患者さまが受けられた医療に関するご遺族の方への調査報告書
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 Ⅲ 考察のまとめ  57●がん患者の遺族全体では、患者が死亡前に強い痛みを感じていたと回答した割合は28.7%であった。該当遺族が回答した痛みの主な理由は、痛みに対して医療者は何らかの対処をしたが、不十分であったからと回答した割合が28.4%と最も高かった。他の理由には、患者の認知機能が低下していることにより痛みの評価が難しい場合や、褥瘡や骨折・腰痛などのがん以外の併存症・医療処置による痛みがある場合も含まれており、複数の要因が影響していたと考えられる。●痛みは患者の療養生活の質に影響する重要な要因であるため、改善を図る必要がある。●がん患者の遺族全体では、患者と医師の間で最期の療養場所の希望や医療に関する話し合いがあったと回答した割合は35.7%、患者と医師の間で心肺停止時の蘇生処置の実施について話し合いがあったと回答した割合は35.1%であった。●患者と医師の間で話し合いをした割合は35.7%以下であった。患者の意向・希望に沿った医療を提供するためには、主治医等の医療者から提供される情報に基づく患者本人による意思決定が基本となるため、改善を図る必要がある。患者と医師間で話し合いが十分にできていないことにより生じる影響を調査したうえで、具体的な対策の検討が必要である。●がん患者の遺族全体では、介護をしたことで全般的に介護負担感が大きかったと回答した割合は38.9%●家族の介護負担感は決して低い割合ではなかった。介護負担は、患者の高齢化による、認知機能の低下やそれに伴う行動・心理症状などにより増加することが考えられる。今後も高齢者が増加するわが国では、介護者が必要に応じて適切な社会的支援を利用できる体制の整備を推進する必要がある。●がん患者の遺族全体では、死別後1-2年が経過した時点で抑うつ症状を抱えていた割合は19.3%であった。●今回の調査では、抑うつ症状は2項目のみで評価しているため、がん患者の遺族のおおよその割合であると理解することが望ましい。したがって、うつ病の治療を必要とする割合を直接示すものではない。死別後遺族の有症率としては、類似の調査と比べて高い割合ではないが、治療を必要とする遺族が少なからず存在する可能性があるため、死別後の遺族への配慮が必要である。●がん患者の遺族全体では、死別後1-2年が経過した時点で強い悲嘆を抱えていた割合は30.9%であった。●今回の調査では、長引く悲嘆症状は2項目のみで評価しているため、がん患者遺族のおおよその割合であると理解することが望ましい。悲嘆の多くは正常な反応で、反応の長さや強さは個人差があり、悲嘆が長引く要因には、患者との続柄や関係性の深さ、死別の状況に加え、遺族自身の健康状態や過去の喪失経験などが潜在する。●死別後遺族の有症率としては類似の調査と比べて低い割合ではなく、死別後に強い悲嘆を抱えている遺族は一定数存在する可能性がある。また、抑うつ症状を伴う場合もあるため、死別後の遺族への配慮とともに、遺族が必要に応じて専門的な支援を利用できる体制の整備が必要である。であった。C 死亡前1週間の患者の苦痛症状D 最期の療養場所の希望や医療に関する話し合いE 家族の介護負担感F 最近2週間の遺族の抑うつ症状G 最近1カ月間の遺族の強い悲嘆

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