3歳、腎不全87.7歳、認知症89.9歳、アルツハイマー病88.9歳、慢性閉塞性肺疾患85.5歳、誤嚥性肺炎88.8歳、老衰92.4歳であり、がんが最も死亡時の平均年齢が低く、老衰で最も高かった。12.5%、肺炎5.9%、腎不全6.7%、認知症1.4%、アルツハイマー病0.7%、慢性閉塞性肺疾患9.6%、誤嚥性肺炎3.0%、老衰2.2%であり、疾患により差があった。で多かった。続柄は全ての疾患で子が最も多く43.9―68.3%、次いで配偶者10.2―41.5%だった。A 死亡場所で患者が受けた医療の構造・プロセスであった。医療者は患者の不安や心配をやわらげるように努めていたと回答した割合の疾患別の推定値は63.0―80.6%であった。前回調査からの推移では、肺炎、腎不全で回答割合が増加する項目があったが、全体的に減少傾向であった。全体的にがんと老衰で評価が高く、誤嚥性肺炎で低かった。医療者への評価は概ね良好であった。B 死亡前1カ月間の患者の療養生活の質だの苦痛が少なく過ごせたと回答した割合は、がんで最も低い37.3%であり、老衰で最も高い52.5%であった。前回調査からの推移では、がんでは、からだの苦痛が少なく過ごせたと回答した割合が減少していた。また、全ての疾患でご家族やご友人と十分に時間を過ごせたと回答した割合が減少していた。患者の死亡年である2021年はCOVID-19の流行時期であったため、面会制限や行動制限等の影響が考えられた。③ 2023年度遺族調査の結果概要と考察 3.1 全体の結果から見た人生の最終段階の療養生活の現状

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