患者さまが受けられた医療に関するご遺族の方への調査報告書
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 本調査は、わが国のがん患者が人生の最終段階の療養生活をどのように過ごしたか、その全体像を記述したものである。本結果は全体を重視して解釈すべきものであり、最期の療養場所として、どこで死亡することが良い・悪いと単純に比較・判断することは困難である。例えば「介護施設で死亡した患者は、もともと痛みなどの症状が少なかったので、医学的な介入を必要とせず入院することがなかった」など、療養場所によって患者のもともとの病状が異なる。したがって、療養場所の違いを考察する際には病状や本人の治療への希望などに留意し、注意深く考察することが必要となる。 本考察では、結果で記述した内容の繰り返しになるが、全体の結果から見たわが国の現状を述べるとともに、最期の療養場所別の結果を解釈するうえで留意すべき、結果に影響する患者や家族の背景について、考えられる要因等をまとめて記述する。●がん患者全体では、死亡時の年齢は80歳以上の割合が50.2%であり、半数以上を占めていた。●がん患者の遺族全体では、患者ががんと診断されてから亡くなるまでの期間は1年以内と回答した割合●がん患者の遺族全体では、患者が死亡前1カ月間で日常生活動作に何らの介助が必要だったと回答した●がん患者の遺族全体では、患者が希望する最期の療養場所として自宅を希望していたと回答した割合が●がん患者の遺族全体では、患者が死亡前6カ月間に在宅診療を利用していたと回答した割合は37.3%、●がん患者の遺族全体では、患者が医師から病名をはっきり説明されたと回答した割合は78.1%であった。●調査に回答したがん患者遺族の年齢は、60-70代の割合が57.1%と最も高く、続柄は、配偶者が●がん患者の遺族全体では、医療者は患者のつらい症状にすみやかに対応していたと回答した割合は82.4%、患者の不安や心配をやわらげるように、医師、看護師、介護職員は努めていたと回答した割合は82.2%であった。医療者への評価は概ね良好であり、これまでがん対策として取り組まれてきた基本的な緩和ケアの普及啓発の結果が表れていると考えられる。●がん患者の遺族全体では、患者は痛みが少なく過ごせたと回答した割合は47.2%、からだの苦痛が少な●医療者の対応に関する遺族の自由回答を踏まえると、苦痛症状への基本的な対応はなされているが、死亡前の痛みの主な理由には、基本的な対応のみでは緩和されない難治性の症状がある場合や、認知症などの併存があるために痛みの評価が難しい場合、がん以外の症状が混在するなど複雑な場合があることが明らかになり、緩和ケアの効果が十分に得られなかった可能性が示唆された。●がん患者の苦痛緩和は改善の余地があり、医療者への基本的緩和ケアの教育機会を提供することに加え、56は52.6%であった。割合は78.4%、患者が認知症を併存していたと回答した割合は13.3%であった。56.6%と最も高かった。介護保険サービスを利用していたと回答した割合は54.6%であった。44.1%、子が39.7%であった。く過ごせたと回答した割合は41.5%であった。複雑な場面での診断方法や難治性の症状に対する新たな治療方法の開発を検討する必要がある。患者・遺族の背景の全体像A 死亡場所で患者が受けた医療の構造・プロセスB 死亡前1カ月間の患者の療養生活の質1 全体の結果から見た人生の最終段階の療養生活の現状Ⅲ 考察のまとめ

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