患者さまが受けられた医療に関するご遺族の方への調査報告書
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22●全体の結果(主解析) がん患者の遺族全体では、患者は痛みが少なく過ごせたと回答した割合は47.2%、からだの苦痛が少なく過ごせたと回答した割合は41.5%であった。●全体の考察 医療者の対応に関する遺族の自由回答を踏まえると、苦痛症状への基本的な対応はなされているが、死亡前の痛みの主な理由には、基本的な対応のみでは緩和されない難治性の症状がある場合や、認知症などの併存があるために痛みの評価が難しい場合、がん以外の症状が混在するなど複雑な場合があることが明らかになり、緩和ケアの効果が十分に得られなかった可能性が示唆された。 がん患者の苦痛緩和は改善の余地があり、医療者への基本的緩和ケアの教育機会を提供することに加え、複雑な場面での診断方法や難治性の症状に対する新たな治療方法の開発を検討する必要がある。●死亡場所別の結果(副次解析) 死亡場所別のがん患者遺族の回答割合は、痛みが少なく過ごせた 病院43.4% 施設55.0% 自宅53.8% PCU 56.2%、からだの苦痛が少なく過ごせた 病院37.5% 施設53.8% 自宅47.8% PCU 50.8%、 おだやかな気持ちで過ごせた 病院39.4% 施設57.6% 自宅64.0% PCU52.8%、望んだ場所で過ごせた 病院41.2% 施設34.2% 自宅86.8% PCU50.4%であった。●死亡場所別の考察と留意点 病院で死亡したがん患者の遺族は、施設など他の場所で死亡したがん患者と比べて、からだの苦痛や気持ちのつらさがなく過ごせたと回答した割合が低かった。他の場所と比べて、患者が若年であるため、患者が積極的な治療を希望することが多く、治療や処置に伴う避けられない苦痛を感じていた可能性や、就労などの心理社会的な課題を負うなど、複合的な理由が潜在すると考えられる。 自宅で死亡したがん患者の遺族は、病院など他の場所で死亡したがん患者と比べて、患者は望んだ場所で過ごせた、落ち着いた環境で過ごせたなど、療養環境に関連する回答における割合が高かった。他の場所と比べて、患者が希望する療養場所での生活を継続したことに加えて、遺族が患者と接する時間が長いことから、患者の療養状況をより理解できることが回答内容に影響したと考えられる。設問療養生活について、患者さまはどのように感じていたと思いますかお亡くなりになる前の1カ月間の状況について、最も近い番号を1つずつお選びください回答選択肢「1全くそう思わない」「2そう思わない」「3あまりそう思わない」「4どちらともいえない」「5ややそう思う」「6そう思う」「7とてもそう思う」「0わからない」 のうち○は1つ集計方法「5ややそう思う」~「7とてもそう思う」の合計回答割合(%)について、人口動態死亡数の都道府県比率,死亡場所比率で調節した補正値と、推定される95%信頼区間を示したB  死亡前1カ月間の患者の療養生活の質

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